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是枝裕和監督が「星の王子さま」を映画のモチーフにした理由

映画『箱の中の羊』より音々(綾瀬はるか)がヒューマノイド・翔(桑木里夢)に「星の王子さま」を読み聞かせる
映画『箱の中の羊』より音々(綾瀬はるか)がヒューマノイド・翔(桑木里夢)に「星の王子さま」を読み聞かせる - (C) 2026「箱の中の羊」製作委員会

 是枝裕和監督の3年ぶりの新作映画『箱の中の羊』(公開中)は、亡き息子と同じ姿をしたヒューマノイドを迎え入れた夫婦の物語。タイトルはアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」に由来するもので、作品自体も同作をモチーフの一つとしている。なぜ「星の王子さま」に注目したのか、またタイトルの理由を是枝監督が語った。

【画像】『箱の中の羊』場面写真

 是枝監督が、ソン・ガンホ主演の映画『ベイビー・ブローカー』以来4年ぶりにオリジナル脚本を手掛けた本作。AIが人々の生活に根付いた少し先の未来を舞台に、2年前に7歳の息子・翔(かける/桑木里夢※「桑」の木の上は十と草冠が正式))を亡くした建築家の音々(おとね/綾瀬はるか)と工務店の二代目社長を務める健介(大悟)の甲本夫婦が、亡き息子と同じ姿・声を持つヒューマノイドを迎え、止まっていた家族の時間を進めようとするさまを描く。本作は第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、是枝監督にとって同部門8度目の選出となった。

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 作品が生まれたきっかけの一つは、是枝監督が死者をAIとして蘇らせるビジネスが中国で人気だという記事を目にしたことだった。劇中には、音々がヒューマノイドの翔に「星の王子さま」を読み聞かせる場面があるほか、かわいらしいスノードームが登場したりもする。是枝監督がこの小説を初めて読んだのは10代後半だったというが、どんなところに魅力を感じたのか?

 「よくわからないところ…でしょうか。でもおそらくこれは、わかるわからないの話ではないんだと思う。ストーリーラインを要約するとか、テーマをどう考えるかみたいなことは多様にありますよね。だからこれだけ読み継がれているんだと思う。作品自体が“箱の中の羊”っていう感じ。何を読み取るかは、読む側の問題で」

 “箱の中の羊”は、「星の王子さま」でパイロットが王子さまのために描く絵のこと。王子さまに「ヒツジの絵を描いて」とねだられたパイロットはヒツジの絵を描くも、いくら描いても王子さまは納得しない。やがてパイロットはやけになっていくつかの穴が開いた木箱を描き“この中にヒツジがいる”と告げたところ、王子さまは大喜びする。この“箱の中の羊”は小説の中で“大切なことは目に見えない”という重要なメッセージを象徴するものとされているが、映画にもこのメッセージが取り入れられている。

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 「脚本を書くまではあえて小説を読み直さず、記憶のみでやってみようと思いました。僕の頭の中にあったのは“大切なものは目に見えない”ということ。最近、インビジブル(目に見えない)というのが自分の作品にとって大きな要素だと思っていて。だから目に見えないものを巡る話に惹かれるのはなんとなくわかっていた。AIの中で何が起きているのかは目に見えないし、人間には究極のところわからないなと。逆に、AIからしても人間の中で起きていることって多分全部は理解できないのではないか。それって、大人が子供の中で何が起きているのかがわからないのと同じかもしれないと思ったんです」

 「箱の中にいたのはママだったんだ。翔かと思ったのに」という音々のセリフなど、劇中「星の王子さま」を思わせる描写が多々あり、小説と映画のリンクについて考察するのも一興だ。(取材・文:編集部 石井百合子)

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