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菅田将暉「当たり前がいつの間にか変わる怖さ」 科学の進歩に思うこと

「火星の女王」より菅田将暉演じるアオト
「火星の女王」より菅田将暉演じるアオト - (C)NHK

 放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK総合、BSP4Kで毎週土曜よる10時~11時29分放送中※全3回)に出演する菅田将暉が、作品のテーマでもある「未知なるもの」に日々遭遇することで覚える危機感について語った。

アオト(菅田将暉)が記者・北村(滝藤賢一)と出会う…第2回場面写真

 本作は、直木賞作家・小川哲の小説を原作にしたSFサスペンス。火星に10万人が移住した100年後の世界を舞台に、未知の力を持った謎の“物体”が現れたことで新たな時代が動き出すさまを描く。生まれつき視覚障害がある主人公・リリ-E1102を、オーディションで抜擢された台湾出身のスリ・リンが演じるほか、同じく台湾からサンディ・チャン、韓国からシム・ウンギョン、ナイジェリアからデイェミ・オカンラウォン、日本から岸井ゆきの菅原小春宮沢氷魚吉岡秀隆宮沢りえUA鈴木亮平松岡茉優ら多国籍の俳優が集結。演出を「きれいのくに」(2021)、「17才の帝国」(2022)などの西村武五郎らが務める。

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火星の様子

 物語は主に地球と火星で展開され、菅田演じる白石アオトは地球組。火星を統治する惑星間宇宙開発機構「ISDA」の日本支局に勤める若手職員だ。物語は、地球から火星への移住計画を推進していた「ISDA」が突如、計画を中止したことから始まり、アオトの恋人であるリリが地球に向かおうとした矢先に何者かに拉致され、アオトはリリの行方を追ううちに「ISDA」が秘めた思いがけない事実に遭遇する。

 出演の決め手について「宇宙に興味がありますし、この規模、スケール感のドラマって、映画でもなかなかないので断る理由はなかった」と語る菅田。なかでも興味をひかれたのは「多言語によるコミュニケーション」だったという。

 「撮影で楽しみだったことの一つは未来の話っていうSFの部分。火星が出てきたり、凄まじいCGが出てきたり。もう1つは多人種感というか、主演のスリちゃん、ファン総長役のサンディ・チャンさんしかり、いろんな人種の俳優たちといろんな言葉でコミュニケーションできる現場というのはなかなか経験できることではないので」

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サンデイ・チャン演じるISDAのファン総長

 アオトのキャラクターについて「ないものより、あるものを数えるのがアオト」と語る菅田。「目の前にないものや未知なる存在を研究する人だからこそ、今あるものを大事にしているところが、多分彼の面白いところで。だからアオトってファッションもそうですけど、昔のものをたくさん掘っていっているんです。「ディスク・マイナーズ」っていう地球の昔の曲をカバーするバンドが好きだったり。あの時代に有線のヘッドホンをしているぐらいなので、ギークな人なんだと思います。僕も古着が大好きですし、彼のそういうところは理解できます」と共感を寄せる。

 火星が舞台と聞くと別世界のように思えるが、描かれていることは普遍的なことだったりする。火星の住人たちは腕の中にタグ(個人識別チップ)を埋めることが義務付けられており、そのことで生活が保障される代わりに徹底した管理下に置かれ、自由がない。一方、そうしたシステムに強く抗うコミュニティーもあり、体制派と反体制派の間に生まれる軋轢は現代にも通じるものがある。物語の中で菅田の琴線に触れたのが「ラブストーリー」だという。

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 「台本を読んでいる時にはあまり感じていなかったんですけど、この話ってラブストーリーなんだなというところにグッときて。僕が最近、あまりやっていなかったのもあるのかもしれませんが。なぜ気づかなかったかというと、地球にいるカップルのラブストーリーとは世界観のスケールが全く違うから。リリは火星、アオトは地球にいるので、ものすごい遠距離恋愛なんです。なおかつ、好きだ愛だとかいう以前に、生きていることとか言葉を交わせること自体が宝物であるという感動はすごくありました。リリとはほとんどがメッセージでのやり取りなんですけど、メッセージ一つにしても届くのは十何分後で、返ってくるのはさらに十何分後という世界。メッセージも音声データだったりするから、あまり実感がない言葉だったりするんですよね。だからこそ、その先にある二人の展開がロマンチックに感じられる」

主人公でアオトの恋人リリを演じるスリ・リン

 また、菅田は本作では「音」が重要だといい、スリ・リンとの共演をこう振り返る。

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 「スリちゃんは特に声がすごく素敵で。セリフのトーンもそうですし、僕がギターを弾いて歌ってくれたときの声も。音楽を介して通じ合っているところがずっと楽しい時間だった印象があります。あと、思っている以上に日本の作品を見てくださっているのも嬉しかったです。シンプルに国を超えてこんなに見てもらえているんだと。例えば僕が出演した「コントが始まる」(2021)とか。“あ、そんな届き方しているんだ”とびっくりすることもあって、大事に思ってくださっているのが嬉しかったです」

 第1話は火星で謎の物体が発見され、その利権争いが幕を開けるところで終わった。それは石炭、石油、原子力に続く新しいエネルギー源になる可能性を秘める一方で、星一つ吹き飛ばすほどの危険をはらんでいるという。菅田に「未知なるものに脅威を感じることは?」と問うと、こんな答えが返ってきた。

 「未知なるものが怖いというより、それに付随して“当たり前”が気づかないうちに変わっていることが怖いです。僕、いまだにキャッシュレス決済を使っていなくて。フリック入力すらできないのでそもそもデジタルに弱いというのもあるんですけど、新しいSNSツールが出てきたときに、完全に置いて行かれたなと思っています。“なんで?”って思うかもしれないけど、僕からしたらその“なんで?”が怖い。いつの間に、なんでみんな使いこなせているの? って。昨日までそんなんじゃなかったじゃんって。夏がすごく暑くなったり、秋が短くなったりしていることとかもそうですけど」と、目まぐるしく変わりゆく昨今に思いを馳せていた。(取材・文:編集部・石井百合子)

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