『国宝』がキネ旬ベスト・テン4冠!李相日監督、観客動員1415万人突破に「次の作品に向けてプレッシャーも」

映画雑誌「キネマ旬報」による映画賞「第99回キネマ旬報ベスト・テン」表彰式が19日、Bunkamuraオーチャードホールにて開催され、映画『国宝』が、日本映画監督賞、日本映画脚本賞、主演男優賞、読者選出日本映画監督賞の4冠を達成。メガホンをとった李相日監督が登壇し、大ヒットを記録するまでの思いを語った。表彰式には主演男優賞受賞の吉沢亮、脚本賞受賞の奥寺佐渡子も出席した。
「キネマ旬報」は、1919年(大正8年)に創刊され、ベスト・テンの選出は1924年度(大正13年)に始まった。ベスト・テン及び各賞の選考者は、映画を多く見ている者に厳しく限定され、2025年度は映画評論家、ジャーナリストなどのべ141名以上で行われた。
2025年6月6日に封切られた『国宝』は、3時間近くの上映時間にも関わらず口コミで評価が広がり、邦画実写映画ナンバー1の興収を記録。公開から255日間で観客動員1415万人、興収200億円を突破するなど、社会現象を巻き起こしている。
李監督は、今年で99回目を迎える同賞に「第99回と聞くと、本当にその歴史の長さを感じるのですが、非常に思い入れのある賞をいただきまして、ありがとうございます」と笑顔であいさつ。「僕が原作者の吉田修一さんと組むのは『悪人』『怒り』に引き続いて3度目でした。『国宝』という非常に重みのある歌舞伎が題材でもありますし、50年にも及ぶ壮大な叙事詩をその場にまとめ上げなければなりませんでした。真っ先に、この作品には喜久雄役である吉沢亮が欠かせないと思い、彼にお願いをしました。その次に、この作品を具現化するために最も重要な脚本を奥寺(佐渡子)さんにお願いするしかないと考えました」と、ともに受賞した二人にあらためて感謝を述べる。
「美しさ」を追求したいと作品に取り組んだという李監督。その美しさについて「もちろん歌舞伎の美しさや女方の美しさなど色々ありますが、映画というものは『人が人を見る』ものです。多くの観客の方が、スクリーンに映っている人間を見る。その人間が何を目指し、何に苦しみ、どこに向かおうとして、汗を流し、涙を流し、見果てぬ風景に向かって進んでいるのか。その美しさを映像に焼き付けたいと思っていました」と定義づける。
そんな“美”を具現化したのが吉沢や横浜流星だったといい、「真面目な俳優たちの献身が欠かせませんでした。同時にスタッフですね。スクリーンという大きな映像の中に、いかに観客を3時間もの時間没入させられるか。そのための技術を徹底的に、高い技術を披露してくれたスタッフの皆さん。この皆の力の結集、映画が持てる力の結集が、多くの方に届いたのかなと思います」と好結果の要因を分析していた。
そんな魂を込めた作品の公開週の映画ランキングは3位スタートだった。李監督は「まあ、赤字にはならないんじゃないかなと。僕の目標は赤字にしないことだったので、今回は、赤字はギリギリ避けられるかなという淡い期待を抱きつつ、当然、もっと見ていただくには何をどうすればいいんだろうと考えていました」と語る。
しかしふたを開ければ、公開が進むにつれ成績は右肩上がりに。李監督は「『これはヒットするのかも』と思ったのは、週ごとに(成績が)上昇していった時です。本当に今までにないような、普通は落ちていくはずなのにどんどん週ごとに興行成績が上がっていきました。3週目から4週目、さらに4週目から5週目と上がっていく様子を目の当たりにして、何かとてつもない波が起きているということを実感できました」と振り返っていた。
200億円突破という偉業には「200億円というよりも、1,400万人以上の方が観てくださったということが嬉しい。同時に次の作品に向けてプレッシャーも感じます」と正直な胸の内を明かしていた。
「キネマ旬報」は、1919年(大正8年)に創刊され、ベスト・テンの選出は1924年度(大正13年)に始まった。ベスト・テン及び各賞の選考者は、映画を多く見ている者に厳しく限定され、2025年度は映画評論家、ジャーナリストなどのべ141名で行われた。(磯部正和)
第99回キネマ旬報ベスト・テン受賞結果
日本映画監督賞 李相日『国宝』により
日本映画脚本賞 奥寺佐渡子『国宝』により
外国映画監督賞 ポール・トーマス・アンダーソン 『ワン・バトル・アフター・アナザー』により
主演女優賞 シム・ウンギョン『旅と日々』により
主演男優賞 吉沢亮『国宝』ほかにより
助演女優賞 伊東蒼『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』により
助演男優賞 佐藤二朗『爆弾』ほかにより
新人女優賞 鈴木唯『ルノワール』により
新人男優賞 黒崎煌代『見はらし世代』ほかにより
読者選出日本映画監督賞 李相日『国宝』により
読者選出外国映画監督賞 ポール・トーマス・アンダーソン 『ワン・バトル・アフター・アナザー』により
読者賞 秦早穗子 連載『シネマ・エッセイ 記憶の影から』により
日本映画ベスト・テン第1位 『旅と日々』
外国映画ベスト・テン第1位 『ワン・バトル・アフター・アナザー』
文化映画ベスト・テン第1位 『よみがえる声』


