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「私の夫と結婚して」何が面白い?韓国版との違いとは

「私の夫と結婚して」は Prime Video で世界独占配信中
「私の夫と結婚して」は Prime Video で世界独占配信中 - (C)2025. CJ ENM Japan / STUDIO DRAGON all rights reserved

 6月27日より Prime Video で配信され、「沼る人が続出!」と話題の Amazon Original ドラマ「私の夫と結婚して」。小芝風花佐藤健のダブル主演で注目を集め、Amazon Original ドラマ作品において、配信開始後30日間の国内視聴者数で歴代1位を記録する快挙を達成した。Prime Video内の作品評価は平均4.3点(5点満点)の高評価。韓国版(4.6点)に劣らぬ人気ぶりだ。そんな日本版の「私の夫と結婚して」の面白さはどこにあるのか。(構成・文:前田かおり)※一部ネタバレあり

【画像】美紗と鈴木部長のキスシーンも話題の7・8話

韓国版は激辛味の復讐劇、日本版は優しめな人生リセットストーリー

 本作は、韓国の人気ウェブ小説が原作。2024年、「キム秘書はいったい、なぜ?」(2018)などのパク・ミニョンと、現在、日本のドラマ「初恋DOGs」に出演中のナ・イヌの共演でドラマ化された韓国版は世界中でメガヒットし、大きな話題になった。

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 そんな韓国版の成功を踏まえて制作された日本版は、韓国の CJ ENM とスタジオドラゴンがタッグを組み、脚本は「凪のお暇」(2019)など数々のドラマや、映画『九十歳。何がめでたい』(2024)で「第48回日本アカデミー賞」の優秀脚本賞を受賞した大島里美、監督は「秘密の森」(2017)や、「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」(2022)などサスペンスやスリラーなどを得意とするアン・ギルホが務めている。

夫・友也(横山裕)と親友・麗奈(白石聖)に裏切られた挙げ句命を奪われる美紗(小芝風花)

 末期がんで入院中の美紗(小芝風花)は、幼馴染みで親友の麗奈(白石聖)と夫・友也(横山裕)の不倫現場を目撃した挙げ句、2人に殺されてしまう。だが、次の瞬間、10年前にタイムリープ。人生をやり直すチャンスを手に入れた美紗は、最低だった運命を変えるため、クズ夫の友也を麗奈に押し付けて結婚させることで2人を破滅させようと決意する。そんな美紗の前に、1度目の人生では関わりもなかった勤務先の部長・鈴木亘(佐藤健)が現れたことから、美紗に予想外の変化をもたらしていく。

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~以下、ネタバレを含みます~

タイムリープした美紗は、1度目の人生では全くかかわりのなかった鈴木部長(佐藤健)と距離を縮めていく……

 物語の大筋は韓国版とほぼ同じ。ただ、韓国版は全16話で、ジェットコースター並みのスピーディーな展開で復讐劇を軸に描く。ヒロインと財閥御曹司のキュンキュンするラブモードもあるが、後半に日本版にはいない御曹司の元婚約者(BoA)が登場する。単なる恋敵で終わらない強烈な悪役ぶりを発揮し、終盤から復讐劇の行方が二転三転。韓国だけに、激辛テイストが効いたドラマに仕上がっている。

小芝風花が人生初のド派手ギャルメイクで変身

 一方、日本版は全10話だが、韓国の原作の魅力を生かしつつ、ふんわりと優しめな和テイストでアレンジ。そして、韓国版と大きく違うのは、復讐劇よりも「人生をもう一度やり直せるなら、他人の人生の“脇役”から、自分の人生を生きる“主役”になりたい」という美紗の切なる願い。つまり、人生のリセットストーリーが軸になっている。1度目の人生では、優しい性格で自分のことより他人を優先しがちだった美紗。2度目の人生では運命を変えると決心したとはいえ、恨みつらみがあっても友也と麗奈はなかなか縁も切れず。運命を変えるために誰かが自分の身代わりになると胸が痛むなど、弱気に。ドラマはそんな美紗の内面や人間関係を丁寧に掘り下げながら2度目の人生で自分らしく賢く、強かに生きる女性へと変ぼうし、成長していく姿を追っていく。特に、日本版ではタイムリープした2015年の世相、ラクビーワールドカップや東京オリンピックなど日本の視聴者ならばわかりやすい事象を絶妙に活用。第1話目で10年前にタイムリープする美紗と同じ思いをするはず。そして、時代を知っているからこそ先取りして、仕事に生かそうとする美紗の奮闘にもエールを送りたくなってしまう。

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ラブストーリーで際立つ小芝風花と佐藤健のきめ細やかな表現力

鈴木部長が美紗に差し出す「傘」は作品の重要なモチーフ

 美紗を演じるのは、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の花魁・瀬川役など時代劇も得意で、現在、TBS日曜劇場「19番目のカルテ」のヒロイン役(新米医師役)も話題の小芝風花。序盤はおどおどしたり気弱で自信のなさ全開の美紗だが、タフな女性へと変貌していくにつれて声のトーンも変わる。また目の動きで心の揺れ動きなど表現するなど豊かな演技力で引き込む。

 そして、美紗の2度目の人生で、エレベーターに駆け込んできた彼女とぶつかって以来、何かと関わってくる部長の亘。クールで無口だが、気づけばいつも美紗のそばにいて、危機から守る。要するに美紗にとってはヒーローなのに、内心では自分はストーカーに見られているのではと気になりながらも、何かと理由をつけて駆けつける。

クライマックスの雪山のシーンは富山ロケを実施

 亘を演じるのは、現在配信中のNetflixシリーズ「グラスハート」では天才肌のミュージシャン役で主演を務め、話題の佐藤健。亘は愛する女性に対して一途。ひたすら彼女を守り続けるというキャラクターを抑制を効かせて演じており、生真面目&誠実な御曹司役の彼は新鮮。美紗に惹かれていながらも気持ちを表に出さない。韓国版と違い、御曹司と言われながらも「御曹司ではありません!」という亘のワケありな事情や、美紗と気持ちを交わしても謎めいたところがあるなど、その秘密が明らかになるに従い、佐藤の寡黙な演技に改めてグッときそうだ。

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横山裕&白石聖の振り切った怪演

変わり果てた姿の友也、いったい何が……

 もう一組のカップルにも注目したい。まず、クズ夫・友也。マザコンで、仕事はできないのに能力があると勘違いし、美紗に対しては完全に上から目線でいつも強気。演じる横山裕はそこまで変顔しなくても……と言いたくなるほど友也のクズっぷりを全開する。だが、どこまでもワガママで性悪だけど、なぜか放っておけないという、まさにニクみ切れないろくでなしな友也にハマッているだけに、終盤、負のスパイラルに至ってからの真に迫る感情表現に揺さぶられる。

美紗が自分より不幸でいることの優越感を生きがいとする麗奈

 一方、親友面をして史上最低な裏切り女の麗奈。ここまで人を騙し、貶める言葉を吐けるのかというほど性悪なキャラクターで、女の武器も使い、友也や課長の富田(清水伸)を手玉に取るなど、女性視聴者のどれだけを「マジ、むかつく! 」と怒らせたことか……。でも、友也を奪い、結婚しても幸せを感じず満足しない麗奈。その事情がひもとかれていくと、切なくもあり……。

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 日本版の良さはヒロインだけでなく、周囲のキャラクターたちの心情も丁寧に描くことで視聴者を置いてけぼりにしないところ。そして、演じている白石聖が気持ちいいぐらい振り切った演技で徹底して悪女を演じたからこそ、美紗のリセットストーリーもより深い意味を考えたくなってしまう。

美紗の父こそ日本版のキーパーソン!?

SUZUTOYAのマスコットキャラクターの着ぐるみもキュート!

 日本版は和テイストにアレンジしていると書いたが、美紗が勤めるSUZUTOYAホールディングスは、美紗の亡き父が好きだった和菓子屋「鈴兎屋」から始まった企業。

 学生時代から通っていた「鈴兎屋」は亘も好きで、共に和菓子が好きだったことで親しくなっていく。そして、日本版では美紗の亡き父親が美紗と亘をつなぐキーパーソンになっている。タクシー運転手だったという父は、キャンディーを「三時のおやつ」といって幼い頃から美紗に渡していたのだが、その包み紙で折った亀を何故か亘が持っている……。そして、亘と美紗の父の思いがけない縁も明かされていく。

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美紗の心優しい父(津田寛治)

 亡き父親を演じているのは、津田寛治。ドラマ「特捜9」などの刑事ドラマをはじめ、ドラマ、映画で幅広く活躍する名バイプレーヤーで、本作では娘を思う愛情深い父親を好演し、娘の人生のリセットを静かに見守っている。第1話では、美紗が病を押して自宅に帰る時にたまたま通りかかったタクシーを運転している。その時、彼女は気づかずにいるが、そこで印象深い台詞を残す。「きっと出会えます、あなたを本当に大事にしてくれる人に……」、そして、タクシーを降りる美紗に笑顔で「いってらっしゃい」という。改めて見直すと深い。

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