原点へ立ち返る冒険譚ーファンの心を揺さぶる日本発SWアニメ
これぞスター・ウォーズ!「九人目のジェダイ」レビュー

『スター・ウォーズ』の宇宙を舞台に描かれる、全8話のアニメシリーズ「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」がディズニープラスで全話配信中。「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズなどの神山健治が総監督を務め、Production I.Gが制作するこの作品は、なぜ『スター・ウォーズ』ファンの心に響くシリーズに仕上がったのか。その理由と魅力を、4つのキーワードに沿って読み解く。第2回は『スター・ウォーズ』の物語の原点である「神話」に注目する。(文・平沢薫)
※注意:本記事はネタバレを含みます。「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」をまだ観ていない方はご注意ください。
【画像】「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」キャラクタービジュアル
エピソード4に似ている?それには理由が
「九人目のジェダイ」のストーリーを俯瞰してみると、『スター・ウォーズ/エピソード4 新たなる希望』に共通する部分がある。「助けを求められた若者(カーラ)が、銀河をまたにかける冒険の旅に出て、ジェダイになることを決意する」という物語。しかしそれは、最初の『スター・ウォーズ』の「英雄神話の基本構造はどれも同じ」という考え方を踏まえているからではないか。
ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』の物語を構想する時に意識したのが、神話学者ジョセフ・キャンベルの著作「千の顔をもつ英雄」。同書は、比較神話学の観点から、古今東西の英雄物語はすべて、物語の基本構造に共通点がある、という説を唱える。ルーカスは、これを意識して『スター・ウォーズ』の物語を構想した。「九人目のジェダイ」は、おそらく意識的にこれと同じ発想で構想されているのに違いない。この物語が『スター・ウォーズ』そっくりなのは「すべての英雄譚は同じ物語である」という原点を継承しているからなのだ。
繰り返される『スター・ウォーズ』モチーフ
「親と子」「ライトセーバー」「ジェダイ」「仮面の人物」というモチーフも共通。さらに、同じような出来事が起きる。第1話では、カーラたちが辺境伯ジューロの旧友で、今は豪商として名高い元ジェダイのダンバイの元を訪ね、そこで敵の一団に遭遇するという展開が描かれる。これは、『スター・ウォーズ/エピソード5 帝国の逆襲』でハン=ソロたち一行が、ランド・カルリジアンに会いにクラウド・シティを訪ねたことを連想させる。
また、銀河に新たな秩序をもたらそうとするナワームが、巨大兵器で惑星を破壊しようとする描写は、『新たなる希望』で、惑星オルデランがデス・スターのスーパーレーザーで破壊されたことを思い出させる。第5話には、アヒルを連想させる小さな体の種族が登場。森に覆われた惑星に住んでいることも手伝って、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』のイウォーク族を連想させる。こうして『スター・ウォーズ』シリーズの事件を連想させるような出来事が次々に起きる。
こんなところにも!タイトルに隠された仕掛け
各エピソードのタイトルにも『スター・ウォーズ』シリーズを踏まえたものがある。第1話「ニュー・スレット」は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(A New Hope)を、第4話「ナワーム・アタックス」は『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(Attack of the Clones)を、第7話「ジェダイ・ストライク・バック」は『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(The Empire Strikes Back)を踏まえたタイトル。もちろんストーリー展開は違うが、意識して観るとより興味深い。
そして、『スター・ウォーズ』的なものは、ストーリーだけでなく、情景の構図にも及ぶ。例えば大きなところでは、第4話で、巨大な赤い惑星を背景に、複数の宇宙戦闘機が浮かんでいる情景をみると、"ああ、この風景は知っている"と思わずにはいられない。それは『新たなる希望』で、巨大な赤い惑星ヤヴィンを背景に、反乱軍の戦闘機群が秘密基地から飛び立つ時の情景に重なるからだ。
また、小さな要素だが、第5話でカーラの父ジーマが、ナワームの宇宙船が砂の惑星から飛び立つのを見あげる時、砂の上でトカゲのような小型生物がチョロチョロと動くのを見れば、ドラマ「マンダロリアン」シーズン1の第2話「チャプター2:ザ・チャイルド」の冒頭で、やはりトカゲのような生物が砂の上をチョロチョロと横切ったことが思い出される。まったく同じわけではないが、こういう"これは見たことがある"という感覚が、この物語も『スター・ウォーズ』銀河に連なっているのだと痛感させてくれるのだ。
こうして「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」は、ストーリー面でも、構図でも、まるで『スター・ウォーズ』のようだと感動させつつ、同時に新鮮なストーリーを展開させて、『スター・ウォーズ」が進化し続けることを痛感させる。そして『スター・ウォーズ』ファンの胸が熱くなってしまうのだ。
「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」はディズニープラスにて全8話一挙独占配信中



