「風、薫る」“吾郎”甲斐翔真、上坂樹里と阿吽の呼吸 夫婦役でたどり着いた境地

連続テレビ小説「風、薫る」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)で、主人公の一人である大家直美(上坂樹里)の夫・小川吾郎を演じる甲斐翔真が、直美に惹かれた吾郎の心境などを分析しつつ、終盤へと向かう物語の見どころを語った。
連続テレビ小説第114作となる「風、薫る」は、まだ女性の職業が確立されていなかった明治期に、考え方もやり方も違う二人のトレインドナース(正規に訓練された看護師)をモチーフに描いたバディドラマ。看護婦養成所を卒業した一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美が、患者や医師たちとの向き合い方に悩み、ぶつかり、成長していく姿を描く。
陸軍二等軍曹の小川吾郎は、帝都医大病院に入院していた友人の見舞いに訪れた先で、看護婦として働く直美と運命的な出会いを果たし、惹かれていく。第100話では、吾郎と直美が結婚し、二人は晴れて夫婦になった。
直美と結ばれた吾郎について、甲斐は「あそこまで真っ直ぐに人と向き合える人は、今も昔も珍しいのでは」と分析する。「当時は日本が変わり始めた時代。まだ男女の認識、日本と海外の認識が全く違った時代。その中で人をあそこまで正面から見られる人はきっと珍しかった。人としてとても美しい方だと思います」
直美に惹かれた吾郎の胸中についても「人としてかっこいいと感じる部分がありました」と明かし、「自分の信念をしっかりと持った直美に会った時に、吾郎の中で何か心を動かされるものがあったはず。そのまま、直美の人としての魅力に惚れていったのだと思います」と語った。
現代人と比較して少し特異な一面を持った吾郎を演じるにあたり、時代背景だけでなく、吾郎が所属している近衛師団などについて調べたといい、「人であることを忘れないようにした」とキャラクターの魅力を大切に演じる結論に達したと述べる。「想像でしかない人ではあるけれど、台本や人との関係を見た時に、そこまで明治時代の人間という枠組みに吾郎自身を落とし込む必要はないと思いました」と自身なりに役へのアプローチを見出したという。
さらに甲斐は、演じる中で「自分も吾郎のような人間でありたい」と考えるようになったとも振り返り、「今の時代、人間と正面から向き合うのがとても困難な時代。でも、人と向き合うことはとても大事ですし、僕にも吾郎と似ている部分が少しあると思いました」と役への共感も口にする。
吾郎の妻・直美役の上坂については「初めてお会いした時、(ドラマの中で夫婦になる)素敵な方だと思いました」と第一印象を紹介。「すごく可憐で華のある方。共演してみると、芯の通った人という印象がありました」と述べ、「夫婦の間でどんな会話をすればいいのか、最初はわかりませんでした。控室では二人で他愛もない会話ばかりしていたんです。ドラマが佳境に突入した今、重いシーンを撮ることが増え、あの会話が生きていると感じ始めました。今の濃厚な瞬間を撮る上で、あの時間はかけがえのないものでした」と回顧する。
その上で「上坂さんには役づくりの面でかなり助けられた」とも明かし、「直美を演じるために生まれたような、とても説得力のある人。お芝居を続けていくと、自然と阿吽の呼吸が生まれるようになりました。それは、まさに役が二人を連れていってくれた境地だと思いました」と分析した。
さらに「お互いなんとなく性格、人との間合いが似ている」とも振り返る甲斐は、吾郎として生きる上で、“朝ドラ”の撮影スタイルにも助けられたと語る。
「自分も上坂さんもすごく話しかけるタイプでもないし、かといって人見知りをしすぎるタイプでもない。それぞれの性格の中で自然と役がシンクロしていき、今に至ると思います。ちょっとしたことが、だんだん夫婦っぽくなっていく感覚が撮影中、自然と出来上がっていきました。朝ドラはリハーサルを一回やって、撮影まで少し時間があるのですが、役を自分に刷り込む期間があるという意味で、より良い方向に繋がっていったと思います」
物語もいよいよ佳境に突入した。これからの吾郎について、甲斐は「世にも珍しいほどまっすぐな人なので、時代とか文化とか国とか、職業とか、育ちとか、全てを除いたとしても美しい人だと台本を読んで感じています。現代の人にとっても吾郎はきっと輝いて見える人間。明治時代と今では『尊敬』という概念も変わってきていて、敬うことはできても、尊ぶことが困難になっていると思うんです。吾郎はその『尊ぶ』ことができる人物。吾郎を通じて、現代の僕らに『尊ぶ』ことの尊さが伝わればいいなと思っています」とアピールしていた。(取材・文:名鹿祥史)



