【レビュー】『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』新章にして集大成、『ノー・ウェイ・ホーム』級の衝撃&感動再び

歴代スパイダーマンが夢の共演を果たした映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)から4年。新章の幕開けとなる『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は、ストリートレベルに原点回帰し、“親愛なる隣人”として戦うピーター・パーカーの孤独と成長、そして真のヒーローとしての覚醒をエモーショナルに描いた、まさにシリーズ集大成と言える一作になっている。
前作『ノー・ウェイ・ホーム』の壮絶な戦いの末、自分の存在を人々の記憶から消す決断を下したピーター・パーカー。あれから4年後、世界中から忘れ去られた彼は、手作りのスーツをまとい、孤独な戦いを続けている。高性能AIシステムと会話し、常連のお店に通い、新たな日常を謳歌しているが、かつての恋人MJや親友ネッドの姿をSNSを通じて毎日チェックしている姿からは、彼が抱える深い喪失感と孤独が痛いほど伝わってくる。
そんなピーターの繊細な精神状態は、物語に大きな深みを与えている。スパイダーマンを演じて10年目となるトム・ホランドは、ピーターの心の乱れ、悲しみ、怒りを微細な動作や表情で表現。シリーズ屈指のパフォーマンスを披露している。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)デビュー作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)の初々しい頃と比べれば、彼がどれほど大人へと成熟したかが一目でわかるはずだ。
作品のスケール感をあえてストリートレベルに戻したことで、“人々にとってスパイダーマンとはどういう存在か”を改めて再定義することに成功している。市民に愛され、気さくに言葉を交わし、困った時にはいつでも駆けつけてくれる。そんなスパイダーマンの普遍的な魅力が、画面の隅々にまで満ちあふれている。
新たに『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のデスティン・ダニエル・クレットン監督がメガホンを取ったことで、アクションの臨場感と奥行きも格段に進化を遂げた。主観視点を取り入れたダイナミックなウェブスイング、ジャッキー・チェンのスタントチームが手掛けたキレのある肉弾戦、ゲームや過去の映画作品を彷彿とさせる胸熱なシークエンスなど、そのクオリティは新次元に突入している。ピーターの感情の揺れ動きをアクションそのものに乗せて魅せるクレットン監督の手腕も冴え渡る。
ストーリーに関しては『ノー・ウェイ・ホーム』同様、徹底的なネタバレ厳禁仕様だ。クレットン監督自身も「予備知識ゼロでの鑑賞」を推奨している。新キャストとして参加するセイディー・シンクの役名が伏せられていることにも、明確な理由がある。『ノー・ウェイ・ホーム』でトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドが登場したあの瞬間に匹敵する、最大級のサプライズと衝撃が待っていることは保証しよう。
さらに、MCUの醍醐味である他作品とのクロスオーバーも惜しみなく盛り込まれている。アベンジャーズとして共に戦ったブルース・バナー/ハルクは、記憶を失いながらも頼もしい協力者として登場。そして待望のスクリーンデビューを果たす“処刑人”パニッシャーは、R指定ヒーローとしての過激な魅力を損なうことなく、PGギリギリのラインで大暴れを見せる。スパイダーマンとの軽妙な掛け合いには、思わずクスッとさせられるはずだ。
MCUならではの仕掛けをちりばめながらも、本作の根底にあるのは、一人の青年が背負う責任と痛み、そしてそれを乗り越えて成長していく普遍的な人間ドラマだ。新章開幕にふさわしく、過去作の予習・復習がなくても楽しめる親切な設計でありながら、物語の全貌が明かされた時、スパイダーマンやMCUの未来にさらなる期待を抱かずにはいられないだろう。(編集部・倉本拓弥)
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は7月31日(金)全国公開



