「ダウンタイム」主人公の形成外科医を喫煙家の設定にしたワケ

美容整形業界の内幕を描くNetflixシリーズ「ダウンタイム」(配信中)では、「医療で命を救う」という信条ゆえに美容整形を否定する形成外科医を主人公にしたストーリーが描かれる。その松岡茉優演じる主人公の特徴の一つが、喫煙家であること。一般的には医師にとって健康を害する喫煙は縁があまりないイメージだが、なぜ本作では喫煙家の設定にしたのか。その理由を、監督のYuki Saitoが語った。
本作は、天才的なオペ技術を持ちながら救命を優先した緊急オペが原因で、勤務していた大学病院を去ることになる形成外科医・沼田文(松岡)と、彼女をスカウトする、「美で人を救う」ことが信条の遠山美容外科クリニックのカリスマ美容外科医・遠山凜(仲里依紗)、価値観の異なる2人がそれぞれの信念をぶつけ合い、激しく対立するさまを追う。脚本は映画『孤狼の血』シリーズやNetflixシリーズ「極悪女王」などの池上純哉が担当。監督をドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」などのYuki Saito監督が務め、監督自身も池上と共に半年間の取材を重ね、脚本開発に携わっている。
主人公・文は幼いころに父と生き別れ、母親の再婚相手が2億円の借金をつくり家計が自身にのしかかっていることから家庭内での軋轢も絶えない。そんなストレスをまぎらわすかのようにタバコを手放せず、ひょんなことから転職することになった遠山美容外科クリニックでも休憩時間には必ずといっていいほど喫煙所に向かう。文にとって喫煙所は、喫煙仲間で同じシャドードクター(※患者が認識している担当医とは別の医師が、実際の手術を担当することを指して使われる俗称)でもある疋田文男(中川家礼二)からクリニックの暗部を探る意味でも重要な場所だ。
監督によると文を喫煙家の設定にしたことは脚本の池上のこだわりでもあったといい、文のキャラクター造形に重要な意味を持つという。
「前提として、どちらかというとドクターは喫煙を禁じる側だと思うんですけど、中には喫煙家の方もいらっしゃる。文を美容整形に対してだけでなく、世間のいろいろなことにちょっと反逆しているというか、中指を立てているようなキャラクターとし、そんな文が変わっていく、成長していく姿を描いた方が面白いんじゃないかと。特に、文が働く遠山美容外科はクリーンさを売りにしていてもちろん喫煙禁止なので、文の反骨精神も際立つ。なおかつ、喫煙所での疋田とのシャドードクター同士の結びつきを描く狙いもありました」
本作では、そんな文と凜の「コントラスト」を重んじているとあって、二人の人となりはかなり対照的。文は思ったことをそのまま口に出すのに対し、凜は内に秘めるタイプだ。
「文は思ったことをそのまますごいスピードで言ってしまうし、時には叫んだりする。感情の起伏をもろに表に出す人。対して凜は、美のカリスマとして見られているし、クリニックの院長でもあるので、思っていることをぐっとのみこんでいる。ただ、そこが逆転していくところがこのストーリーの面白いところで。後半になればなるほど凜が自身のトラウマ、秘密に触れられたりすることで変わっていく」
文と凜の対比はキャラクターのみならず住まいにも反映されている。
「例えば凜は都会の暮らしというか、六本木でクリニックをやっていて、豊洲あたりのタワマンからポルシェに乗って通勤している。文は同じ東京だけれど実家が下町でスナックを経営している。そんなふうに二人の考え方、行動、家の作り……いろいろなところで対比を作りたいと考えていました。考え方としては、メインの舞台が美容整形クリニックなのでどんなクリニックがいいかなと考え始め、その対比となるように文の設定を決めていき、両者を比べながら逆を行くイメージでキャラクターを作っていきました」
くしくも演じる松岡、仲自身も真逆のタイプの俳優だったといい、「松岡さんは理論的で、しっかりした演技プランがある。台詞を間違えないどころか、なんなら全員のセリフを覚えているくらい入っている。一方の仲さんは感覚的で直感型。段取りよりも、本番でバーンと決めてくれる」と監督は振り返っている。(編集部・石井百合子)



