『近畿地方のある場所について』原作者・背筋も絶賛する“首吊り屋敷”のクオリティー 白石晃士が語るホラー映画ロケ地の実情【ネタバレ】

菅野美穂と赤楚衛二を主演に迎え、作家・背筋氏の同名ホラー小説を映画化した『近畿地方のある場所について』(全国公開中)。原作の怪異をモキュメンタリー形式で実写化した迫真の映像について、白石晃士監督と背筋氏が、ホラー映画制作の裏側を交えながら本作について語った。
ある日、突然行方不明となったオカルト雑誌の編集長。その特集を引き継いだ雑誌編集者・小沢悠生(赤楚)と、協力を求められたオカルトライター・瀬野千紘(菅野)は、編集長の集めた資料を調べるうちに、全ての怪異が“近畿地方のある場所”につながることに気が付く。
幼女失踪事件、林間学校集団ヒステリー、YouTuberが山中で人形まみれ祠を発見するツーリング動画、原作に散りばめられたさまざまな怪奇事件を、モキュメンタリー形式で実写化。どれもが“本物”を見てしまったような気分になる恐怖映像となっており、そのリアリティーを支えるのが、恐ろしいロケ地の数々だ。
特に印象的なシチュエーションの一つが、配信者が突撃する“首吊り屋敷”。背筋氏は、原作では描かれていなかったロープの演出や、配信者が手に持った配信用カメラの見せ方を称賛しながら「めちゃくちゃ怖い空間にしてくれた」と絶賛する。
「普通に映像化したら、ただの廃墟をめぐっているだけになってしまうところを、首吊りのロープが大量に垂れているとか、何も出てこないのに怖い空間を作っていただいた。配信者視点の臨場感も含めて、本当に最高の演出でした」。
学生時代から白石作品の大ファンという背筋氏は、ロケ地の選定にも注目。「ホラー作品に出てくる廃村なんかは、けっこう場所被りしていますよね。白石監督の作品でいうと『白石晃士の決して送ってこないで下さい』に出てきた廃村は『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』でも使われてる場所ですよね」と笑う背筋氏に、「東京から行きやすくて、条件が揃う廃村って限られてるんですよ(苦笑)」。さらに背筋氏が「『呪怨』の家も、いろんなホラーで使われてた時期ありましたよね。いろいろ工夫されているんですが、間取りでわかってしまう(笑)」と続け、マニア同士の会話が盛り上がる一幕も。
しかし、『近畿地方のある場所について』においては「ロケーションは(ほかのホラー作品と)被ってないと思います」と白石監督は明かす。「こういうロケ場所ってだいたい制作部の方が見つけてくれるんです。今回も、実際に(作品の舞台の)関西方面、近畿方面で探してもらったんですけど、なかなか条件に合う場所がなくて。例えば団地のシーンなんかは関東で撮っていますが、子供たちには関西弁を喋ってほしいので、メインどころの10人ぐらいは関西方面から来てもらいました」と苦労を明かした。
菅野と赤楚の熱演が光る劇映画パートも見ごたえ十分の本作。モキュメンタリーと劇映画の融合というまさに集大成ともいえる一本を手掛けた白石監督だが、最後に、背筋氏が次回作について尋ねると、「またホラーです。ちょっとバトル要素もあるエンタメホラー。『カルト』に近いかもしれないですね」と回答。背筋氏も「それだけ聞くことができれば十分です。楽しみです」と笑顔を見せながら、新作への興味も尽きない様子だった。(編集部・入倉功一)


