『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』ベネチア観客の熱い感想に手応え 塚本晋也監督、現地コメント動画公開
『野火』『鉄男』などで知られる塚本晋也監督の最新作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が9月11日より劇場公開を迎えた。それにあわせて、コンペティション部門に出品されている、第83回ベネチア国際映画祭でのワールドプレミア上映直後に現地で収録された、塚本監督のコメント映像が公開された。
『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』ヴェネチア塚本監督コメント映像
現地時間9月4日に行われたワールドプレミア上映では、約8分間にわたるスタンディングオベーションを受けた本作。ベトナム戦争に従軍したアフリカ系アメリカ人の元海兵隊員アレン・ネルソンさんが、自らの戦争体験と帰還後のPTSDや葛藤をつづったノンフィクションを原作に、塚本監督が「戦争加害者の傷」というテーマに真正面から挑んだ渾身の一本だ。
現地イタリアの映画評では「現代に向けて平和のメッセージを叫び続ける“魔除け”としての重みを帯びている」(SENTIERI SELVAGGI)、「現代の戦争映画が依然として実現できない、稀有な力強さが宿る」(BEST MOVIE.IT)、「深い慈愛と人間味に満ちた、偉大な映画の力を感じさせる一本」(QUINLAN)など作品の熱量と平和へのメッセージを称える声があがっている。
そんな本作を、初めて大勢の観客に届けたワールドプレミア。塚本監督は、上映前の心境について、「緊張というよりはかなりエキサイティングな気持ちだった」と振り返り、世界初披露の瞬間を前にした高揚感を明かした。さらに、スタンディングオベーションで迎えられた上映については「僕としては素晴らしい形で上映が終わったと思っているので、ほっとしています」と安堵。上映後のロビーでは、観客が監督を取り囲み、次々と感想を伝える場面もあったといい、「凄く熱い手ごたえを表してくれた」と語っている。
その余韻は会場だけにとどまらず、上映から数日後の早朝、街を散歩していた際にすれ違う人々から拍手やグッドサインを送られ、「シンヤ ツカモトさん、ありがとう」と声をかけられたと明かし、「すごくうれしい手ごたえを感じました」と振り返る。
そのなかでも、特に印象に残った感想として挙げたのは、「STRONG(強い)」という言葉。細かな感想はまだ十分に聞けていないというが「皆さんが感想を言ってくれる時のお顔が、すごく赤くなって、目がウルウルとしていて、ちょっとこうパンパンになっているような雰囲気で感想を言ってくださる。その表情が自分にとっては何よりもありがたいと感じました」と観客の表情から、しっかりとメッセージが届いたことを実感したようだ。
一方で、戦争による“加害の体験”を描いた重厚なテーマだけに「すんなり受け入れることができなかった人もいらっしゃると思います。ですから、そういう方々の感想もこれからひとつひとつ聞いていきたい」と真摯に向き合う姿勢を示した塚本監督。日本の観客に向けては、戦争を頭だけでなく「身体で感じてほしい」「非常に臨場感のある形で作っています」と語りつつ、「アレン・ネルソンさんを通して、人間の光の部分も、感じていただけたら」と作品に込めた思いを呼びかけている。(塚本晋也の「塚」は「豕」に点ありの旧字体が正式表記)



