『キングダム』山田裕貴、活躍続くも冷静「僕自身は何も変わっていない」

山田裕貴
山田裕貴 - 写真:高野広美

 原泰久の人気漫画を実写映画化したシリーズの第5弾『キングダム 魂の決戦』(上映中)で、秦(しん)国と戦う趙国の将軍・万極を演じた山田裕貴が、その役作りや山崎賢人(※「崎」は「たつさき」)演じる主人公・信との激闘シーンに込めた想いを明かした。

【画像】山田裕貴の目力に魅せられる…撮りおろし<8枚>

 七つの大国が覇権を争う紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く主人公・信(山崎)と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政(吉沢亮/※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記)を描く本シリーズ。今回は趙・魏・楚・燕・韓・斉という秦以外の六国が手を組んだ“合従軍”が秦国へ侵攻。秦軍20万と合従軍50万が、秦の国門・函谷関(かんこくかん)で戦うことになり、趙の最強の将軍の一人である万極の軍勢は、信の率いる飛信隊と戦場で激突する。

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 趙国は、かつての“長平の戦い”で敗れた際に40万人の趙の投降兵を生き埋めにした秦国に凄まじい恨みを持っており、万極は当時の数少ない生き残りの一人。その詳しい背景が明かされる本作では、信と“魂の決戦”を繰り広げる大きな見せ場がある万極だが、登場したのはシリーズ第3作『運命の炎』から。シリーズ2~4作は約1年がけで一気に撮影されており、山田のキャスティング当時は“合従軍編”の製作は決定していなかったはず。山田はどんな思いで、出演を決めたのか?

 「もともと原作、映画のファンで、万極は好きなキャラクターでしたから、原作漫画を読んで感じた万極の思いを純粋に表現したいと思いました。『キングダム』の世界に入れること自体、楽しみで嬉しかったです。万極と信が戦う合従軍編でのエピソードは、原作でも大事ですし、僕も好きだったけど、ただ敵を倒すという話ではないので、実写化は難しいだろうなと。それにたくさんのすごいキャストの方々がいて、いろいろなキャラクターも登場する中、僕の演じる万極の話を大きく扱うことはないだろうと思っていました」

『キングダム 魂の決戦』より山田演じる万極 (C) 原泰久/集英社 (C) 2026映画「キングダム」製作委員会

 白髪でその隙間から覗く鋭い眼光が特徴的な万極は、外見だけでなく内面からも異様さを漂わせており、実写化の難しいキャラクターだったと思うが、どのようにアプローチしたのか。

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 「原作では、例えば万極の背後に無数の怨霊のようなものが描かれたりしていましたが、漫画と同じ表現はできないものもある中、万極の異物感や異質さを表現するにはどうしたらいいだろうかと考えました。秦軍が趙の兵を大虐殺した長平の戦いから生き延びてきた万極は、怨念の権化みたいになって人間関係を遮断し、残虐なことをしても言葉を尽くそうとしてこなかったのではないかと。そんな人が喋ると、どういう声になるんだろうと考えました。ただ、声を変えたり特徴的にしすぎると、いかにも演じている感じの芝居に見えてしまうかもしれないので、ものすごくチャレンジングでしたが、万極のキャラクターを大切に演じたいと思っていました」

 原作の万極は狂気も孕んだキャラクターだが、山田は万極を狂人としては演じていないという。

 「原作では死体の山の上に裸で座っていたりして、狂気を表現する場面もありますが、映画にそんなシーンはない。生き埋めにされるってどんな感覚だろうと想像しましたし、目の前で家族も生き埋めにされているわけですから、それは恨むだろうと、共感も肯定もしてあげたくなる。もちろん擁護できないこともやっていますが、当時の世の中で復讐心や恨みを持つことは、狂気ではなく正気だったろうと思うんです」

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信(山崎賢人)VS万極戦のワンシーン (C) 原泰久/集英社 (C) 2026映画「キングダム」製作委員会

 信との“魂の決戦”でも、万極ならではの戦いを意識したという。

 「信も万極も戦で家族を亡くしているけど、長平の戦いの当事者の万極は、その悲しみも苦しみも恨みも強い。恨みや復讐の連鎖があるから、戦は終わらないんだろうし、それは『キングダム』の世界だけの話ではない。ずっと恨み続けるのか、自分たちの世代までで止めるのか。信は悲しみも乗り越えて前を向ける人だけど、万極はずっと恨み呪い続けたまま怨念として生きる人。そこにどちらが正しいかなんてないと思う。結果として人にぶつけて発散しようとするのか、人にぶつけず自分を見つめて自分自身で立ち上がれるのかは、その人自身の問題でもある。それは自分自身が強いか弱いかとも言えるけど、その弱さを“お前は弱い”と非難するのは、僕は違うと思う。信と万極の戦いは、そんな思いのぶつかり合いが感じられるものにしたかったので、綺麗なアクションを見せる戦いではなく、心の底から出る叫びみたいな負の感情の全てをぶつけて、本気で切り合うことを意識しました」

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 その信と万極の激闘は入念に時間をかけて撮影され、信役の山崎とも親交を深めたそうだ。

 「賢人とは、4日間にわたりバッチバチに戦う撮影中、“今日どうする?”“マッサージ受けてから飯食おう”と二人で集まって、“いつお仕事始めたの?”みたいなところからじっくり話しました。いろんな意味でいろいろぶつけ合って本音で話し合えたので、その撮影期間はすごく楽しかったです」

 昨年は大ヒットした『爆弾』など3本の主演映画が公開され、今年も主演ドラマ「ちるらん 新撰組鎮魂歌」や日曜劇場「GIFT」が放送されるなど、多忙を極めている。充実した活動が続く自身の現状をどう捉えているのか?

 「ずっと同じ思いや意気込みでやっているだけで、僕自身は何も変わっていないんです。今でもエキストラからやってきた時の感覚は残っていて、“この人と一緒にできるなんて、すげえ”“俺、『キングダム』に出られてるんだ!”と思ったりする。冷静に考えてこういうところまでは来れたのかなと考えることがあったとしても、そんなのはすぐに終わる。だから自分の今の立ち位置を気にするよりも、自分がどんな表現ができるか、感情というものをどれだけ細かく分析して細分化できるか、表現方法の引き出しや感性をどう磨いたり持てるか、そういうことしか考えていないです」

 そう語る山田からは、自身の現状を冷静に俯瞰して見ていることが窺え、今後も地に足のついたさらなる活躍が期待できそうだ。(取材・文:天本伸一郎)

ヘアメイク:猪股真衣子/スタイリスト:森田晃嘉

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