BE:FIRST・JUNONが映画デビュー作で激変「アクションが助けに」 人見知りが共通点の監督と撮影の裏側明かす

にいさとるの人気漫画を水上恒司主演で実写化する映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』(公開中)で、ダンス&ボーカルグループ・BE:FIRSTのJUNONがスクリーンデビュー(劇映画)を果たした。同作は、4年で世界累計発行部数1,000万部を突破し、アニメ化もされた同名漫画を原作とした青春映画。不良の巣窟と恐れられる風鈴高校で街を守る正義の不良集団として活躍する「防風鈴」のメンバー、杉下京太郎。寡黙だが怒らせたらヤバい“狂犬”の異名をとるキャラクターにふんし、アクションシーンにも挑んだ心境など撮影裏を、萩原健太郎監督と共に振り返った。(取材・文:編集部 石井百合子)
映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』ストーリー
ケンカだけが生きがいの高校生・桜遥(水上恒司)は、不良が集う風鈴高校を制覇すべく高校のある東風商店街を訪れる。そこには、「防風鈴(ウィンドブレイカー)」と呼ばれ、街を守る高校生たちがいた。桜は意外な事実に戸惑いながらも、風鈴高校の総代である梅宮一(上杉柊平)率いる防風鈴のメンバーと共に街の平和を守る活動に明け暮れるハメに。そんななか、防風鈴と敵対するグループ「獅子頭連」が現れ、リーダーの兎耳山丁子(山下幸輝)、その右腕である十亀条(濱尾ノリタカ)らと拳を交えていく。
監督が感じたJUNONの“普通”な魅力
Q:萩原監督はこれまでも映画『東京喰種 トーキョーグール』(2017)、『ブルーピリオド』(2024)など漫画の実写化作品を手掛けられていますが、「WIND BREAKER」を実写化するにあたって、特に意識したのはどんなところだったのでしょうか。
萩原健太郎監督(以下、監督):“風”ですね。高校生たちが暴風の中で戦う画をやりたかった。タイトルでもあるので、そこにちゃんと意味をもたせたいと。だから商店街の設定を“風の通り道”とし、外敵が来ると風が吹くという設定にしました。敵となる獅子頭連を壊す存在として防風鈴がいるという。ロケを沖縄にしたのもそのためで、金武町という場所でロケを行ったのですが、台風が多い町なので看板がないんです。飛ばされてしまうから。
Q:ロケとなるとその間、住民の生活を止めなければならないので大変ですよね……?
監督:実際に営業中の商店が並ぶ通りで、町の方々のご協力のもと、東風商店街として飾らせていただきました。撮影では、日中延々と風を吹かせていたので、スタッフの労力も大変なものだったと思います。通りを抜けた奥にある木まで揺らさねばならず、やることは山積みでしたが、町の方々の協力のおかげで乗り切れました。キャストたちの負担もしかりで、暴風のシーンではセリフは聞こえないわ、髪もぐちゃぐちゃになるわで、みんな相当体力を奪われたんじゃないかな。
Q:萩原監督は、これまでJUNONさんにどういう印象を持たれていますか。
監督:カッコいい人。スター性があって華がある。インタビューやイベントとか撮影以外の場では“BE:FIRSTの人と写真撮ってるんだ!”って、ちょっと緊張するんだけど、実際に接してみるといい意味で“普通”。
Q:普通とは……?
監督:以前、倍賞美津子さんとお話しさせていただいた時に、倍賞さんが今村昌平監督に“あなたは本当に普通でいいね”と言われたそうなんです。倍賞さんとしてはそれがすごく嬉しかったとおっしゃっていて。それってある種、共感しやすさ、親しみやすさの表れなのかなと思ったんですけど、JUNONくんにもすごく感じた。一緒にいても緊張しないし、きっとオープンな人なのかなって。水上くんや綱(啓永)くん、(木戸)大聖くんたちともすぐ打ち解けていたしね。
JUNON:僕は結構人見知りなんですけど、確かに慣れると壁を作らないタイプです。なので監督とは初めてお会いした時にはあまりちゃんとお話しできていなかったですよね。監督は人見知りですか?
監督:めっちゃ人見知り! 監督としてじゃないと話せない(笑)。
Q:JUNONさんは、もともと俳優志望、あるいは演技をやってみたいと思われていたのでしょうか。
JUNON:映画を観るのは好きなので今回お話をいただいてぜひやってみたいと思いました。
Q:杉下京太郎は顔を覆い隠すような長髪がトレードマークで、「防風鈴」のリーダーである梅宮に絶対忠誠を誓い、梅宮が侮辱されると手を付けられなくなるほど激高する“ヤバい奴”でもあります。長身である点以外は、外見も性格もJUNONさんご本人とはかけ離れたイメージですが、そうしたキャラクターでオファーを受け、どういう風に感じましたか?
JUNON:キャラクターがどうこうという以前に、オファー自体にびっくりしました。杉下に関しては、もともと原作が好きだったのですが、実写には難しいのではないかと思いました。内面はともかく、外見だったり起こす行動があまり現実的ではないと思うので、そういったところは難しそうだなと思っていました。
JUNONにはついいろいろお願いしたくなる(監督)
Q:杉下は寡黙なキャラクターでセリフも少ないですが、だからこその難しさもあったのでしょうか?
JUNON:初めての撮影ということで、セリフが少ないことで初めは気持ち的に少し楽だったんですけど、実際にやってみると逆に難しいのかもしれないって。「居る」だけの演技というのもありますし、ましてや杉下っていう居方すらもどっしりしている感じは普段の自分にはないところなので。
監督:JUNONくん、良かったですよ。初めてだと気張ったり過剰になったりしがちなんですが、JUNONくんは全然自然だし。あと、演出に対しての理解度が高いので、すごくやりやすかった。なのでいろいろ提案させてもらいました。例えば、後半に撮ったアクションシーンで“ちょっと見たことない杉下の顔を見たいな”って言ったら“わかりました”と応じてくれた。ちょっと上を向くっていう(笑)。
Q:結構ムチャぶりですよね!?
JUNON:びっくりしました(笑)。
監督:でも、ちゃんとやってくれたよね。あと、セロリ食べるシーンがあったけどセロリ嫌いなんだよね……?
JUNON:いえ、あまり生で食べたことがないというだけで。
監督:あれも原作にないシーンで、多分撮影の数日前ぐらいに思いついて。JUNONくんは何でも吸収してくれるし、何でもトライしてくれるから、いろいろやってほしくなっちゃいました(笑)。
杉下のアクションシーンは「荒々しさ」がポイント(JUNON)
Q:杉下に関してはアクロバティックなアクションシーンもありましたが、そもそも杉下のアクションのイメージをどのように構築されたのでしょう?
監督:杉下は「防風鈴」のメンバーの中で一番パワータイプというか。柊(中沢元紀)に近いかもしれないですけど、いかにその力強さを出すのかというのを考えました。
JUNON:よく“獣っぽさを出してほしい”とおっしゃっていましたよね。息遣いの荒々しさとか、戦いの前に構えている時とかも普通の人ではないというか野蛮な感じというか、形を全く気にしていない粗さがある。だから殺陣の形をあまり綺麗にっていう感覚でやっていなかった気がします。荒々しさが欲しいと思いながら演じていました。
Q:JUNONさんはBE:FIRSTとして普段ダンスをやられていますし、サッカー経験もあって身体能力が高いと思うのですが、そのぶんアクションシーンもスムーズだったでしょうか?
JUNON:そうですね。アクションシーンが助けになった気がします。最初に撮ったシーンがアクションシーンだったので、体を動かしてウォーミングアップじゃないですけど場に慣れることができたのですごく楽しかったです。
監督:特に「まっするぱわー」での戦いが良かったよね。“まっする人形”を守って、店内で戦いがあって、最後に捨てゼリフ(「梅宮“さん”だ、馬鹿が」)を吐く。あれ、すごく好きですね。杉下は、あのセリフが決まるか決まらないか、といっても過言ではないから。あのシーンも風を吹かせて鰹節を降らしたりしているので髪や壁に鰹節がついたり、顔が見えなくなってしまったり大変で。
JUNON:匂いも凄かったですよね(笑)。
主題歌は出演しているからこそ書けたもの
Q:主題歌についても伺いたいのですが、今回BE:FIRSTの「Stay Strong」が起用され、JUNONさんが作詞にも参加されています。ご自身が出演する映画の主題歌の作詞を手掛けるのは難しかったのか、だからこそやりやすかったでしょうか?
JUNON:だからこそやれたんだと思います。これまでにも作詞をしたことはあったんですけど、完全書き下ろしみたいな形でやったことがなくて。本作はアニメを観ていましたし、完成前の映画も観せていただいて、自分が撮影の中で感じたことも歌詞に入れているのでヒントにもなりましたし、やりやすかったです。流れを通して桜の心情の変化が分かるように、フック(サビ)の部分に向かってヴァース(Aメロ)から変化していく流れを作ってみたので、そういう一連を通して、個人的にもすごく好きな曲になりました。
監督:“Break”のところかっこいいよね。
JUNON:曲調が難しかったです。これまであまりリリックを入れてみたことがなかったので、そこは難しかったです。
Q:JUNONさんは今後やってみたい役はありますか。
JUNON:うーん、人間……もっと人間味のある役をやってみたいかもしれません。
Q:今回はかなりぶっ飛んだ役だったから?
JUNON:そうですね、感情は難しい部分がありました。
監督:確かに人情モノはいいかも。でも悪い役とかじゃないよね、きっと。暗い役もやってほしくない。
JUNON:希望……?(笑)
監督:コメディーとか向いていそうだよね。
JUNON:面白そう!
Q:最後に一言ずつ特に注目してほしい映画のポイントをお願いします。
JUNON:たくさんあるんですけど、セットから何から何までたくさんこだわられていて、すごく色鮮やかなんですよね。ヤンキー漫画が原作ということでケンカとか暴力に抵抗がある人でも……見どころはそこじゃないっていうのがすごく言いたくて。人情深い、心が温まるような作品になっているのが、いわゆるヤンキー漫画とのギャップでもあるのですごく見やすいと思います。見終わった後、本当に心が温まるような映画になっていると思うので、ぜひチェックしていただきたいです。
監督:ジャンルとしてはヤンキー映画ではありますし、もちろんアクションにはこだわってますし、すごくカッコいいものが撮れたと思っているんですけど、映画として根本的に描きたかったのは、弱さとか優しさとか、そういうものを認め合うこと。そうした意味では誰もが世代を超えて楽しめる作品になっていると思います。あと、仲間と観に行くといいかもしれないですね。映画館を出た後に誰かと拳を合わせたくなるような映画にしたいと思っていたので。ぜひお友達とみんなで観に行っていただければと思います。
JUNON:ヘア:大城祐樹/メイク:マキノナツホ(from hiji)/スタイリスト:安本侑史


