愛が重すぎて大惨事!世界4億ドル突破ホラー『オブセッション』監督が語る「愛」と「ロマンス」の違い

100万ドル未満の製作費に対して、全世界興行収入4億3,000万ドル(約690億円)を突破する絶大なバズを生んだホラー映画『オブセッション 災愛』(全国公開中)。ひとりの青年の願いから始まる、“愛”の物語を想像を絶する恐怖に変えた26歳の新鋭カリー・バーカー監督が、全米を熱狂させた恐怖の根源について、オンラインの合同インタビューで語った。(数字はBox Office Mojo調べ・1ドル160円計算)
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本作の主人公のベア(マイケル・ジョンストン)は、幼なじみのニッキー(インディ・ナヴァレッテ)との関係を恋愛に発展させたいが、怖くて一歩を踏み出せない内気な青年。そんな彼が何気なく手を出したのが、アクセサリーショップで購入したおまじないアイテムの“ワン・ウィッシュ・ウィロー”(願いの柳)。「ニッキーが僕を誰よりも愛してくれますように」。願いと共にベアが“柳の枝”を折った瞬間、ニッキーは本当に彼を愛するようになるが、その“最愛”は周囲を巻き込む“災愛”となって彼を苦しめる。
タイトルの「OBSESSION 」(オブセッション)とは、物事に対する過度な「執着」や「こだわり」を意味する言葉。本作では、常軌を逸したニッキーの“執着”が、観る者を恐怖のドン底に叩き落とす。
バーカー監督は、本作のアイデアについて「そもそも、何かに執着(オブセッション)するということに、本質的な怖さがあると思うんです。それは、対象に対する、“コントロールできない欲求や渇望”を意味するもの。望むものを手に入れるため、時に“やってはいけないこと”にも手を染めてしまう。アメリカには、そうやって何かに執着している人たちを取り上げたテレビ番組がたくさんあります。奇妙なものを異常にコレクションしたり……本当にいろんな人がいる。その執着が他人に向けられたとき、恐ろしい何かが生まれるんじゃないか。そこが興味深い点でした」ときっかけを明かす。
笑いと恐怖の境界
あまりにストレートすぎるニッキーの異常行動によって、窮地に追い込まれるベア。その姿は、時には笑ってしまうほど滑稽だ。まさに“恐怖と笑いは紙一重”を地でいく本作だが、バーカー監督は「この映画で笑いを狙ったのかどうか、自分でもよくわからないんです。僕がもともとそういう性格だからかも。観客の皆さんが劇場でたくさん笑ってくれているのを知った時、実は本当にショックというか驚きました。とにかく不気味で変わった映画にしようとしていましたが、笑いを求めていたわけではなかったので、意外でした」と苦笑。それでも、時に笑いを生む描写は、ホラー映画を愛する監督の信念から生まれたものだったという。
「僕はとにかくたくさんホラー映画を観ます。時々、登場人物がとにかく深刻な顔ばかりしている映画があると、イライラするんです。実際にあんな怖い目にあったら、引きつった笑いを浮かべるか、相手に“何でそんなことしてんだよ?”って聞いたりするだろって。でも、普通のホラー映画では、相手の目が真っ黒になっていても突っ込まずにスルーしたりしてる。僕はそういう描写が気になって仕方がないので、自分の映画ではリアリティをとりました。結果として観客の皆さんは笑ってしまうかもしれませんが、普通の人間の反応として、リアルな視点を大事にしたかったんです」
“見せない”ことで生まれる恐怖
劇中の恐怖を増幅させるのが、ベアを愛するニッキーの姿が、時に真っ黒に塗りつぶされたような影に覆われ、判別できなくなる不気味な演出だ。特別な視覚効果に頼らず、底知れぬ恐怖を効果的に演出した意図について、バーカー監督は次のように明かす。
「例えば、ホラー映画の予告編に悪魔的な存在が出てきて『うわ、すごく怖そうだな』と思って実際に観に行ったとして、最初の20分くらいでそいつが出てくると、『あ、こいつずっと出てくるんだ』みたいな感じでちょっとがっかりするんです(笑)。そうするともう、だいぶ怖くないですよね」
「この映画では、ごく普通の女の子を恐ろしい存在に変貌させなければならなかった。そのために、“モンスター”の姿を見せすぎず、ミステリアスな状態に保ちたかったんです。ニッキーの怖さを維持するため、あえて彼女を影の中に潜ませておくというアプローチを取りました。そうしないと、観客が彼女を見慣れてしまって怖くなくなってしまいますから。特に『オブセッション 災愛』のような作品では、最後まで怖さを保つことがとにかく大事だったんです」
「愛」と「ロマンス」の境界線
憧れの女性と結ばれたはずのベアが、彼女の変貌によって想像を絶する恐怖を味わう。それは、結ばれた相手が自分の理想と違った時の恋人関係を象徴しているようにも見える。バーカー監督は、「そのメタファーは、『愛』と『ロマンス』の違いという部分に通じると思います。これは映画の冒頭、車の中でニッキー自身が似たようなことを語っているんです」と語る。
「『愛(ラブ)』とは、時間をかけて築き上げるものであり、相手を深く知ることで得られるもの。一方的に思いを寄せるよりもはるかに強い感情が育ち、本当に相手を思いやれるようになる。一方で『ロマンス』は、『今すぐこれがほしい!』といった、衝動的な感情に近いものです。多くの場合、『ロマンス』ばかりを追い求めると、それを手に入れた瞬間、長い目で見ると幸せになれないんじゃないかという僕の思いがあるんです」。
結果として本作は、アメリカで若者を中心に大ヒット。自らも「Z世代(Gen Z)」だというバーカー監督は、同世代を中心とした熱狂について「僕も年齢的には『Z世代(Gen Z)』になります。あと2、3年生まれるのが遅ければ入らなかったくらいですかね。この世代に刺さった理由は明確にはわからないけれど、自分の世代に向けた物語を書く方が得意だという自負はあります。映画の登場人物も、楽器店で働く20代前半の若者たちのグループですよね。だから同世代に共感してもらえる予感はありました」と語りつつ、「でも、まさかここまでとは。信じられないくらいの考察やファンアートが山ほど寄せられていて、これほどの現象になるとは思いもしませんでした」と笑顔を見せた。


