山崎賢人の戦友的存在「競う同世代がいるから頑張れる」

数々の大作で主演を務め、着実にキャリアを重ねてきた山崎賢人(※崎=たつさき)。彼が過酷な撮影現場で走り続けられる原動力は、同世代の役者たちの存在にあるという。互いに刺激を送り合い、時には背中を預ける戦友のような仲間たちがいるからこそ、自身を高め続けられる──。映画『キングダム 魂の決戦』(上映中)でもそのことを強く実感したという。そんな山崎が作品への思いや、切磋琢磨する同世代への信頼、そして自身が演じる信の成長、進化し続けるアクションシーンについて語った。
積み重ねてきたからこそ到達できた壮大な戦場
本作は、中国の春秋戦国時代を舞台にした原泰久のコミックに基づき、天下の大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信(山崎)と、中華統一を目指す秦(しん)国の若き王・エイ政(※エイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記/吉沢亮)を壮大なスケールで描く映画シリーズの第5弾。趙軍の総大将・李牧(小栗旬)が興した、秦以外の全ての国(楚・趙・魏・韓・燕・斉)から成る合従軍が手を結び、秦に侵攻する。
原作ファンからも圧倒的な人気を誇る「合従軍編」の映像化。驚異的なスケールを持つこの戦いを前にして、山崎の心に湧き上がったのは、恐怖ではなく心地よい高揚感だった。
「初めて『キングダム』の映像化に臨むのだったら『合従軍編』なんて描けるわけない……とみなさん思われるかもしれませんが、いまの『キングダム』のチームだったら絶対できるだろうなという自信はありました。それは、これまで積み重ねてきた経験があるから。もちろん自分も相当頑張らないといけないという覚悟はありましたが、不安よりもワクワクの方が強かったです」
今作での信は、千人の兵を率いる立場へと進化を遂げている。これまでのように、自分の感情だけで動くのではない。山崎は、そんな信の大局を見据える冷静さを宿した姿をイメージしたという。
「信はこの映画では、百人将から千人将に出世しています。甲冑も着て、千人をまとめる隊長になって、乗り越えてきた厚みがあるような雰囲気になればいいなというのは意識しました。自分の気持ちだけで突進していくんじゃなくて、戦場全体を見渡して、自分のやるべき行動をちゃんと理解して、自分たちの隊はこうやって動くんだというのを瞬時に冷静に判断できるようになっているということはしっかり表現したかった」
成長した信だが、一方で山崎は「いざ不利になっているところを打開する時は、今までの信のイメージ。声の荒げ方や、言葉一つ一つのパワーの入れ方みたいなものは、変わらない信を滲ませるようにしました」と一人の人間でありながら、その場その場の状況で、しっかりと信という人間の辻褄が合うように、俯瞰で捉える視点も大切にした。
信の成長は、馬上を駆ける難度の高い戦闘シーンにも反映されている。肉体的な限界を伴う撮影の中で、これまでの経験をすべて剣撃へと乗せようと模索した。
「馬の上でのアクションって、(乗る人の)重心で馬の動きが左右されるので、体勢を崩すのも大変なんです。今回は甲冑を着ている分、体が重くなる。そんな中で『魂の決戦』というタイトルがついているように、一太刀一太刀にちゃんと魂が乗っているような重さを出せるように、馬上での戦い方はたくさん練習しました」
怨念を正面から受け止める、万極との「対話」
アクションシーンのなかでも大きな見どころとなるのが、信の前に立ちはだかる、秦国に凄まじい恨みを抱えた趙国の将・万極。その容赦ない攻撃を受け止める演技は、山崎にとって精神的にも大きな挑戦だった。
「今回は万極という敵にすごく押されるというシーンがありました。万極の攻撃には、呪いみたいな思いも乗っている。万極の攻撃をちゃんと食らうことによって、それをも背負って自分は戦っていくぞという覚悟ができる。真正面からぶつかる信の真っ直ぐさを出したいと思っていました」
万極を演じた山田裕貴とは、単に段取りを合わせるだけでなく、お互いの役者人生を語り合う深い対話を重ねた。その信頼関係が、スクリーンでの激しいぶつかり合いに血を通わせた。
「お互いがどういう人間で、どういう流れで俳優として今ここにいて信や万極をやっているのか、一からいろいろ話しました。熱い話をした後だったので、撮影中もお互いを見つめ合う、理解した上でぶつかり合うみたいな空気感が出せました。そういう芝居のアプローチも功を奏して、自分でもすごく好きなシーンになったなと思います」
過去の絆を胸に同世代の戦友たちと切り拓く未来
前作での王騎将軍(大沢たかお)という憧れの存在との決別、そして未曾有の危機。過酷な運命に立ち向かう信の姿は、偉大な先輩キャストが現場を去った後も、自身の熱量で作品を牽引しなければならないという山崎の強い意志と重なっていた。
「失ったからこそ強くなる人の強さってあるじゃないですか。憧れていた王騎将軍がいなくなってしまったけれど、残してくれたものはちゃんと背負っていて。秦国の大ピンチになっているなか、自分が引っ張っていかなければいけないという信の気持ちと、大沢さんがいないけれど、それでも面白いものを撮らなくてはいけないという自分の気持ちみたいなものは、ちゃんとリンクしていた気はします」
直接顔を合わせる機会は少なくとも、心を通わせる玉座の友・エイ政。演じる吉沢亮と長年にわたって築き上げてきた深い信頼関係も、スクリーン上での静かな説得力へとつながっている。
「(エイ)政について考えるシーンの時は、リアルに今まで積み上げてきた、お亮との思い出があるので、自分の中ですごく腑に落ちます。これだけ一人の人物を長い期間演じられるというのは、贅沢だし、演じることを超える瞬間もたくさんあります」
吉沢をはじめ、過酷な撮影現場を共にくぐり抜けてきた同世代の表現者たち。互いに刺激を送り合い、高みを目指す仲間への信頼こそが、山崎が前を向き続けるための糧となっている。
「お亮は一緒に頑張ってきたから、間違いなく戦友。(蒙恬としてシリーズ初参戦となった)志尊淳くんも同い年で、8年前ぐらいにガッツリ一緒にやっていたので、戦友のような感じもあるし、山田くんも同じです。同世代の人たちがいるから頑張れるみたいなところもあります。周りにいい意味で競ったりするような人たちがいなかったら見えなくなるものもあるじゃないですか。(尾平役の岡山)天音もいるし、(河了貂役の橋本)環奈ちゃんもそうですしね」
これまでいわゆる“大作”と呼ばれる作品で、数多くの経験を積んできた山崎賢人。肉体を鍛え上げ、過酷なアクションシーンも披露してきた。そんななか、山崎は「大事にしているのは、頭と心とのバランス」だという。肉体を酷使してアクションに挑みつつ、頭ではしっかり俯瞰で状況を判断し、そのとき演じる人物がどんな“感情”を宿しているかを見極めている。野生的な爆発力と冷静な俯瞰力を兼ね備えた佇まいで周囲の仲間たちを巻き込みながら、大作の中心として存在する山崎。本作を観ていると、多くの作り手が彼を熱望する理由が垣間見える。(取材・文:磯部正和)
ヘアメイク 永瀬多壱(VANITES) スタイリスト 伊藤省吾(sitor)


