「ガス人間」小栗旬×蒼井優×UTA「間違ってなかった」伝説特撮のリブート 心に響く壮絶ドラマの裏側【ネタバレあり】

往年の東宝特撮映画『ガス人間第1号』(1960)が、令和の時代に「ガス人間」としてNetflixでリブート。主要キャストに小栗旬&蒼井優、本作で俳優デビューを果たす新人UTAがタイトルロールのガス人間役に挑んだ異色作だ。ガス人間を巡る衝撃の物語を追う刑事と記者、そして彼らが待ち受ける衝撃の事実の数々……。圧巻のVFXと人間ドラマが融合し、8か月におよぶ長期撮影を経て完成した本作について、小栗と蒼井とUTAの3人がネタバレありで撮影秘話を明かした。(以下、「ガス人間」最終話までの内容に触れています)(取材・文:トヨタトモヒサ、写真:中村好伸)
【動画・ネタバレあり】小栗旬&蒼井優&UTA、最終話までの裏側を語り尽くす!
深い絆で結ばれた「ガス人間」チーム
ーー既に配信が始まっていますが、作品についてはどのような手応えを感じていますか?
小栗旬(以降、小栗):率直に言って、非常に面白い作品として出来上がったと思います。
蒼井優(以降、蒼井):この作品は撮影だけで8か月かかりました。それを経て、片山慎三監督が責任をもって完成させてくださって、今は「私たちはこういうものを撮っていて、間違ってなかったんだな」という思いを強く抱いています。
UTA:まずは完成した作品のスケールの大きさに圧倒されました。音楽が付けられ、VFXが加わることで、さらにこんなにもすごい作品になっているんだなって。
小栗:自分が演じた岡本賢治は、過去に起きたホワイトセンターの出来事には関わっていないですし、動画配信者の兄妹がメインになる第4話や、第5話の回想シーン辺りは出てないんです。そうした部分を観るのがまた楽しかったですね。
ーー物語は、小栗さん演じる岡本賢治刑事、蒼井さん演じる報道記者・甲野京子が事件を追っていくわけですが、お互い役柄について擦り合わせる機会はありましたか?
小栗:2人で話し合うようなことは特になかったです。第1話では、最初の事件の後、JNTの社屋で会う場面を優ちゃんと一緒に撮影したけど、後はお互い別々に撮り進めていくことが多かったんです。そして、後半になってまた一緒に撮る場面が増えていくんですけど、その頃には賢治も京子も、それぞれにキャラクターが出来上がっていました。なので、そのまま物語に落とし込んでいった感じです。
蒼井:京子は壮絶な過去を抱えていることもあって、心を閉ざして常に力を抜くことがない。自分としてはそういった役柄だと捉えていました。
小栗:賢治がどういう男かと言えば、あまりにも真面目で誠実過ぎるヤツ。さらに同じ刑事だった父親から受け継いだ部分もあり、正義感にも満ち溢れている。ここまで人物像が明快だと、逆に入り難い部分もあったけど、とにかく強い意思を持ち合わせた人物なんです。
蒼井:今振り返ると、京子役は「解放されたい」という気持ちで演じていたところもありました。
小栗:賢治は刑事として、京子は記者としてガス人間を追っているけど、警察の情報だけでは限界があるから、賢治はいつも一歩遅いんですよ。
蒼井:そういうタイミングで描かれているんですよね。
小栗:しかも、京子は自分でどんどん動くからね。そこが賢治からすると、けっこう身勝手に見える。
蒼井:そこに関しては、きっと、幼少期の体験が人格形成に関わってくるんだろうな、と……。
小栗:賢治はかなり振り回されて(笑)。
蒼井:最終回(第8話)を観て「ごめん!」って思いました(笑)。
小栗:本当に間に合いたいときには間に合わない。黒幕だった三浦都知事(演:岡部たかし)は捕まえられたけどね。
ーー今作で俳優デビューを果たしたUTAさんは、タイトルロールを飾るガス人間役ということですが、どのように取り組まれましたか?
UTA:撮影に入る前の準備期間が3~4か月あり、そこで俳優や、役柄のベースを作りあげていく作業がありました。自分がガス人間を芝居としてどう表現できるかは、片山監督ともたくさんお話しましたし、監督が思い描くガス人間のイメージもお聞きしました。特に全裸で石像になっている場面があるので、そのために食事制限をしつつ、体作りに励んだことは忘れられないです。
ーー小栗さんと蒼井さんはUTAさんと共演されてみていかがでしたか?
小栗:実際には共演シーンがほとんどなかったのですが、彼はこの「ガス人間」で初めて俳優を経験するわけで、その1度目の瞬間って、本当にキラキラと輝いて映し出されていて、そのパワーは代えがたいものがありますね。
UTA:小栗さんは、現場での立ち回り方を含めて本当に勉強させていただきました。小栗さんのサービス精神、リーダー的な部分が今回の現場の雰囲気を作り出したのかなと思っています。
蒼井:今回の撮影期間は、私のこれまでの経験でも一番長いくらいなんですけど、UTAくんから考えたら、途方もないくらい長い期間だったと思うんです。でも、常に目を輝かせて現場に来ていて、楽しい気持ちが至るところから滲み出ていて。そんなUTAくんの存在にみんなが救われました。
UTA:小栗さんとは、第1話で「動くな!手を挙げろ」と銃を構えた賢治と対峙するシーンがありました。直接お芝居したのはほぼこれだけで、演出上、目を合わせる場面ではなかったのですが、逆に小栗さんの発する声が心に突き刺さってきて。この賢治との対峙を経て、ガス人間は警察に追われる立場になるわけですし、自分としてはすごく印象に残っています。
蒼井:完成した映像では、これが初芝居とは思えないぐらい完全にガス人間になり切っているし、京子の目線から見たらレンおじさんだし。しかも、あんなに明るく爽やかだったレンおじさんが……。
UTA:周囲の友達からはそこを一番訊かれるんですよね。「どういうストーリーなの?」「ガス人間は悪役なの?」って。
蒼井:ああ~。
UTA:まだ観てない方は、この機会に是非観ていただければと思います(笑)。
迫力あるVFXシーンの意外な撮影秘話
ーーVFXを前提とした撮影も多かったと思いますが、現場はいかがでしたか?
小栗:これはジャンル的に起こり得ることなんですけど、VFXを駆使した作品の裏側は、意外とアナログだったりするんです。ガス人間のビジュアルについては、僕らは想像しながら撮影していたけど、まさかここまで迫力ある映像に仕上がっているとは。改めて現代の映像技術のすごさを思い知らされました。それこそ、現場では丸い球を追いかけたりしてましたから(笑)
蒼井:今、小栗くんが話していた、その丸い球がVFXのガイドなんですけど、現場だとけっこう愉快な感じで(笑)。
小栗:ちょっとシュールだった。
蒼井:ガス人間との目線合わせも、助監督さんが発泡スチロールのマネキンを頭上に乗せて、私たちの前を歩いて、それで芝居をするという。
小栗:なかなか面白い体験でした。
UTA:僕は、グリーンバック撮影も初めての経験でした。メイキングがあれば是非観てもらいたいです。
小栗:現場は意外と手作り感覚でやっていたんですよ。
蒼井:出来上がった映像を観ると本当にすごくて。現場との温度差を感じました。
UTA:第6話で描かれた、レンがガス人間化するシーンも大変でした。特殊メイクをした上で、片山監督から「自分の身体からガスが出ている姿を想像してもらいたい」と言われて、自分なりにイメージを膨らませて演じたつもりですが、実際には有り得ないことじゃないですか。しかも俯瞰で撮っていて、地面に寝転がりながら泥まみれになりながらやっていたんですけど、とにかくカットがかからない……。
小栗&蒼井:(笑)。
UTA:たぶん1分くらいだと思うんですけど、演じる側としてはかなり長く感じて、これが片山監督の演出なんだなって。それを何テイクか重ねて、ようやくOKが出ました。
小栗:自分が大変だったのは、最終回で逆さ吊りになった三浦都知事を助けようとする場面。見た目的にも吊られる岡部たかしさんは、みんなにケアしてもらっていたんだけど、引っ張っているだけの自分のほうはあまりケアしてもらえなくて(笑)。
蒼井:小栗くんは、なんとなく周りから「大丈夫」だと思われていた気がする。自分でどうにかしそう。
小栗:いやいや。内心、「俺もけっこう大変なんだけど?」と思っていたよ(笑)。
蒼井:でも、それがまた緊迫感のある場面になったんじゃないかな? 完成した映像では、本当に辛そうにしている様子が伝わりました。
小栗:しかも、その前に暴力団から拷問を受けて確実に負傷していますからね。よくあれで三浦を支えることができたなと(笑)。その辺りの賢治の奮闘ぶりも楽しんで観てもらえれば嬉しいです。
出演者にとって忘れられないとても大切な作品
ーー本作は回を追う毎に次々と衝撃の事実が明かされていきます。演じ手として、物語の展開はどのように受け止めていましたか?
小栗:受け止めようがなかったです。もちろん、台本は読んでいるけど、8か月の撮影期間中、全8話を行ったり来たりしながら撮影していた部分もありましたから。たとえば、最終回で拷問を受けるシーンはけっこう早い段階で撮影していました。
蒼井:京子にはホワイトセンターに入れられていた過去があり、さらにはガス人間となるレンおじさんとも幼少期に接点があって。そこは観ていただいた方は驚かれたと思うんですけど、演じる側としては、その過程をウソがないようにしなくちゃいけない。そこがすごく難しいなと思いました。そういう面でも、今まで経験したことがない役づくりでした。
小栗:それぞれの役柄が背負うバックボーンについては、やっぱり京子が一番複雑だったよね。そこが深く描かれていて、今の京子とも確実に繋がっている。逆に賢治はそこが希薄で、演じる上では今を生きることに重点を置いていました。
蒼井:過去の京子とレンおじさんのパートを見せてもらったら、自分が演じていた現在の京子から見たガス人間との差があまりにも大きくて。でも、UTAくんが演じたレンおじさんのキャラクターがいることで、京子が抱える傷の大きさは、自分でも想像しなくてもダイレクトに伝わってきました。ですから、そこはUTAくんのお芝居に助けられました。
小栗:レンおじさんは、過去はあるけど、記憶すら失っている。
UTA:普段のガス人間は無機質な石像なんですけど、それがなぜ動くかと言えば、やっぱり、レンおじさんとして京子を守りたい気持ちが強いからなんです。たとえ記憶を失っていても、それが行動原理だと考えました。第7話で京子がレンに向かって泣きながら「なんか言ってよ、おじさん」と訴えかけるシーンがあるんですけど、蒼井さんが発するセリフが、幼少期の京子の声と全く同じに聞こえてきたんです。これこそが長年やってこられたプロフェッショナルな芝居の力なんだなって。僕のほうこそ蒼井さんから力を頂きました。
小栗:先ほど話したように、全て順番に撮っていたわけではないので、計算を立てて演じるのは、なかなか難しい部分もあったんですけど、そこは片山監督に全幅の信頼を置いていました。もしかしたら、その時々で監督にも想像し切れていない局面があったかもしれません。でも、僕らの前ではそういった面は一切表に出さなかったですから。常に全てを分かっている前提でいてくださったので、そこはとても心強かったです。
ーー最後に、改めて作品についての思いをお聞かせください。また配信作品で繰り返し観ることができるので、細かい注目ポイントがあれば併せてうかがえればと思います。
蒼井:8か月間、私たち3人と同じスタッフと共に一緒に撮影をしてきて、「私たちの『ガス人間』」といった連帯感が生まれました。だから、こうして作品が出来上がったのは嬉しい反面、ちょっとした寂しさもあります。そういう意味でも、忘れられない、とても大切な作品になりました。
小栗:細かい部分で言えば、謎の「パーフィニー」という言葉(笑)。
蒼井&UTA:(笑)。
小栗:これは松浦祐也さん(※暴力団組長大友の息子・リキ役)から出た言葉だと思うけど、片山監督が拷問シーンで「何か拷問の名前を付けてよ」と。それで「パーフィニー」に決まったんだけど、これが撮影現場で非常に流行りましてですね。気づいたらTシャツまで作られていました(笑)。たぶん、言葉の意味を分かっている人なんて誰もいないし、そこは見返した際に「これはいったい何だろう?」と引っかかりになれば、また面白いと思います。
UTA:今回、初めてのお芝居で、撮影の日々は「自分がどう映っているのか?」「ちゃんと芝居ができているんだろうか?」とたくさん不安な気持ちがありました。でも、先ほど蒼井さんがおっしゃっていたように、ものすごく深い絆で結ばれたチームなんです。本当に皆さんプライドを持って臨まれていて、そのおかげで最高の作品になったと思っています。
小栗:先ほどUTAくんが話していましたが、京子がレンおじさんの石像に向かって涙するのが、好きな場面なんです。京子が急に子どもらしくなるところが観ていて堪らない。「ガス人間」は、VFXやホラー描写ももちろん見どころだけど、僕としては、そういう心の機微にすごく響くものを感じます。
Netflixシリーズ「ガス人間」は世界独占配信中(全8話・一挙配信)


