織田裕二『踊る大捜査線』再始動&室井慎次への思い 定年近い青島俊作「根底にあるものは変わらない」

映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012)から14年、再始動を果たした「踊るプロジェクト」の最新作『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が誕生した。主人公・青島俊作を演じる織田裕二ですら「まさか作られるとは…」と実現を予想していなかった『踊る大捜査線』完全新作。令和で再び青島を演じる織田が、本作参加への思いを熱く語った。
和久さんの年齢に近づいた青島俊作
1997年に連続ドラマではじまり、社会現象を巻き起こした「踊る大捜査線」。2012年の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』は、サブタイトル通りファイナルと銘打たれていた。織田も「え、ファイナルなの? と驚きました」と当時を回顧する。
「和久さん(いかりや長介演じる先輩刑事・和久平八郎)くらいの定年間近の年齢になった青島が見たい気がしていたので、残念だなと思っていました。その後、他局から刑事もののオファーをいただいて、『踊る』の続編があるならお断りしようと思って確認したら、『やる予定はありません』と。それでお受けして、しばらくしたら『室井慎次 破れざる者』『室井慎次 生き続ける者』2部作の話が流れてきて。驚きました」
しかも、室井慎次(柳葉敏郎)は『室井慎次 生き続ける者』のラストで最期を迎えた。「それなのに、青島が何もないってあんまりだよねと思っていたら、最後に少しだけ出演させていただいたんです。そしたら、ちょうど和久さんくらいの年齢だし『これは(青島の映画を)やるってことだよね』と」。定年に近づいた青島がどうなっているのか、楽しみに新作の台本を待っていたという。
織田曰く、台本を読んだ最初の感想は「嘘っ!」だった。「青島が走り回っているんですよ! 和久さんは『疲れるほど働くな』とか、今なら十分わかるけど当時は『やる気満々な若者に言う言葉か?』というような渋い台詞がたくさんあった。そういうのを期待していたら、青島は違いました」と織田は苦笑する。
「でも、お話自体が面白かったんです。58歳のおじさんという設定を活かして、エッサホイサみたいにカッコ悪く走るようにすればいいかなと。途中で電動キックボードに乗っちゃうような、ちょっと小ズルいちゃっかり感も入れてもらいました」と続け、「あの距離、本当に走ったら大変なことになるんですよ」とお茶目なアピールも忘れない。
時代が変わっても、青島は変わらない
物語は、青島が身代金の“運び屋”として、誘拐犯の指示通りに東京中を走り回るところからはじまる。翻弄される青島と警察には、街の爆破予告まで届けられ、大混乱。さらに、3Dプリンター拳銃での連続殺人が勃発、毒性ウイルスを街にばらまくという脅迫状まで警視庁に舞い込んだ。
おなじみの湾岸署を離れ、警視庁の捜査第一課に着任している青島の変わらない奮闘劇が描かれているのだが、『室井慎次』から今作までの間に、青島と室井に何があったのか、織田もわからないのだという。
「本広(克行)監督や亀山(千広)プロデューサーに聞いたけど、教えてくれませんでした(笑)。いずれすべて明らかになるのか、一言で片づけられるのか。何が起こるかわからないのが『踊る』です。気の抜けない作品なんです」
過去の青島と変わった点はあるのだろうか。「本人的にはないです。まあ、年をとれば白髪が増えたとか、見た目は変っているんでしょうけど。それよりも、時代が変わりました」と織田。確かに青島は、年下の警察官を「仕事頑張ろうね」と励ましたりしている。「今の時代の上司にはなりたくないなと思いました(笑)。でも、根底にあるものはいつの時代も変わらないんだと思います」
「湾岸署にいたよね?」違和感ナシの新キャスト
連続ドラマから出演し続けているメンバーたちも、今作に続投している。「緒方(薫役/甲本雅裕)さんはパワーアップしていて、助かるなと思いました(笑)。ユースケ(サンタマリア/真下正義役)も、マジメなところと元の真下の部分のメリハリ感がすごく気持ちよくて。難しい役回りですけど、完璧でしたね」とほめたたえる。
中でも、旧湾岸署のおとぼけ上司トリオ・スリーアミーゴス(北村総一朗、小野武彦、斉藤暁)への思いは格別だった。「それぞれ今年91歳、84歳、73歳でいらっしゃいますから、レジェンドですよね。特に小野さんは、連ドラ当時からいろいろご指導いただきましたが、今回もテンポなどコントロールしてくださった。別作品でご一緒した時は長台詞も完璧で、バケモノだと思いました(笑)。お3方が再び集まったこと自体が嬉しいし、出演シーンはスリアミ劇場を楽しんでもらうコーナーだと思っています」
新キャストも多彩だ。趣里が演じる台東署のじゃじゃ馬刑事・芝田ひばりと、白洲迅がふんした麻布中央署のスタイリッシュな美浦秋について織田は「青島は警視庁になじめなかったんでしょうね。彼が見つけた新しい仲間です」と紹介する。「趣里ちゃんは『湾岸署にいたよね?』と思うくらい、なじんでいました。めちゃくちゃ上手いし、生きたアニメみたいにチャーミングです。白洲くんは、“やる気のない今どきの子”という、ともすればテンポが悪くなりがちな設定を、バーンと前に出てくる芝居でうまい具合に壊していた。美浦は成長系ですね」
警視庁クリニックの医師であり、警察官でもある指方輝(佐藤二朗)と、幸福支援部隊の小昏双葉(野呂佳代)には「まだまだご挨拶程度。膨らませられますよね」と早くも今後の活躍に期待を寄せる。「二朗さんは、打てば響くし、響き方がものすごい。楽しいし、ありがたかったです」。さらに捜査第一課長・北丘雲斗役の佐々木蔵之介の芝居にも「同期の空気感も、定期的に会っていたのかなという感じも、一瞬で彼は出していた。さすがだなと思いました」
『室井慎次』からの再登場である桜章太郎(松下洸平)と仁狩管理官(西村直人)については「桜くんは何かありそうで気になりますよ。仁狩さんは一貫して厳しい人で現場を引き締めてくださって、とても感謝しています」とし、彼らの今後も楽しみにしているようだ。「お芝居の上手い方々がたくさんいるので、そういう方々とお芝居でふざけるのは面白いですし、やりすぎても引き算ができる。僕も監督も、現場に行くのが楽しかったです」
室井不在の『踊る大捜査線』に思うこと
そんなふうに現場を満喫した織田だが、台本を読んで一番気になったのは「室井さんがいなくなったこと」だった。「青島と室井さんには、違う立場から正しいことが出来る警察を目指そうという“約束”がありました。それは『踊る』の縦軸だったので、なくなってしまうと、細かい笑いのジャブはあるけど、効き目のいいストレートがなくなってしまうということになりかねない」。確かに『踊る』シリーズは笑いだけではなく感動もあり、それが広く人を惹きつけたポイントでもあった。
「だけど、完成品を観てホッとしました。これくらいの匙加減でいいのかなって。全部は語ってないけど、十分にヒントはもらえました」と織田は満足げ。青島が今作で何を得て、どんな答えを導き出そうとしているのか。「そこが響いた人も、響かない人もいるでしょうね。中には『青島さん!!』って熱く言ってくる人がいるかもしれないけど、いや、そこまでは熱くないんだけどね、青島は」と織田はうれしそうに笑う。それは、30年近くともに歩んできた青島と、彼を育ててきた多くの人たちに対しての絶対の自信と信頼を感じさせるものだった。(取材・文:早川あゆみ、写真:TOWA)
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は9月18日(金)全国公開



