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岩井俊二『式日』主演起用の理由とは 庵野秀明と明かす撮影秘話

『式日』で監督・脚本を務めた庵野秀明と主演を務めた岩井俊二
『式日』で監督・脚本を務めた庵野秀明と主演を務めた岩井俊二

 映画監督の岩井俊二が19日、都内で開催された「『式日』特別上映イベント 岩井俊二×庵野秀明×鈴木敏夫 ~IWAI SHUNJI Film Works 30th Anniversary 1995-2025 Special Event~」に登壇し、庵野秀明の脚本・監督で制作された実写映画『式日-SHIKI-JITSU-』(2000)の役者経験を振り返った。この日は庵野秀明、プロデューサーを務めた鈴木敏夫が登壇した。

【動画】「 IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995-2025」特別予告映像

 「IWAI SHUNJI Film Works 30th Anniversary 1995-2025」は、岩井俊二の映画監督30周年を記念して、12月26日から開催されるレトロスペクティブ上映。今回、特別上映された『式日』はスタジオジブリの設立した「スタジオカジノ」の第1回作品として、監督・脚本を手掛けた庵野の故郷である山口県宇部市を舞台に描かれた実写映画。“描くべきテーマを見失った映画監督”である「カントク」を岩井が演じ、鈴木プロデューサーを務めた。

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 監督を務めた庵野は、岩井に主演を起用した経緯について「主役は監督を経験した人にお願いしたいと言ったら、鈴木さんが岩井俊二さんをすすめてきた」と説明。代官山で岩井と会い、直々にオファーをしたといい「(岩井から)考えさせてくれと言われて、即答ではなかったのでダメかもって思ったんです。そしたら後日、お受けしますって」と回顧。岩井は『リリイ・シュシュのすべて』(2001)前の忙しい時期だったという。

 岩井がこの役に向いていると直感で感じたという庵野は「岩井さんに最初会った時に、ピンときたんです。まずはビジュアルですよ。見た目がかっこいい。そこからです。岩井さんがやらないなら、自分がやるしかないなって思っていました。それはもちろん最後の選択肢としてですけど」と当時を懐かしむ。

 岩井は『リリイ・シュシュのすべて』の(小説の)インターネット配信と重なったことから、“スケジュール的に難しい”と感じていたというが、説得を受けてオファーを受諾。「いざとなったら庵野さんがやると言っていたので大丈夫かなって思ったんですけど、あとで脚本が送られてきたら、なかなか出番があって、これをやるのかって驚いた」と振り返る。

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 俳優経験については「撮影現場で言うと、自分がふだん監督をやっているので、“俳優ってこんな身軽なんだ”って。監督はスタッフが言ってくることに対応しないといけない。それがないので自分のことだけ考えていればいいんだって。それは収穫でした。その立場から庵野さんを見ると、大変そうだなって。普段自分がやっている仕事を客観視し、少し怖くなったりもしました」と話す。

「IWAI SHUNJI Film Works 30th Anniversary 1995-2025」(C)2001 LILY CHOU-CHOU PARTNERS

 庵野はこれに「ずっと遊んでいましたよね」と当時の岩井の様子を紹介。「ワンシーンだけ、岩井さんの演出があるんです。小学生の子供たちが出てくるシーンで、僕は好きなようにやっていいよって子供たちを自由にさせていたんです。そしたら、岩井さんが痺れを切らして、君はこうしろ、ああしろって言い出して。それも面白いかなって、岩井さんに任せました。あそこだけ『花火』(『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』)みたいな雰囲気。岩井さんの映画みたいになっていた」と笑みをこぼす。

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 そのうえで、庵野は「演技にNGは出していない。芝居をつけるとアニメに近づくのが嫌で。なるべく、役者さんが好きに動いてほしいって、みんなの好きにさせていたんです。ある意味、僕の自由が効かない作品にしたかった。アニメは逆に動きをつけないと前に進まないでしょ。実写はそうしたくなかった」と『式日』制作時の思いを告白。「ワンシーンだけ、岩井さんはあの頃ヘビースモーカーで、好きに吸っていいとなっていたけれど、撮影中に(演技で)タバコの箱をピッて地面に捨てていて、それはポケットに入れろってなった。僕はゴミのポイ捨てが嫌いなんです」と数少ないNGも紹介。「それ以外は素晴らしかった。でも時々ちょこざいな芝居をしてた」とジョーク交じりに岩井をいじりつつ、当時を振り返っていた。(取材・文:名鹿祥史)

特集上映「IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995-2025」 は2025年12月26日から2026年4月までTOHOシネマズ日比谷ほかで開催

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