『トロン:アレス』構想12年のチェイスシーン「必ず期待に応えなければ」ジャレッド・レトー&監督の挑戦

ディズニー映画『トロン』シリーズ最新作『トロン:アレス』(全国公開中)で主人公アレスを演じたジャレッド・レトーと、メガホンを取ったヨアヒム・ローニング監督が、「必ず期待に応えなければならない」という覚悟で挑んだライトサイクルのチェイスシーンへの思いをオフィシャルインタビューで明かしている。
CGを本格導入した初の長編映画として知られる1作目『トロン』(1982)は、デジタル世界「グリッド」に送り込まれた天才技術者ケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)の冒険を描いたアクション。2010年公開の続編『トロン:レガシー』では、フリンの息子サム(ギャレット・ヘドランド)を主人公に、失踪した父親の行方を巡る物語がつづられた。
前作から15年、『トロン:アレス』ではついに高性能AIが現実世界へ襲来。29分間しか実体化できない最強のAI兵士・アレス(ジャレッド)が、“永遠”を求め暴走を始める。
第3弾の企画は『トロン:レガシー』公開直後の2011年ごろから報じられていたが、製作棚上げ&復活を繰り返し、15年の歳月が過ぎた。その一方で、テクノロジーは進化を続け、『トロン:アレス』では最先端のデジタル技術を駆使した新たな映像革命に挑んでいる。
映画の見どころとなるのが、『トロン』シリーズの代名詞でもあるライトサイクルのチェイスシーンだ。同作では、初めてライトサイクルが現実世界のハイウェイを疾走する。
ジャレッドはチェイスシーンについて「あれはまさにヨアヒムの“子ども”のようなものでした。彼が10年から12年ほど、ずっと頭の中で温め続けてきたアイデアで、ようやく形にして世に送り出したのです」とヨアヒム監督が長年温めていたシークエンスだったと告白する。
ヨアヒム監督も「彼の言う通りですね」と頷き、「多くの人にとって『トロン』と聞いてまず思い浮かぶもののひとつは、やはりライトサイクルだと思うんです。ライトサイクルのシークエンスは、必ず期待に応えなければならないとわかっていました。それは私にとっても、関わった人全員にとっても非常に重要なことだったのです。みんなで、それをさらに次のレベルへ引き上げようとしていました」と並々ならぬ思いを打ち明けた。
「しかも新作の大きなコンセプトは『デジタル世界が現実世界を侵食する』というもの。ですから、ライトサイクルが現実の街を走り抜けて、その背後に光の壁を残していくーーそんな発想自体がすでにワクワクするものでした。そのアイデアが脚本の30ページ目あたりに出てきたとき、私は『これはぜひ参加したい!』と思い、すぐに連絡をしました(笑)」(ヨアヒム監督)
ヨアヒム監督が描く『トロン』の世界観に浸ったジャレッドは、「最高でした」と満足げな様子。「ヨアヒム監督とチームが作り上げたものには圧倒されました。ライトサイクルやセットなど、すべてが見事で、俳優にとって大きな助けになるんです。実際にバイクに乗って動かすことができて、しかも今は『ボリューム』と呼ばれる技術があって、空っぽの空間で演じるよりもずっと自然に入り込めるんですよ。ですから、演じていて本当に素晴らしかったです。大好きな映画だったので、子どもの頃から憧れていたその世界の中に自分がいるなんて信じられない、という日が撮影現場では何度もありました」と充実感をにじませた。
幼少時代、オリジナル版『トロン』に夢中になっていたジャレッドは「特に好きだったのは、それまでに味わったことのない形で自分の想像力をかき立ててくれたことです。テクノロジーとクリエイティビティ、アクション、アドベンチャー、楽しさ、そしてユーモアーーそれらがすべて組み合わさっていて、私にとってはまさに完璧な体験でした」と非日常的だった映画体験を振り返る。
続編『トロン:レガシー』が製作されたときも嬉しさが込み上げたというジャレッドは、「年月を経て、今作ではヨアヒム監督が過去をしっかり尊重しつつも、まったく新しくて独自のものを作り上げてくれたと思います。少しエッジが効いていて、少しだけヨアヒムらしい美学が色濃く出ているーーそんな作品です」と新作をアピール。「さらに、ナイン・インチ・ネイルズの音楽が加わることで、僕らはまったく新しい場所へと連れて行かれます。僕が、子どもの頃に映画館で『トロン』を観て夢中になったあのときのように、多くの人がこの映画を心から楽しんでくれることを願っています」と観客に呼びかけていた。(編集部・倉本拓弥)


