「ガス人間」原作には登場しない配信者兄妹 広瀬すず&林遣都が求めた人間らしさ【インタビュー】

東宝とNetflixが初タッグを組み、伝説の特撮映画『ガス人間第1号』(1960)をリブートした全8話のオリジナルシリーズ「ガス人間」。劇場型の連続予告殺人を仕掛けるガス人間の真相に迫る動画配信者の兄妹を演じた広瀬すず(藤川華歩役)と林遣都(藤川富士太役)がインタビューに応じ、かつてないスケールで制作された本作の裏側、リブート版で誕生した新たなキャラクターとの向き合い方について語った。
日本作品では味わえない没入感
Q:伝説の東宝特撮『ガス人間第1号』リブート企画のオファーを受けた時の心境をお聞かせください。
林遣都(以降、林):ヨン・サンホさんと片山慎三監督とのタッグということで、すごくスケールの大きな作品になるだろうなと感じました。企画書に記載された出演者の方々の名前を見ても、日本が誇る役者さんたちばかりで、「これはぜひ参加させていただきたい」と即決でした。
実は、数年前にヨン・サンホさんが手がけた「地獄が呼んでいる」(Netflixで独占配信中)にすごくハマったんです。ヨンさんが執筆した今作の脚本を読んだ時に「こういう世界観で、この規模感の作品を撮れるんだ」という高揚感に包まれました。
広瀬すず(以降、広瀬):スケールの大きさもそうですし、VFXを多く使うような作品にそこまで出演したことがなかったので新鮮でした。作品の不気味さやストーリーのゾクゾク感とのギャップをさまざまな部分で感じて、演じる楽しさがある新しい作品に出会えたので「ぜひやってみたい」と思いました。
Q:ヨン・サンホさんとリュ・ヨンジェさん(「寄生獣 ーザ・グレイー」)が執筆した脚本を初めて読んだ時の感想はいかがでしたか?
林: 架空の登場人物や出来事が多く、「どんな仕上がりになるんだろう」と想像できない部分もありました。撮影が始まってから、片山監督をはじめとする制作チームのみなさんが脚本からイメージを膨らませて、世界観を作り上げていく過程を見て「これは絶対に面白くなる」と期待感が膨らんでいきました。完成版を観た時も、最初から最後まで観客を飽きさせない、没入感のある作品だと改めて感じました。
広瀬:ストーリーが進むにつれて何枚も扉を開けていくというか、登場人物たちが複雑に絡んでくる構成はとても韓国作品らしさを感じました。展開がわかっているのに、完成した映像を観てもゾッとしました。各登場人物の軽やかさの中にしっかりとゾクゾク感があり、日本の作品ではなかなか味わえない、一味違う没入感を感じました。
セットに散りばめられた人物像に関するヒント
Q:お二人が演じた動画配信者は、1960年のオリジナル版では存在しない職業です。富士太と華歩を演じるにあたり、キャラクター造形やアプローチで意識したことはありますか?
林: 動画配信者の方々は、現代を象徴するような職業だと思います。劇中のセリフに「登録者100万人目指して…」といった最近よく聞く言葉が含まれていて、こんなに早くこういう役を演じる機会が来るとは……と感慨深くなりました。動画配信を生業として生きているという説得力は大事にしたいと思い、さまざまな配信者の動画を参考にしながら役をつくっていきました。
自分で考えていた以上に、片山監督やスタッフのみなさんがいろいろなアイデアを盛り込んでくださって、登場人物全員がすごく魅力的でした。セリフの中でも、監督がその場で考えたアドリブだと思う瞬間が、他の方のシーンを見ていてもたくさんありました。
広瀬:私はお兄ちゃん(富士太)に比べて、とても人間っぽくていいと言われていました。配信者は、ある意味とても自由だし、自分の個性や世界観を全て活かしているようなイメージがあります。でも、その中でエンタメを作るって相当な技術が必要な気もしていて。「どうしてこの兄妹のチャンネルは誰も観てくれないんだろう」という理由についてはあまりピンとこない部分もありつつ、自分たちの力で広げていくのは難しいけれど、ちょっとしたことに幸せを感じる、人間らしい兄妹だからこそ、何か作り込むというよりは「とても自由な役」という捉え方で演じていました。
Q:兄妹関係については、片山監督とディスカッションして構築していったのでしょうか?
林:片山監督の不思議なところは、最初の顔合わせでよくある「人物の背景や生い立ちをたくさん話し合って作っていく」という会話がそんなに多くないんです。撮影現場でどんどん「これをやってみよう」と試していく中で、「この人はこういう人間なんだ」と分かっていく。二人の関係についても細かくは話しておらず、撮影のセットに飾られてあるお母さんの遺影を見て「そういうことか」とキャラクターのバックグラウンドを理解していました。
広瀬:撮影セットにヒントとなる情報がすごく入っていました。ベランダみたいな場所に薪(まき)でできた怖い人形が置いてあったり、椅子のカラフルさ、ゴミや食べカスまでとてもリアルに細かく再現されていたんです。
林:「二人がこういう生活をしているんだ」という感覚が、撮影現場に行くことで一気に深まりました。
柘植伊佐夫が手がけたキャラクターデザイン
Q:人物デザイン監修・衣装デザインは、『シン・ゴジラ』『岸辺露伴は動かない』などで知られる柘植伊佐夫さんが担当されました。柘植が手がけた富士太と華歩のビジュアルを最初にご覧になった時の印象はいかがでしたか?
林:長髪というのは全く想像していなかったです。早い段階から、片山監督が全部試して、富士太という役が出来上がっていきました。
広瀬:華歩の身体にあるアザのイメージ資料を何枚か事前にいただいたのですが、顔の半分(アザの特殊メイクを)やると思っていなくて、気がついたら、どんどん大きくなっていったんです。衣装合わせの時、最初は服だけを着て、片山監督が「もう少し練ります」とおっしゃって、2回目の衣装合わせでは「兄妹そろってロング(長髪)でお願いします」と言われて。金髪に顔半分がアザになって、「あれ?」と思いました(笑)。そういったトリッキーなアイデアが、監督をはじめスタッフのみなさんも本当に豊かだなと思いました。
Q:アザの特殊メイクは、どれくらい時間がかかったんですか?
広瀬:だいたい1時間半くらいでした。アザの型を作っていただいたので、通常のメイク時間とそんなに変わらなかったです。
Q:林さんは華歩のビジュアルを初めてご覧になった時、どう思われましたか?
林:インパクトがありましたね。最初に配信部屋で一緒にお芝居をした時に、海外映画に登場しそうな女性だなと思いました。すずちゃんが演じているからこそだと思うのですが、アザの痛々しさより、ビジュアルの仕上がりを観て「美しいな」と感じました。
大学教授を皮切りに、次々と予告殺人を仕掛けるガス人間(UTA)。藤川兄妹は、捜査一課の刑事・岡本賢治(小栗旬)や報道記者・甲野京子(蒼井優)らとは別の角度から、ガス人間の目的や特異能力の秘密に迫っていく。動画配信というツールを駆使して真相解明に奔走する二人はやがて、国家を揺るがす恐ろしい真実に辿り着く。インタビュー後編では、藤川兄妹の運命を大きく変えるエピソードの裏側、本作の象徴となるガス人間との対峙について語り合う。(取材・文:編集部・倉本拓弥、写真:中村嘉昭)
Netflixシリーズ「ガス人間」 は独占配信中(全8話一挙配信)


