ノーラン兄弟、幼少期から貫く“CGに頼らない”映画作り 実写ドラマ「フォールアウト」でも徹底

大ヒット人気ゲームを実写化したドラマ「フォールアウト」シーズン2の配信が Prime Video でスタートした。製作総指揮を務めたのは、鬼才クリストファー・ノーラン監督の弟にして、『ダークナイト』(2008)、『インターステラー』(2014)などの脚本を手掛けたジョナサン・ノーラン。圧倒的なリアリティでレトロフューチャーな終末世界を描き出したジョナサンが、兄クリストファーと培った、リアルへのこだわりを語った。
【画像】どこまで実写?ドラマ「フォールアウト」シーズン2場面写真
「フォールアウト」は、核戦争から200年後の荒廃したアメリカを舞台に、地下シェルターから地上に踏み出した主人公の旅を描くドラマシリーズ。1950年代に考えられていた未来像を反映したレトロフューチャーな世界観、現実社会への風刺とブラックユーモアを詰め込んだ物語など、ゲーム独自の要素を圧倒的なリアリティで実写化し、世界中で大きな話題を呼んだ。
製作総指揮を務めたジョナサンは、荒廃した世界をCGに極力頼らずに表現するため、ナミビアやユタ州の自然を生かしたロケを選択。また、汚染された世界で生まれた恐ろしいクリーチャーや、世界崩壊後も稼働するマシンの数々も極力“本物”を用意してプラクティカル撮影に臨んだという。
兄のクリストファーは、可能な限りCGに頼らないダイナミックな作品の数々で知られる名匠。「そこにあるものを撮る」アプローチは、兄の流儀から影響を受けたのだろうか。
「そうですね。ちょっとだけ年上の兄(笑)と一緒に、ストップモーションなんかを使って、地下室でおもちゃを撮影していたころから、プラクティカルな……そこに実際にあるものを撮るというのが、僕ら2人が考える映画作りだったんです。その考えは今も変わっていません」
「もちろん、新しい世代からはもっと違う感覚で作品にアプローチするフィルムメーカーがこれから出てくるでしょう。でも、僕たちの記憶には、3~4歳くらいから見てきた、素晴らしいSFXシーンの数々が残っているんです。才能ある俳優たちと仕事をする喜びは格別ですが、ナミビアやユタ州のような美しい場所を訪れ、自分たちが描こうと思った世界をリアルに作り、カメラに捉えるという経験もやはり格別です」
荒廃した“ウェイストランド”で逞しく生きる人々を描く原作ゲームでは、血生臭い争いも避けては通れない。ドラマでもゲームファンをうならせるバイオレンス描写に挑んでいるが「正直に言うと、怖かったり残酷なものはちょっと苦手なんです(笑)。僕はどちらかいうと『インターステラー』派」と苦笑するジョナサン。しかし、ゲームに忠実でいるためには、個人の好みよりも「表現しなければならない」要素だったと語る。
「バイオレンス描写ひとつでも、物語によって求められるものは変わってきます。『フォールアウト』でもある程度のレベルの表現が必要でした。ただ、バイオレンスとはいっても少し誇張した表現になっていると思います、クエンティン・タランティーノやセルジオ・レオーネ作品のようなね」
前回手掛けたドラマ「ウエストワールド」から今回の「フォールアウト」とSF作品が続いたジョナサンは「現実世界を描くことにあまり興味がないんです。いわゆるジャンル作品を作ることにしか興味がない。自分でそのことを自覚しています」と笑顔。原作ものが続くなか、「『フォールアウト』に関われていることを本当に幸運だと思っています。ただ次に何かやるとしたら、オリジナルのSF作品をやりたいですね。特にオリジナル作品が作りにくくなっていますから」と語っていた。(編集部・入倉功一)
「フォールアウト」シーズン2は Prime Video にて独占配信中 毎週水曜日17:00に最新話配信


