【ネタバレ】完全新作『八つ墓村』トラウマ級の恐怖描写 清水崇監督が語るこだわりの舞台裏

推理作家・横溝正史による不朽の名作を『呪怨』シリーズの清水崇監督が映像化した映画『八つ墓村』。山奥の村で展開する血塗られた因果が絡む推理劇は、これまでも数々の名匠が独自のアプローチで映像化してきた。舞台を現代に移した本作で、Jホラーの巨匠でもある清水監督はどんなドラマを描こうとしたのか。その独自の演出に込めた思いを聞いた。(以下、一部ネタバレを含みます)
【画像】金田一・尾上松也『八つ墓村』インタビュー撮り下ろしカット
名探偵・金田一耕助シリーズの一編としても知られるベストセラーを、清水監督ならではの演出を最大限に活かした、怪奇幻想ロマン冒険譚として再構築した『八つ墓村』。母親の訃報をきっかけに、自身のルーツである、岡山の山奥にある“八つ墓村”を訪れた大学生・井川辰弥(奥智哉)が、道中で出会った奇妙な探偵・金田一耕助(尾上松也)と共に不可解な連続殺人に巻き込まれていく。
舞台が現代に置き換わり、八つ墓村をめぐる描写も再構築された本作。序盤から異彩を放つのが、村人たちが村に恵みをもたらした“八つ墓明神”を祀る神楽(かぐら)だ。猿、犬、蛙、鳥、鼠、魚、狐、女を模した面を着けた演じ手が舞い踊る様を、面で顔を隠した村人たちが見守る奇妙な祝祭の情景には、清水監督ならではの意図が込められている。
「あの神楽は、僕らが“ホラー担当”と呼んでいる、演出部の川松(尚良)くんのアイデアが基になっています。何も知らない現代の村人たちは神様が降りてきたと喜んで見ているけれど、実は村ぐるみでの過去の蛮行を描いている。過去の惨劇を自分たちに都合よく改変して祀り上げて、知らぬまま楽しんでいるわけです。現代でも国や組織、様々な著名人までもがミスや謀略、犯罪行為などの悪事を隠蔽して、発覚し追い詰められて初めて謝罪する…なんて姿を何度も見せられているし、今やSNSでは人同士が罵り合い、誰かしらを責め立てる事で存在証明や承認欲求を満たす無法地帯……そんな恐ろしさって今も昔も変われていないですよね」
村人たちがかぶる面も、後半では、集団心理の恐ろしさを象徴するアイテムとなる。「面のアイデアは、市川崑監督版がヒントでもありました。時代劇パートで村人が侍を襲うシーンで面を被っているのを見て『もっと効果的に陰湿に使えるモチーフにできるのでは?』と、川松くんと相談して神楽のシーンができあがったんです。アイデンティティを隠して人を攻撃する姿……それが現代のSNSにも通じる、集団心理の恐ろしさを象徴するものになりました」
そして、観客を恐怖へと引きずり込む最大の転換点となるのが、村の集会場で起きる事件だ。物語はここから一転、清水監督の真骨頂ともいえる怪奇描写が冴え渡る。 この演出について、清水監督は「本当は最初からもっと入れたかったんですが、あまり前半戦からやりすぎると、探偵としての金田一の居場所がなくなってしまうので」と明かす。
「人間的な洞察力で物事を捉え、人間の闇を見抜いてきた金田一が、ありえない現象を見て挫折した時に、どう立ち直るのかを観たいし、描いてみたいと思ったんです。散々悩んだんですけど、いざ事が起こり始めると、辰弥が金田一を引っ張っていくことになった。自分の生い立ちに悩み受け身だった彼が、そこから『しっかりしてください!』と二人の立場が逆転して新しい“バディ関係”が立ち現れてきたので、これなら新しいものになると思いました」
金田一シリーズの見どころでもある、凄惨な遺体描写もまた“清水組”の真骨頂。特に観客の背筋を凍らせるのが、濁った貯水池の水底からあられもない姿で被害者が浮かび上がってくる場面だろう。ここにも、数々のホラーを手掛けてきた清水組のこだわりがのぞく。
「CGではなく、実物(造形物)でやることにこだわったので大変でした。自然なタイミングで浮かせるには、水底にスタッフが潜って動かす必要があるけどそれは無理なので。潜らずに済む方法を川松くんが編み出して。『このタイミングでどうですか監督!』って(笑)。水面近くまで浮かんできて、ちゃぽんって(浮かびきったら)怖くないんです。その前にすっと面が止まって、自然にスーッとずれたら顔が見える。そのタイミングがとれるまで、何回も練習をしています」
清水監督独自のアプローチによって、またも新たな顔を見せた『八つ墓村』。初めて作品に触れる観客はもちろん、過去作を観てきた観客にとっても新しい驚きを提供する令和版として、次々に現れる恐怖を体感する一本としても注目の一作だ。(編集部・入倉功一)



