小栗旬、炎に囲まれた「本能寺の変」撮影振り返る 自身提案のセリフも

第27回「本能寺の変」より小栗旬演じる信長
第27回「本能寺の変」より小栗旬演じる信長 - (C)NHK

 日本史における最大のミステリーであり、織田信長の壮絶な最期として語り継がれる「本能寺の変」。仲野太賀主演の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合・毎週日曜午後8:00ほかで放送中) において、小栗旬が息を吹き込んだ信長はいかにしてその命を散らしたのか。本物の炎に囲まれたという撮影現場の裏側から、自ら提案したという信長の言葉の真意まで、孤高の覇王を生き抜いた小栗が熱い思いを語った(※ネタバレあり。第27回の詳細に触れています)。

【画像】「本能寺の変」炎に囲まれた信長(小栗旬)…第27回場面写真

異例!「本能寺の変」をロケで描く

 大河ドラマ「豊臣兄弟!」は、豊臣秀長(小一郎)を主人公に、天下人となった兄・豊臣秀吉を生涯支え続けた弟の足跡を追うストーリー。仲野太賀と池松壮亮が豊臣兄弟を熱演し、戦国という激動の時代を駆け抜ける姿を活写する。本作で彼らの運命を大きく揺るがし、絶対的な影響を与える織田信長を、小栗が圧倒的な存在感で演じている。

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 信長の最期を描く一大クライマックス。今回、そのシーンはロケで行われ、本物の火が使用された。最新の技術が発達した現代の映像制作においても、本物の炎がもたらす熱気と緊迫感は別格だったようだ。小栗は「光栄ですね。ロケで本物の火を使えたことで、映像がまったく違うものになりました。本物の火に囲まれるというのはやはり別格です」と語る。

裏切りの連続と、最期に現れた亡霊

 頂点に立つ者の宿命とはいえ、信長の人生はあまりにも多くの裏切りに彩られている。小栗は残された文献や脚本を読み解く中で、修羅として恐れられた男の、意外なほど人間くさい一面を感じ取っていた。

 「資料や文献を読むと、信長は何度も裏切られています。これでは疑心暗鬼になり、人を信じられなくなるのも当然です。そういった状況に追い込まれてしまった人なのだと思います」

 血を分けた弟や、妹の夫、そして信を置いたはずの家臣。幾度となく繰り返される造反の歴史の中で、信長は彼らとの和解の道を完全に閉ざしていたわけではなかった。

 「浅井長政(中島歩)の裏切りですが、今回の信長は長政の心情を慮り(信長が越前・朝倉氏との戦を決意した際)“お前は関わらなくていい、動くな”と気遣うような言い方をしています。何度も裏切った松永久秀(竹中直人)のことも結果的に2回は許している。本当に修羅のような人間だったのか疑問に思いますし、正当な言い分や交渉材料があれば、許すつもりがあったような気がします」

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 だからこそ、打算のない豊臣兄弟の在り方は、信長の心に特別な感情を抱かせるものだった。

 「絶対に裏切らないと思える秀吉の存在は、非常に大きかったはずです。“こいつと兄弟になれたら自分の人生も違ったかもしれない”と思った瞬間もあったでしょう。小一郎にしても、兄を心から案じて助けようとする姿は、信長が手に入れられなかった理想の兄弟関係そのものであり、見せつけられるたびに傷をえぐられる気持ちだったと思います」

信長の亡き弟・信勝(中沢元紀)

 そして迎えた本能寺の夜。自らが手を下し、心に蓋をしてきた過去の幻影たちが、最期を覚悟した覇王の眼前に立ちはだかる。

 「義理であれ、新たな兄弟関係を築けたかもしれない長政が現れ、その後、弟の信勝(中沢元紀)が現れます。死を覚悟した瞬間に、一番のコンプレックスであり清算したかったトラウマが目の前に現れ、自分はこんなにも弱い存在だったのかと感じたのではないでしょうか」

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 しかし、小栗はその幻影の言葉にただ打ちひしがれるだけの信長を良しとはしなかった。「最後に信勝から“我らの一生、ろくなものではござりませんでしたな”と言われますが、そこは監督とも話し合いました。“お前はそう思うかもしれないが、俺には未来を託せる人間がいるから、ここで、余裕で死んでやるよ”という気持ちでラストを迎えました」

自身の提案で加えた「お前じゃない」の真意

要潤演じる明智光秀

 いざという時の判断力と行動力に長けた信長が、なぜ本能寺では脱出できなかったのか。長年抱いていたその疑問に、小栗は役を生きる中で一つの答えを見つけ出していた。

「信長は逃げると決めたら非常に逃げ足が速いイメージがあったので、なぜ本能寺で逃げなかったのかずっと謎でした。想像できる理由の一つは、疲れてしまったのだろうということ。燃え尽き症候群じゃないですが、これ以上逃げ続けた先に何があるのかと、ここが終着点に見えてしまった気がします」

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 そして、反旗を翻した明智光秀(要潤)の幻と対峙する緊迫のシーン。そこで小栗は「お前じゃない」と怒りとも悲しみともつかない切実な感情をぶつける。それは脚本にはなかったセリフだったという。

 「光秀と向き合った時に心から出た言葉です。もし秀吉が目の前にいて“あなたが死なないと次の世は来ない”と言ってくれたら、喜んで席を譲ったはず。それなのに気難しい光秀が来たから許せなかった。“お前じゃない”と」

 見事な散り際を演じることへの執着はなかった。ただ、一人の人間としての生々しい幕引きを求めていた小栗は、これまでの信長像とは異なる潔さでその命を閉じることを選んだ。

 「本能寺の変は、信長を演じる俳優にとって最後の見せ場になりがちです。だからこそ、俳優としてのエゴを見せるのが嫌で、あっさり死んでいきたいと思いました。物語にしっかりと則った上で、残された者たちへメッセージを残して散っていくことができたと感じています」

 確固たる意志を持ったその散り様は、のちの歴史を動かす者たちへの強烈なメッセージとして画面に刻まれるはずだ。本能寺の後のことをファンタジックに描く作品もあるが、小栗は「今回はしっかりと切腹をしているので、100%織田信長はあそこで死んだと思います」と語っていた。(取材・文:磯部正和)

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