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「鬼滅の刃」早見沙織、胡蝶しのぶへの強い愛 『無限城編』童磨戦で限界を超える挑戦

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された吾峠呼世晴の人気漫画を原作とする『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。7月18日に公開初日を迎え、迫力に満ちた激闘が、観客の心を鷲掴みにしている。その中で宿敵である上弦の鬼・童磨と対峙し、壮絶なドラマを繰り広げるのが、「鬼殺隊」の柱の一人である蟲柱(むしばしら)・胡蝶しのぶ。テレビアニメのスタート時からしのぶを演じ続けている声優の早見沙織は、「ついにここに来た」と並々ならぬ感慨をにじませる。早見が童磨戦を振り返りながら、芝居においても新たな扉を開いてくれたというしのぶへの思いを明かした。(以下、本編の内容に触れています)

【動画・ネタバレあり】『鬼滅の刃 無限城編』早見沙織が語る胡蝶しのぶの感情

「台本をいただいてから、開くまでに時間がかかりました」

早見が演じる胡蝶しのぶ - (C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 家族を鬼に殺された少年・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、鬼に変貌した妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻すため、鬼を狩る「鬼殺隊」へ入隊し、仲間たちと共に戦う姿を描く本作。無限城編では、十二鬼月を束ねる鬼舞辻無惨の本拠地「無限城」を舞台に、炭治郎たちの決戦が描かれる。

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 約6年にわたってしのぶを演じてきた早見は「『ついに来てしまった』という思いもありましたし、そこに向けてどのような気持ちで臨めばよいのだろうという、プレッシャーもありました」と打ち明け、「しのぶの思いを一緒に抱え、向き合っていくという覚悟を決めるという意味でも、台本をいただいてから開くまで少し時間がかかりました」と相当な心構えを要する作品だったと振り返る。

 ありったけの情熱と覚悟を注ぎつつ、しのぶと童磨との戦いの場面では「もっと熱量が必要だと感じた」という。

 「しのぶさんは大切なお姉さんであるカナエさんを、この鬼(童磨)に殺された。この鬼を絶対に許せない、ひいてはすべての鬼も許せないという思いを抱えつつ、それを隠しながら生きてきた人」としのぶの人生を分析した早見は、「そうやって生きてきたしのぶさんがついに童磨と出会ったら、どれだけ抑えようと頑張ったとしても、その思いがあふれてしまうと思ったんです。もともと100パーセントだった情動が、童磨と会ったことで150、200……とどんどんあがっていっても敵わない。どれほど熱量を上げても足りないと思うくらい、トップの感情で流れを作ることを意識していました」と童磨戦を語る。

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宮野真守が演じる童磨に、生々しい“舌打ち”

胡蝶しのぶが対峙する上弦の鬼・童磨 - (C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 上弦の鬼の一人である童磨を演じるのは、宮野真守。ふわりとした柔らかな笑顔と残虐性を同居させる童磨を、説得力と共に演じている。今回、宮野とは「掛け合いで収録ができた」とのこと。「宮野さんはずっと以前からお世話になっている、尊敬する役者さんの一人」と切り出した早見は、「こちらの言葉が届いているのか、届いていないのか。攻撃が効いているのか、効いていないのか。すべてがよくわからないような、童磨ののらりくらりとした姿をすばらしく演じていらっしゃっている」とその名演に惚れ惚れ。

 「『鬼滅の刃』での現場の宮野さんからは、いつもの宮野さんよりもずっと、ひょうひょうとした成分のようなものを感じました。一貫して、童磨としての軸を持って現場にいらっしゃった。アフレコは和やかな空気で進んでいましたが、宮野さんの童磨から、1本軸が通っているということを肌で感じていました」という宮野の演技は、しのぶの感情をどんどん引き出してくれるようなものだった。「アフレコでは、家で練習をしていた時よりも何倍も、しのぶの言葉が届いていない感覚があって。自分が抱えてきたこんなにも大きな情動が、どうしたら届くのだろうと思うくらいで」

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 そんな童磨に対してしのぶは怒りを覚え、「吐き気がする」といった激しい言葉もぶつけていく。早見は、「例えば、舌打ちをする、語気が荒くなるという時にも、アニメーションの中ではいろいろな表現ができるものです。例えば台本に『チッ』と書いてあったとして、(かわいらしい感じで)『チーッ!』と言ったりするとポップな表現になったりしますよね。『ふざけるな!』などのというセリフもコミカルに表現することもできますが、当然ですが童磨に対してはそういった表現は一切ありません」と説明。「しのぶさんの積もり積もった思いや、怒りがただ漏れている状態なので、デフォルメをしたポップな表現ではなく、人間の生々しい感情を出せたらと思っていました」ととことん生身の感情を追求し、「マイクの芯を貫いて、ブースの壁も貫いて、すべてを破り裂いていくくらいの魂を持って演じていました」と熱を込める。

胡蝶しのぶが与えてくれたもの

語り出すと止まらない!胡蝶しのぶへの愛 - 写真:杉映貴子

 しのぶは、鬼に対する憎しみを、優雅な佇まいや上品な笑顔で隠してきたような人だ。しのぶとのこれまでを辿ってもらうと、早見は「あえて意識して、いろいろなものを抑え込んだお芝居をしようとは思っていなかった」と役づくりについて打ち明ける。

 しのぶが初登場したテレビアニメ第十五話「那田蜘蛛山」を回顧した早見は、「しのぶさんは、『人も鬼もみんな仲良くすればいいのに』と言いますよね。でもその後に戦いが進んでくると、しのぶさんは『仲良くするのは無理なようですね』と笑顔で鬼を倒します。それが、しのぶさん」とにっこり。「『みんな仲良くすればいいのに』というセリフも、心の底からそう感じている人ならば、そういう表現にはならないと思うようなものが出てきました。いま振り返ってみても、優しい表現をする時のお芝居ではなかったのかなって。それはすべて、しのぶさんという人が扉を開けてくれたもの」とキャラクターに寄り添うことで、自分でも思ってもみなかった表現ができた様子。

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 声優としてキャリアを積む中でも、しのぶとの出会いは大きなものだったと続ける。「しのぶさんと一緒に歩んできた時間も、ずいぶんと長くなりました。関わらせていただく時間が積み重なれば積み重なるほど、胡蝶しのぶという人への驚きが溢れてくる」としみじみ。「しのぶさんの魂や血の中に流れているものを、私も一緒に持ちながらやっていきたいと思いました。そう感じさせてくれたのは、すべてしのぶさんです。私にとって、胡蝶しのぶが引っ張り出してくれた表現。しのぶさんがいなければ生まれなかった表現がたくさんあります」と演じるキャラクターがこんなにも新たな表現や感情を授けてくれるものなんだと、実感するような瞬間ばかりだったという。

 しのぶを演じる上で常に大きな存在であり続けたのが、姉のカナエだ。早見は、本作においてもカナエの存在に痺れ、姉妹のつながりの深さに大いに心を揺さぶられたと話す。カナエへの思いを口にすると、しのぶと一心同体になっているかのように「語り出すと止まらない!」と目頭を熱くした早見だが、「しのぶさんの生き方から、刺激をもらうことがたくさんあった」と告白。「しのぶさんは不器用なところもあって、鬼殺隊や柱になる上でも不利な条件がたくさんあったりもするんですね。それでも『私はこの道を進む』『絶対に突き進んでいける』という意志や胆力を持った人。本当に尊敬します」と最後まで強い愛情を傾けていた。(取材・文:成田おり枝)

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は全国公開中

※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正式表記

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