戸田恵梨香、物欲を捨て演技にも変化 「30代は持ち過ぎないことを意識」

人々の心を支配した日本一有名な占い師・細木数子の衝撃の半生を、戸田恵梨香主演で描くNetflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」が間もなく配信開始される。無一文から“銀座の女王”、そして“稀代の占い師”へと上り詰めていく数子の道のりは、驚くようなエピソードの連続。そんな彼女の人生のキーワードとも言えるのが、“欲望”だ。欲しいもののためには手段を選ばず、富や名声、色恋のすべてを手に入れようとする底なしのパワーに、釘付けになる人も多いことだろう。本作で数子に命を吹き込んだ戸田は、「彼女のエネルギーに驚いた」としみじみ。戸田が数子の強欲さについて印象を明かすと共に、俳優としての欲望を語った。
「二兎を追って、二兎を得てやる」というのが細木数子
強烈な決めゼリフで占い師としてテレビ界や出版業界を席巻する一方、霊感商法や裏社会とのつながりなど、黒い噂が囁かれた細木数子の60年にわたる激動の人生を映像化する本作。17歳から66歳までの細木を演じた戸田が、底なしのバイタリティと欲、高慢が招いた孤独を鮮烈に体現している。
数子の半生を演じるにあたって、戸田は「前半は人生を楽しみ、謳歌していることを大事にして。後半は、数子の持つ“欲望”というものを強く意識しました」と吐露。「数子は欲望のままに生きているので、その様子は人前でも隠しきれない。例えばお金を前にした時には、ふつふつと湧き上がる高揚感を表情で体現すると同時に、秘めた内面までも表現したいと思っていました」と、欲望は役づくりの大きな柱にもなっている。
歳を重ねるごとに欲望を加速させていく数子。生のエネルギーにあふれたその姿は、人々を圧倒的に惹きつけていく。戸田は、数子の欲望の持ち方についてどのように感じただろうか。
「大抵の人は、欲望が湧いたとしてもある程度の理性が働いて、“今は我慢しておこう”“これはやめておこう”“今の自分にはそぐわない”とブレーキをかけると思うんです。でもそこで躊躇することなく“二兎を追って、二兎を得てやる”というのが細木さん」と分析しながら、「台本を読んでいても、そのエネルギーに驚きました。細木さんを肯定するわけでもなく、否定するわけでもありませんが、どんどん突き進んでいく彼女の強さには羨ましさすら感じました」
思い出の味は「茶碗蒸しと餃子」
数子の欲望の原点となっているのが、戦後の焼け野原で飢えた幼少期の記憶。生き延びることに必死で、泣きながらミミズまで食べて空腹に耐え続けた悔しさが、「この味を死ぬまで忘れない」とのし上がっていく原動力になっていく。俳優として本作でさらなる高みに到達した戸田にとって、「忘れられない味」はあるだろうか?
「16歳で上京をした」と回顧した戸田は、「自炊をしながら一人で頑張って生活をしていましたが、久しぶりに実家に帰った時に母が作ってくれたのが、茶碗蒸しでした。一口食べて“私、この茶碗蒸しの味が大好きだったんだ”と実感しながら、親に甘えて生きてきた時間を振り返った瞬間がありました。寂しさもあるし、実家が恋しくなってしまって。役者として本当にやっていけるのかという不安を、親にぶつけてしまったんです。父は“いつでも帰ってきていいよ”と言ってくれました」と感謝しきり。続けて「そう言われたことが、逆に“絶対に実家に帰らないぞ”という力になりました。私の俳優としての原点だと思う出来事であり、その時に食べた茶碗蒸しの味は今でも覚えています」と懐かしむように目を細める。
さらに“ファンと自分を繋ぐ味”とも言えるのが、「餃子」だとにっこり。2010年からスタートした「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」シリーズで、戸田は餃子を愛する捜査官の当麻紗綾を演じ、多くのファンを魅了した。
当麻が餃子を注文する際の「茹で5、焼き5、にんにく増量!」というおなじみのセリフを放ちながら、戸田は「ファンの皆さんにとっても、“戸田恵梨香といえば餃子”なのではないかと思いますが、実際に私の実家でも毎週土曜日の夜は餃子を食べていたくらい、家族で大好きな食べ物だったんです。そんな私が、まさか餃子を大好きな役を演じるとは夢にも思っていませんでした」と楽しそうに語る。同作は俳優としての転機となった作品でもあるといい、「それまでは自分にまとわりついたイメージを打破したいと、思い悩んでいました。でも『SPEC』を通して、自由に表現していいんだということを理解して、役に肉付けしていく作業ってこんなにも楽しいものなんだと感じることができました」と心を込める。
所持品を整理整頓することで心の余裕が生まれる
16歳で単身上京した戸田は、コミカルからシリアスまで幅広い作品に出演。役柄に確かな体温を吹き込む俳優として、37歳の現在まで成長を遂げてきた。これまでの歩みを振り返ると、年齢を重ねるにつれて欲望の持ち方に変化が生まれていると明かす。
「10代の頃は、周りの友だちや年上のお姉さんを目にして“私も大人になりたい”と夢を持つようになり、20代ではもっと幸福を知りたいと思い、物欲が強くなった。そして20代後半には、途端にその物欲がなくなって。同じものを10年以上着ることが当たり前になり、30歳でいろいろなものを一気に整理整頓しました」と辿りながら、「ものを持つということが、時に煩わしさを感じるものなんだと知って。物理的にあらゆるものを捨てながら、自分の心の荷物も下ろしたような気がしています。心に余白やゆとりができると、新しいものが見えてくるんですね。だからこそ今は、ものを持ちすぎないように心がけています」と30歳を迎えた年に、大きな変化があったと述べる。
それは芝居に向けられた欲とも連動している様子で、「『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2008)で役づくりというものを知り、『SPEC』では肉付けをしながら役柄の個性を広げていく楽しさを知りました。そうやって個性的な役柄をやっていくと、次にはすべてを削ぎ落として、力の抜けた、リアリティのある芝居を身につけたいと思うようになりました」という戸田。
大きな変化があった30歳の年には、ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」(2018)で若年性アルツハイマー病に侵された女性を熱演し、相手役を務めたムロツヨシと共に美しいラブストーリーを紡いだ。「『大恋愛』、そしてその翌年に出演した『スカーレット』では、あらゆるものを削ぎ落とし、自分の中で究極のナチュラルな表現を追求していました。でもドラマである以上、あくまでフィクションの中のリアリティであることが重要です。そのバランスをずっと模索していた時期でした」と思考を繰り返しながら、芝居に挑んでいる。
「地獄に堕ちるわよ」では、極めて波乱万丈の人生を駆け抜けた女性の17歳から66歳までを演じるという、野心的な試みに身を投じた。半年間の濃厚な撮影期間を経て、戸田は「もう一つの人生を過ごしたような気がしている」と充実感もたっぷり。
「削ぎ落としたら削ぎ落としたで、その先にはまた次の肉付けをする土台を作っていかなければいけないと改めて気づけた作品でもあります。これまでやってこなかった芝居の世界観に飛び込む機会をいただき、これはまた成長するチャンスだなと。この経験を糧に、さらにお芝居の勉強をしていきたいと思っています」と尽きることのない芝居欲と情熱をにじませる。俳優・戸田恵梨香の今ーー。その凄みを目撃する意味でも、本作は必見だ。(取材・文:成田おり枝)
Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」は4月27日より世界独占配信


