映画『仮面ライダーゼッツ』天野浩成、ジークは特撮人生の結晶 「剣」橘朔也役から22年で辿り着いた境地
現在放送中の特撮ドラマ「仮面ライダーゼッツ」(テレビ朝日系・毎週日曜午前9時~)で、物語をかき乱す“懲役1000年の男”ジーク/仮面ライダードォーンを演じている俳優・天野浩成。かつて「仮面ライダー剣(ブレイド)」(2004~2005)で橘朔也/仮面ライダーギャレン役を務めた天野は、20年以上の月日を経て、2度目の仮面ライダーへの変身を果たした。シリーズの集大成を飾る映画『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』にも出演する天野がインタビューに応じ、一癖も二癖もあるキャラクターの役づくり、自身の原点でもある特撮作品への思いを語った。
【動画インタビュー】天野浩成、「剣」橘朔也役から始まった特撮人生を振り返る
ジークはただの敵として終わらせてはいけない

ジークは、かつて極秘防衛機関「CODE」のエージェント、コードナンバー:ワンとして活動していた人物。悪夢を現実のものにしようとする怪人・ナイトメアの力を自ら取り込んだことで、悪夢を自在に操る力を手にした。快楽犯と化したジークは組織を裏切り、司令官ゼロも警戒する危険人物となった。
仮面ライダーシリーズへのメイン出演は、速水公平/リブラ・ゾディアーツを演じた「仮面ライダーフォーゼ」(2011~2012)以来14年ぶり。視聴者の中には「仮面ライダー剣(ブレイド)」時代から応援している人も多く、天野も「当時から観ていましたという方に今でも応援していただけたり、『今は子どもと一緒に観ています』と言われることもあります。親御さんとお子さんの2世代に仮面ライダーとして認識していただけているのは、本当にすごいことを成し遂げている気がして、ありがたい気持ちでいっぱいです」と感慨深げに語る。
「仮面ライダーフォーゼ」の速水公平役、「王様戦隊キングオージャー」のグローディ・ロイコディウム役など、近年の東映特撮では悪役を担当していた天野。現在演じているジークも主人公・万津莫の敵として最初は登場したが、「仮面ライダー」を名乗るヒーローであることが大きく異なっている。
「悪役であれば『いかに嫌われるか』を突き詰めていけばいいのですが、僕たちにとって“仮面ライダー”や“変身”という言葉は、20年以上経った今でもすごく重みがあって、大事なことなんです。ですから、ジークはただの敵として終わらせてはいけないと思い、毎週いただく台本の中で、自分なりにキャラクターのバックボーンを繋いでいくように考えていました」
「変身」で表現するジークの感情
キャラクター造形については、ジークの初登場回を演出した杉原輝昭監督と二人三脚で構築していったという。「キャラクターの表情についても、速水公平やグローディのような敵役とは違う表情を出さなきゃいけないと思いました。コードナンバー:ワンの回想シーンから始まって、いろいろなパターンを試していくうちに、杉原監督と『それは違う』『こっちの方がいいと思う』と話し合いながらジークの原型ができあがっていきました」
杉原監督は、天野が出演した「仮面ライダー剣(ブレイド)」に助監督として参加していた。東映特撮の現場で長年積み上げてきた信頼関係も、ジークの役づくりに良い影響を与えている。「ジークの狂気を感じる表情などは、杉原監督が『全力でやっちゃっていいよ』と言ってくださいました。僕から『ここまでやって本当に大丈夫ですか?』と確認するくらいで(笑)。そこは長年積み上げてきた信頼関係を信じて、思い切り演じています」
仮面ライダーとして重要な変身シーンでは、「変身」という一言で、その時々のジークの感情を表現することに挑戦したという。「若い頃は、勢いよく『変身!』と叫んでいましたが、今回は少しニヤッと笑って言ってみたり、怒っている時はイライラしながら言ってみたり。一つのワードでもジークの本当の感情を表せたらいいなと思って演じていました」
また、仮面ライダードォーンに変身するプロセスでも細かな違いを表現してみせた。「他のことに集中している時は、ノールックでカプセム(※変身アイテム)を入れたり、相手に対して余裕がある時は、あえて手元を見ながら変身したりと、変身シークエンスもその時の感情によって変えています。昔は決まった一つの型で変身していましたが、今は変身の瞬間すらも感情の引き出しで変えるように演じています」
「仮面ライダーゼッツ」の集大成となる映画でも、ジークが物語をかき乱す役割を担うかと思いきや、天野は「要所要所で登場して、いかにもキーマンっぽい雰囲気を醸し出していますが……実は大したことを言っていません(笑)」と意外な発言。「それでも、ジークの活躍はしっかり大画面に映っています! 細かい表情まで観ていただけたら、こんなに嬉しいことはありません」とアピールした。
僕以外の人を驚かせたい、裏切りたい
天野といえば、「仮面ライダー剣(ブレイド)」第1話で主人公から言われたセリフ「橘さん、本当に裏切ったんですか?」が今もファンの間で語り草となっており、橘朔也=“裏切り”というイメージが定着している。30年近く俳優活動を続ける天野は、良い意味で視聴者や製作陣の期待を“裏切る”演技をする上で、意識していることはあるのだろうか。
「撮影現場にいる監督をはじめ、僕以外の人を驚かせたい、裏切りたいと毎回思って臨んでいます。みんな同じ台本を読んでいるので、各々が『このシーンではこんな感じだろう』となんとなくイメージを持っていると思うんです。そこに、『その切り口で来るんだ!』と思っていただけるお芝居を毎回提示していきたい。それを考える時間がすごく楽しいです」
「逆に、監督から全然考えつかなかったようなことを提案されると、『やっぱりすごい』と思いますし、お互いの発想の出し合いが本当に楽しいんです。その結果として、撮影現場で生まれた仕掛けが、視聴者のみなさんにとっての『いい意味での裏切りや驚き』につながっていればいいなと思っています」
「仮面ライダー剣(ブレイド)」がなかったら、今の自分は存在していない
「仮面ライダーゼッツ」で演じたジークでは、役者として新たな発見が多かったという。「自分はこんな表情やセリフ回しができるんだと気づかされて、驚いています。自分の中にジークというフィルターを通すことで、日々の生活では気づかない新しい一面に出会えたので、改めて嬉しく思います」
「仮面ライダー剣(ブレイド)」から20年以上、特撮作品に携わってきた天野。自身にとって仮面ライダーは、一言では表現できないほど大きな存在となっていた。
「人生の中でのターニングポイントであり、宝物で、今の自分が形成されているベースそのものです。20年以上経った今、改めて自分が当時関わった作品の大きさや影響力に気づかされています。『仮面ライダー剣(ブレイド)』がなかったら、今の自分は存在していない。『仮面ライダーフォーゼ』や『王様戦隊キングオージャー』がなかったら、今ジークを演じることもなかった。今まで演じてきた全てのキャラクターが帰結した先が、ジークという役なんだなと感じています」(取材・文:編集部・倉本拓弥、写真:高野広美)
映画『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』は7月24日(金)全国公開(映画『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ 太陽が泣いた日』と2本立て上映)


