『プレデター:バッドランド』に『AKIRA』&北村龍平の影響 監督が明かす日本映画愛

映画『プレデター』シリーズ新章『プレデター:バッドランド』(全国公開中)を手がけたダン・トラクテンバーグ監督が、史上初となる主人公プレデターの物語を企画した経緯、劇中に登場するクリーチャーデザインのこだわりや、日本映画からの影響について語った。
【画像】チャーミングな素顔!デク役のディミトリアス・シュスター=コローマタンギ
強者を狩ることを誇りとするヤウージャ族の若きプレデター・デクが、宇宙で最も危険な惑星でサバイバルを繰り広げる本作。道中で出会った謎の半身アンドロイド・ティア(エル・ファニング)と共に、己の存在を証明するため、より凶悪な獲物を求めて惑星をさまよう。全米およびグローバルでは、シリーズ史上最高のオープニング記録を樹立し、全米の大手批評家サイト「Rotten Tomatoes」では、批評家スコアが85パーセント、観客スコアが95パーセントと高評価を得ている。
これまで強者を狩り続けてきたプレデターを、なぜ主人公として登場させたのか。トラクテンバーグ監督は「それはファンの考えから生まれたんです」と笑顔で語る。「これまで数々の映画を観てきましたが、プレデターはいつも負けています。だから私は、どうすればプレデターが最後に勝つ映画を作れるかということを考えたんです。ですが、私は悪者が最後に勝つスラッシャー映画は作りたくありませんでした。そこで『普段人間が経験する物語を、今回はクリーチャーやモンスターに経験させる話こそがクールなんだ』と気づいたんです」
主人公・デクを演じたのは、ニュージーランド出身の新鋭ディミトリアス・シュスター=コロアマタンギだ。トラクテンバーグ監督が彼を起用する決定打となったのは、ディミトリアスがデクのように軽やかに疾走する姿だった。
「第一に、彼(デク)が『群れの中で一番小さい者』というキャラクター設定だったため、今回のプレデターの体格やサイズを、普通の体格の俳優でも演じられるようにできたことです。通常、プレデター映画を制作する際は、プレデターの大きな体格に合う俳優をキャスティングせざるを得ません。そして、これまではそういう大柄の俳優たちの素晴らしい演技に恵まれてきました。でも今回は、本当に俳優を最優先に選ぶことができたのです。そして、ディミトリアスは驚くほど表現力豊かな目を持ち、オーディションでは英語と創作したヤウージャ語の両方で素晴らしい演技を見せてくれました。その後、彼に障害物コースに挑戦してもらいました。その役の候補になっていた他のスタントマンたちと一緒にです。そして、彼が障害物コースを駆け抜ける姿は、あまりにもカッコよくてクールだった。他のスタントマンたちよりも優れていて、私たちは“自分たちのデクを見つけた”と確信したんです」
また、アンドロイドのティアを演じたエルの起用についても「私たちがキャスティングを始めた頃、実はドラマ『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』を観ていて、彼女が信じられないほどユーモアがありながらも強烈な存在になれることに気づいたんです。それはまさに、彼女が演じる2役であるティアとテッサの両方に必要だった要素でした。そして、エル・ファニングのような人が、プレデターの背中に縛り付けられているというアイデアに心を奪われたんです」と明かした。
デクが狩りを繰り広げる惑星には、さまざまな凶悪クリーチャーが生息している。多種多様なクリーチャーにも、トラクテンバーグ監督のこだわりが表れている。
「クールなクリーチャーをデザインするのは非常に難しいです。特に、ただカッコよくて怖い見た目にするのが目的なら尚更です。そこで私は、その惑星や地形、そして生物が進化したであろう過程を、クリーチャーのデザインを決定する指針にしようとしました。例えば、カミソリの草の草原がありますが、その中には、そこで食べているクリーチャーがいないといけません。もしカミソリの草が主な餌場なら、そのクリーチャーの皮膚には、それを保護するために角のような鎧が発達し、口を覆うくちばしがあって、それが開いてカミソリの草を断ち切るだろうと。つまり、その惑星の生態系がそこでのデザインを決めていくようにしたのです」
さらに、プレデターの手に汗握るアクション演出には日本映画の影響も見られる。特にトラクテンバーグ監督は、大友克洋の人気アニメーション映画『AKIRA』(1988)と、『ゴジラ FINAL WARS』(2004)や実写版『ルパン三世』(2014)などで知られる北村龍平監督の影響が色濃く出ていると明かした。
「私や多くの人々に多大な影響を与えたのは『AKIRA』を観たことです。『プレデター:最凶頂上決戦』(『プレデター』の長編アニメ映画)を制作したのですが、まさに強くインスパイアされた作品でした。アニメ映画はおろか、どんな映画でも見たことのないほどの暴力描写だけでなく、 アクション演出もそうです。特に記憶に残っているのは、金田がジャンプするところ。向かってくるバイクの前輪を蹴って飛び上がり、空中で前蹴りを決め、バイクの反対側に着地するんです。それは、私がそれまで見たこともないものでした。日本の監督もいます。北村龍平です。私が映画学校に通っていた頃、映画祭で『VERSUS ヴァーサス』(2000)を観たのを覚えています。あのジャンルの組み合わせと、あのレベルの楽しい暴力描写は初めてで、その後私が手掛けた作品、特に『プレデター』シリーズに確実に影響を与えています」
トラクテンバーグ監督の日本映画愛はすさまじく、「私はあらゆる時代の日本映画を愛しながら育ちました」とも。「圧倒的な暴力描写や独創的な手法が満載であるだけでなく、テーマ的にも非常に豊かで、単なる娯楽ではなく深い意味を持つ物語がたくさんあることを知っています。そして、『バッドランド』はそうした要素を全て満たし、みなさんを感情のジェットコースターに連れていってくれる作品になると思います」と自信たっぷりに語っていた。(編集部・倉本拓弥)


