ウルヴァリンの魅力を限界まで引き出す PS5完全新作「Marvel’s Wolverine」極限のこだわり【開発者インタビュー】

 「Marvel’s Spider-Man」シリーズで知られる Insomniac Games が、マーベルの伝説的ヒーロー・ウルヴァリンを題材に制作したアドベンチャーゲーム「Marvel’s Wolverine」。カナダ、日本、マーベルコミックなどでお馴染みのマドリプールなどを舞台に、ウルヴァリンが未来をかけた戦いに挑む。発売にあたり、開発者のマイク・フィッツジェラルド(Head of Technology, Insomniac Games)がリモートインタビューに応じ、Marvel Games との共同制作で誕生した完全新作オリジナルストーリーやバトルシステムについて、ウルヴァリンの魅力を限界まで引き出すために苦労したことを明かした。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

【動画】「Marvel’s Wolverine」ローンチトレーラー

「ウルヴァリンの本質とは何か」を追求

Q:「Marvel’s Spider-Man」の世界的大ヒットを受けて、次なる一手としてウルヴァリンを主人公とするゲームを開発することになった経緯を教えてください。

ADVERTISEMENT

 私たちは幸運なことに、ここ数年間にわたってマーベルと素晴らしい信頼関係を築いてきました。スパイダーマンという世界的人気キャラクターの作品に携われたことは、とても名誉なことです。そして、さらに異なるアプローチの作品に挑戦する機会が巡ってきました。プレイヤーにスーパーヒーローのゲーム体験を提供するため、自社のスキルを活かしつつ、これまでとは違うアプローチを模索する中で、ウルヴァリンは非常に魅力的だったのです。

 この作品なら、「これまでと同じようなゲーム」にはならないという確信がありました。アプローチを変え、ストーリーのテーマも変え、ゲームプレイのタイプも全く異なるものにしています。そして何より、私たちはキャラクターとしてのウルヴァリン、そしてローガンという人物が大好きなんです。彼には圧倒的な深みと複雑さがあります。だからこそ、このキャラクターとなら絶対に素晴らしいものを作れるという自信がありました。

Q:ウルヴァリンの暴力性は、キャラクターを表現する上で重要な要素の一つです。今作は CERO Z(18才以上のみ対象)となっていますが、過激な描写やレーティングについて、マーベルとはどのように連携して決定したのでしょうか?

 まず、プロジェクト発足時にマーベルと行ったのは「キャラクターの本質とは何か」を議論することです。ウルヴァリンにはこれまでコミック、映画、アニメと多くのバージョンが誕生しました。その中で、「ウルヴァリンの物語」として成立させるために絶対に外せない要素は何なのか、そして逆に自由に新しい挑戦ができる余地はどこにあるのかを話し合いました。

 ウルヴァリンにとって、ヒーリング・ファクター(※自己治癒能力)はキャラクターを構成する極めて重要な要素です。私たちはそれを確実に表現したいと考えました。そして「暴力」もそうです。単なる暴力にとどまらず、その裏にある「怒り」や「狂乱」、問題解決に対する独特のアプローチに注目しました。

ADVERTISEMENT

 それをゲーム内でどう表現するかを考えた時に、ある程度の暴力描写を含んだバイオレントなゲームになることが明確になりました。一方で、マーベルとの議論を通じて「彼が暴力を楽しんでいるわけではない」という点も確認し合いました。彼は血に飢えているわけでもありませんし、私たちも暴力を強調したいわけではないのです。彼はあくまで使命を帯びた一人の男であり、物事を処理するための手段として「アダマンチウムの爪」があるのです。

 暴力描写については、マーベルから直接的な制約が課されるようなことはありませんでした。彼らは私たちの選択を非常に信頼しており、新しい試みをする際も常に密なコミュニケーションを取っています。開発においては、必ずしも「現実的なリアルさ」そのものを追求しているわけではありません。もし完全にリアル志向にしてしまうと、ただ凄惨でグロテスクなものになってしまいますから。

 私たちが目指しているのは、「生きたコミックブック」のような表現であり、ある種の誇張された暴力描写です。例えば、作中の血の表現は非常にダイナミックですが、写実的というよりは、コミックの誌面で見られるようなドラマチックな演出に近いものです。物語として誇張すべき部分を、いかにバランスよく表現するかを模索しました。

ウルヴァリンの“怒り”をバトルシステムに反映

Q: 『X-MEN』シリーズやウルヴァリンの歴史を全く知らないプレイヤーでも、予備知識なしで楽しめますか?

 まったく問題ありません。もちろん、キャラクターを知っていればより楽しめますが、「Marvel’s Spider-Man」と同様に、今作でも独自のキャラクター像と世界的背景を描いています。ゲームの序盤ですぐに分かりますが、ローガンは誘拐されたチームリーダーを救出するという“最後の大きなミッション”に挑むため、かつての仲間たちがいる「チームX」に一時的に復帰します。知っておくべき予備知識は本当にそれだけです。キャラクター像やチーム内の関係性はすぐに理解できますし、そこから一気に冒険が始まります。

ADVERTISEMENT

Q:「Marvel’s Spider-Man」では、ウェブ・スイングを戦闘に組み込んだ点が革新的でした。今作において、ウルヴァリンの野生的な戦闘スタイルをどのようにゲームへ落とし込んだのでしょうか?

 「Marvel’s Spider-Man」と比較すると、はるかに地に足のついた戦闘になっています。スパイダーマンは、空中でアクロバティックに回転し、敵を吊り上げるといった空中戦が中心でした。一方、ウルヴァリンはより重厚で、地上での打撃感や暴力性が強くなっています。先ほども申し上げた通り、全く異なるアプローチを取りたかったのです。

 ウルヴァリンからプレイヤーが期待する「なりきり感」を最高の形で届けるため、彼のバトル戦略をダイレクトに感じられる設計にしました。戦闘では彼の爪を中心に組み立てられており、進行に応じて新しい技を解放・強化できるスキルツリーを用意しています。遠距離の敵や近距離の敵に対処するための様々なアビリティーも備わっています。

 そして、画面隅にある「レイジメーター」が全ての基盤となります。攻撃を当てたり、ダメージを受けたりすることでレイジ(怒り)が溜まっていき、ゲージが高まるにつれてより攻撃的になり、ドラマチックかつ一気に大勢の敵をなぎ倒すことができるようになります。

 また、体力の仕様についても考慮しました。ウルヴァリンにはヒーリング・ファクターがありますが、それが枷となり「壁の後ろに隠れて、回復を待ってから戦う」というプレイに繋がるのだけは避けたかったのです。私たちが設計した戦闘システムは、常に積極性を維持させるものになっています。ここも非常に大きな注力ポイントでした。

ADVERTISEMENT

「最高のウルヴァリン体験」に必要な要素

Q:映画『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』のデスティン・ダニエル・クレットン監督は、アクションを構築する上で「Marvel’s Spider-Man」からインスピレーションを得たと発言しています。今作は完全オリジナルゲームですが、バトルシーンにおいて実写映画やアニメシリーズからの影響、アイデアを得た部分はありますか?

 ご存知の通り、ヒュー・ジャックマンという俳優は長年にわたり、多くのファンにとってのウルヴァリンであり続けました。彼が築いたイメージを尊重し、多くのプレイヤーがその印象を持ってゲームプレイに臨むことを理解しておくのは非常に重要なことでした。同時に、アニメ版のスティーヴ・ブラムによる演技や、コミック版のウルヴァリンに対しても同じことが言えます。

 人々はこのキャラクターに対して「ウルヴァリンとはこうあるべきだ」という非常に明確なこだわりを持って接しています。「これらと全く同じものを出さなければダメだ」と思うファンもいる中で、全員を完全に満足させることはできないことも理解しています。だからこそ、ウルヴァリンにとって不可欠な要素を抽出しつつ、自分たちなりの新しいアレンジを加えることに注力しました。例えば、コミックの設定通りに小柄なウルヴァリンを描くこと。カットシーンなどで、彼よりはるかに背が高いセイバートゥースと対峙する場面は、非常に面白い画作りになっています。過去作から多くの刺激を受けつつ、ファンが期待する手応えを感じてもらえるような、私たち独自のひねりを加えていきました。

ADVERTISEMENT

Q:戦闘後のウルヴァリンは、直前のバトルで負った傷や破れたスーツが反映されています。生々しさや没入感を生み出している要素の一つですが、こうした描写は開発チームが特にこだわった部分なのでしょうか?

 まさにその通りです。キャラクターチームは驚くほど優秀で、キャラクターの見た目を支えるグラフィックと技術の両方に情熱を注いでいます。今作においては、キャラクターが受けたダメージ、そこから回復する過程、再びダメージを受けるという一連の攻防は、プレイヤーに「最高のウルヴァリン体験」を味わってもらう上で極めて重要な要素になると理解していました。

 そのため、身体に刻まれるダメージは、敵から実際に攻撃を受けた位置に基づいて発生します。多くのゲームで見られるような「表面に傷のテクスチャーを貼り付ける」だけではなく、3Dモデル自体から実際に形状を削り取るような処理を行っています。さらに、ゲーム内には多種多様なスーツを用意していますが、それぞれのスーツがこのダメージシステムと正しく連動するように作られています。

「もっとウルヴァリンを味わいたい」と思ってもらえる作品に

Q:物語の舞台の一つである新宿の街並みは非常に緻密で、思わず探索したくなるほどです。歌舞伎町のシンボルである“怪獣王の像”も、意外な形で表現されています。新宿のデザインは、どのようにアプローチしたのでしょうか?

 まず、「Marvel’s Spider-Man」とはアプローチが少し異なっています。「Marvel’s Spider-Man」では超広大な街を舞台に、建物の屋上を超高速で飛び回るのが中心でした。そのため、今作は久しぶりに、地上を舞台に密集した路地裏で長い時間を過ごす体験を作る機会に恵まれました。

ADVERTISEMENT

 また、開発スタッフを新宿に派遣し、実際に街の空気感を肌で感じ、何をゲーム内に取り入れれば現実とリンクできるかを模索しました。また、チーム内にも日本滞在経験のあるスタッフがいて、「これをやったら面白いんじゃないか」「あれも入れよう」と盛り上がりました。さらに、日本の PlayStation にも協力していただき「この表現はどう感じる?」と細かくフィードバックをもらいました。同時に、コミック的な表現にもこだわり「マーベルコミックに登場する新宿」とはどんな姿なのか、それをいかにゲーム内で表現するかに挑みました。

Q:「Marvel’s Wolverine」をプレイしていくうちに、『X-MEN』のコミックを読み返したり、映画やアニメシリーズをもう一度観たくなりました。こうしたメディアミックス的な相乗効果は、開発中に意識していたことでしょうか?

 そう言っていただけて嬉しいです。私たちは「いかにしてウルヴァリンというキャラクターの魅力を限界まで引き出すか」に集中しています。それが正しく達成できれば、プレイし終えた時に「もっとウルヴァリンを味わいたい。ウルヴァリンに没頭できる作品はどれだ?」と思ってもらえる効果が生まれるのだと思います。また、逆のパターンも起こりうるはずです。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』を鑑賞した人が、「家に帰って PlayStation でスパイダーマンを操作したい、もっとあのキャラクターと時間を過ごしたい」と感じるようなことと同じ現象です。いずれにせよ、プレイヤーにそう思わせることができたなら、開発者としての仕事を果たせたと誇りに思います。

Q:今作が大ヒットした場合、将来的に「Marvel’s Spider-Man」のように続編が誕生したり、X-MENが活躍するゲームが開発されたりする可能性はあるのでしょうか?

ADVERTISEMENT

 Insomniac Games としては、まずは「Marvel’s Wolverine」をしっかりと世に送り出し、多くのプレイヤーの心に響くことを一番に願っています。皆さんがこのストーリーをプレイして、私たちの描くローガンや「Marvel’s Wolverine」ユニバースをもっと見たいと思ってくれたなら……その時はどうなるのか、楽しみですね。

「Marvel’s Wolverine」は発売中 対応機種:PlayStation5(R)
スタンダードエディション パッケージ版:8,980円(税込)、ダウンロード版:8,980円(税込)
デジタルデラックスエディション:9,980円(税込)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
  • Googleで優先するソースとして追加
ADVERTISEMENT