松山ケンイチ「セリフはノートに書いて覚える」 大河ドラマ「平清盛」から始めたこだわり
俳優の松山ケンイチが12日、都内で行われたドラマ10「テミスの不確かな法廷」（2026年1月6日スタート、NHK総合毎週火曜夜10時～10時45分ほか※全8回）の取材会に出席。本作で幼少期にASD（自閉スペクトラム症）とADHD（注意欠如多動症）の診断を受けた特例判事補を演じた松山が、役へのアプローチやこだわりを明かした。
本作は、新聞記者である直島翔のリーガルミステリーに基づくドラマ。発達障害を抱える裁判官をはじめ、裁判所職員、検事、弁護士、それぞれが真実を求めてぶつかり合う緊迫した法廷の攻防と、時にかみ合わない会話をコミカルに描きながら、“普通”とは何か、“正義”とは何かを問いかける。脚本をドラマ「イチケイのカラス」シリーズ、 「ブルーモーメント」「絶対零度」シリーズなどの浜田秀哉、チーフ演出をドラマ10「宙わたる教室」の吉川久岳が担当。会見には安堂に翻弄される弁護士・小野崎乃亜役の鳴海唯、安堂の上司で部長判事・門倉茂役の遠藤憲一、制作統括の神林伸太郎も登壇した。
松山は登壇すると、「撮影は終わっていなんですけど、日々皆さんと楽しみながら撮影をさせてもらっています。リアルな法廷劇で、監修の方もそばにいて、難しい言葉の連続。いつも難しい言葉を喋り続けている印象です」と撮影を振り返り、法廷用語や長台詞に対処するために「ノートにセリフを書いて覚えている」と工夫を明かす。大河ドラマ「平清盛」（2012）の頃から言い慣れない難しいセリフや長台詞に対処するためにノートにセリフを書くようになったといい、「書くと半分くらい覚えられます。台本を読むと5分で眠くなる病気で……」と笑顔を見せつつ、自身のルーティン、こだわりを語る。
松山は「法律の名前、例えば労働基準法とか、口にしたことのない言葉なのでイントネーションはどうなっているとか、その都度監修に確認しています。自分たちで東京地裁に見学に行ったり、そう言うことも雰囲気を作り込むために必要なんです」と本作での役づくりを紹介。ASDやADHDの症状を知るためにグループケアの現場を見学しにも行ったと述べ、「そういう特性を持った方と話をさせてもらって、その経験をうまく生かしながら演技をしていく感じです。日常生活の中、自分が普通に感じることも、もしかしたら（安堂としては）違うのではないかと考えたり。そういう疑問は流さず、気をつけながら演じています」と話す。
グループケアではASDやADHDの人同士がテーマや議題を与えられ、それを解決するための意見を出し合う場を見学して感銘を受けたことも振り返り、「皆さんの目がイキイキしているのが印象的でした。自分を理解してくれる者同士の優しい空気感があって、素敵なコミュニティだと思いましたが、自分が安心できる場所と、仕事場のような他人に囲まれてスピード感を要求される場所、自分が戦っている場所での雰囲気の違いを考え、それをうまく表現できたらいいなと思っています」と話す。安堂の特性、動作の意味を書いた「安堂ノート」をスタッフが作ってくれたことも紹介する。
弁護士を演じる鳴海は「毎日誰かしらが長セリフを言っている現場。その日、台本を見て、今日この人が大変だなって。そうお互いに思い合うことがチームワークの強化に繋がっていると思いました」と撮影を振り返る。「俳優を始めて7年目ですが、松山さん、遠藤さんとお芝居をしていて驚かされるのは、変化球のお芝居です。自分が想像していない台詞回しがあったりして、素晴らしいなって思いながら見ています。私もそれに応えなきゃと思って頑張っています」と先輩俳優たちから刺激を受けている様子。
遠藤は判事役。「法廷ものは手を出さないでおこうと決めていたんです。覚えないといけないことがたくさんで、自分の中で一杯一杯。俳優人生42年の中で一番難しい作品になりました」と法廷ものの難しさを口にする。「ギブアップ寸前でやっています。面白いけど覚えようと思うときつくて」と笑顔で奮闘を明かしていた。（取材・文：名鹿祥史）