「ジェダイは侍」神山健治が語る、アニメ『スター・ウォーズ』ライトセーバーバトルに込めた“重み

短編から始まった物語が長編シリーズに「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」の神山健治総監督
短編から始まった物語が長編シリーズに「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」の神山健治総監督 - (C)2026 Lucasfilm Ltd.

 「スター・ウォーズ」の世界を舞台に、強いフォースの力を秘めた少女カーラの冒険を描くアニメーションシリーズ「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」が8月5日、ディスニー公式配信サービスDisney+で日米同時一挙配信をスタート。Production I.G.と共にこの物語を創り上げた神山健治総監督が、本作に込めた「スター・ウォーズ」への熱い思いを語った。

【画像】ジェダイたちの物語!「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」

 アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズ、「東のエデン」などで知られる神山健治監督は、かねてから『スター・ウォーズ/新たなる希望』(エピソード4)の大ファンで、同作を観て映像クリエイターを志したと公言している。

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 その本家「スター・ウォーズ」へのリスペクトは、このシリーズの原点である、アニメ・オムニバスシリーズ「スター・ウォーズ:ビジョンズ」Volume1の一篇、「九人目のジェダイ」の時から変わらない。「スター・ウォーズ」の世界をクリエイター独自の"ビジョン"で描くこのシリーズで、他の作品が独自の解釈と脚色に力を入れるのとは対照的に、「九人目のジェダイ」には“「スター・ウォーズ」はそのままで素晴らしいので、過度な脚色は要らない”という意志がみなぎっているようだ。

 「最初の短編「九人のジェダイ」は、観る人に、僕が初めて『スター・ウォーズ/新たなる希望』(エピソード4)を観た時と同じ感動を感じてほしい、という気持ちだけで創ったんです。だからそう見えるのかもしれません」

本作のライトセーバーは、使用者の心を映し出す

 キャラクター・デザインや背景美術がシンプルなのには、理由がある。

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 「この物語では、ライトセーバーが本人の心を映し出す、という設定が重要なモチーフになっています。それに、実は映画シリーズでは、ライトセーバーで戦うシーンはそんなに多くないんですよね。だから、この作品ではライトセーバーを使ったアクションをたっぷりやりたい、と思いました。ライトセーバーを動かすことに特化した結果、絵柄がシンプルなものになったのかなと思います」

 そのライトセーバーのバトルが始まると、その動きから目が離せなくなるのには、理由がある。

 「ジョージ・ルーカスが最初にライトセーバーを描いた時は、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』に代表されるような、日本の時代劇の日本刀のアクション、侍のアクションを意識していたと思うんです。僕は“ジェダイ”は、“騎士”じゃなくて“侍”だと思っているんですよ」

神山総監督「僕は“ジェダイ”は、“騎士”じゃなくて“侍”だと思っているんです」

 「だからライトセーバーはただの武器ではなく、そこに持つ人の精神性が現れる。侍同士が剣を交えたら、どちらかが命を落とすのと同じように、ライトセーバーのバトルも、どちらかが死ぬことを覚悟して戦う。そういう重さを出すことを意識しました。サーカスの曲芸みたいな派手さを見せるんじゃなくて」

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 「ライトセーバーを日本刀のように両手で持って戦うことも、多田(俊介)監督が意識して描いています。多田監督は剣道の有段者だったので、剣道の動きや、試合の緊張感が映像に反映されて、それもバトルに緊張感を与えていると思います」

 そして「スター・ウォーズ」のお約束、イースターエッグは、アイテムだけでなく、人物設定や事件にもあふれている。これは“オビ=ワン”的な立ち位置の人物か? これは“オルデランの破壊”的な事件か? など本家シリーズを連想させるモチーフが山盛り。それだけでなく、画面の構図にも、これまでのシリーズのシーンを連想させるイースターエッグがある。

 「そういう部分は、スタッフや脚本家と相談して創りました。宇宙船のデザインや、風景も"なんだか見覚えがある"というものを意図的に入れています。他にも、SWの世界では衣装にボタンがないんですよね、そういうところも踏襲しています」

  「あと日本語のセリフには、時代劇的っぽい言い回しを入れています。時代背景は、ルークが生きていた頃の200年後をイメージした設定ですが、未来ではなく地球でいう17世紀くらいで、銀河はまだ未知の大海原だというイメージです」

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主人公のカーラ

 この物語の主人公は、ライトセーバーを作る職人の娘カーラ。彼女は、予期しなかった出来事からジェダイと出会い、銀河で冒険を繰り広げていく。主人公を少年ではなく、少女にしたのはルーカスフィルムの要望ではなく、神山監督の個人的な理由からだった。

「僕のアイデアでした。この作品を創っている時に、ちょうど僕の娘が大学生になるタイミングだったんです。それで、娘は意外と父親のことを知らないけど、そろそろ父親にはこういう一面もあるんだということを知るような年齢になったな、と思っていて。それに、父と息子の物語はたくさんあるので、父と娘の物語は面白いんじゃないかと思ったんです」

 主人公が若く成長期の人物なのは、監督の「スター・ウォーズ」観からくるものだ。

 「僕は『スター・ウォーズ』は基本的に、一人の名もない少年少女が旅に出て成長する、という、ジュブナイル(少年少女向けの小説や映画)だと思っているんです。一個人の冒険の物語であって、政治的な方向には行く必要はない。物語を主人公の少女カーラの目を通して描く、とにかくカーラにフォーカスすることを意識しました」

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 ルーカスフィルムからの要求はほぼなく、自由に創作できたというが、監督が自身に「これはやらない」と決めていたことがある。

 「もともとのこの銀河の設定は“ジェダイが善、シスが悪”という二元論なんですけど、この縛りは、今の時代には合わなくなってきているという思いがあります。正義とは何か、というのは見る角度によるし、シスが言っていることの方が道理にかなっていると思える時もなくはない。“ジェダイが正義だ”という考え方は一回、ちょっと傍に置いておこう、というのはありました」

 その言葉通り、この物語で主人公カーラの前に立ちはだかる、ダース・ベイダーのようなマスクをした人物は、赤いライトセーバーではなく、青いライトセーバーを手にしている。これまでの「スター・ウォーズ」に敬意を込めつつ、そのままではない物語「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」で、少女カーラを待つのはどんな冒険なのか。(取材・文/平沢薫)

「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」はディズニープラスにて独占配信中

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