堀田艦長・田中美央『ゴジラ-0.0』“出オチ覚悟”で台本に冷や汗 シリーズ劇場鑑賞100回越え目指す理由

映画『ゴジラ-1.0』に続き、『ゴジラ-0.0』で再び堀田辰雄を演じた田中美央。前作を劇場のスクリーンで約50回も鑑賞し、エンドロールにある自らの名前に魂を震わせたという、筋金入りのゴジラファンである田中が、あふれんばかりのゴジラ愛と、山崎貴監督の凄絶な挑戦、そして更なる第3弾への切なる渇望を、ユーモアを交えながら語った。(ネタバレ注意。以下、映画の内容に一部触れています)
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まさかの再登板と出オチの恐怖
前作『ゴジラ-1.0』の撮影を終えた直後、山崎監督のもとへあいさつに赴いた田中は、次回作の可能性を尋ねていたという。しかし、山崎監督から帰ってきた答えは「いや、ないです」というものだった。だからこそ、再度“堀田艦長”として続編への出演が決まったときは、喜びと共に「信じられない」という気持ちの方が強かったという。
「『ゴジラ-1.0』の応援上映が終わった直後、事務所から『またやりますよ』と連絡が届いた時、僕は『あ~また応援上映をやるんだな』と呑気に考えていたんです。でもその連絡が、新作映画の決定通知だとわかって絶句しました。前作のクランクアップ直後、もし次があるなら呼んでくださいと頼み込んだら、演出席から『ないです!』と即座に言われたんです。あの時は仕上げの重圧で頭が破裂しそうだったと、後から知りました。次回作の話どころじゃなかったんですよね。完全に諦めていた僕にとって、これ以上の奇跡はありませんでした」
「実際、どんな話になっているんだろう」と恐る恐る台本を開いた田中は、冒頭で派手に散る役回りになるのではないかと、悲観的な想像を膨らませていたという。
「イベントの壇上で調子に乗って『次は(『ゴジラ』シリーズに登場する宇宙人の)X星人として呼んでください』なんて冗談を飛ばしていたので、台本をめくってもなかなか自分の名が出てこない間は冷や汗が止まりませんでした。てっきり、最初に船ごと襲撃されて海の底へ沈み、次の場面では遺影でチーンと退場させられる……そんな出オチ要員になる覚悟を本気でしていたんです(笑)。でも蓋を開けてみたら生還して戦っていたので、ホッとしました。
いきなりラスボス投入の驚きと号泣の理由
「出オチ」ではないことがわかった田中だが、次に衝撃を受けたのが、シリーズ屈指の破壊神の名だった。一人の熱狂的な怪獣少年として育ってきた田中にとって、中途半端な敵ではなく、いきなり究極の脅威が送り込まれてきたことへの戦慄は計り知れないものがあった。
「もちろん、何も聞かされてはいませんでしたが、自分のなかでは勝手に、(続編では)ゴジラに相対する敵が出てくるのかなと思っていたんです。でも、まさかキングギドラが登場するとは。いきなりラスボスをぶち込んできたので叫びそうになりました。今度こそ全てを終わらせる気迫を感じ圧倒されました。そして、子供の頃に部屋にプラモデルを飾って眺めていたあのキングギドラが、遊園地のアトラクションで体験したように地を這う凶悪さで迫ってくる情景が、台本を読んだだけで脳裏にありありと浮かび上がり興奮しました」
撮影現場では、前作で新宿・歌舞伎町の巨大モニュメント“ゴジラヘッド”を見上げて覚えたスケール感を遥かに凌駕する首の高さに翻弄されながらも、演出陣の覚悟に魂を揺さぶられた。完成した試写を観終えた後、ほほを濡らし続けた田中は、作品がはらむあまりの切なさに打ちのめされたと明かす。
「試写室から出ても顔中がだくだくの涙でぐしゃぐしゃになっていました。共演した吉岡秀隆さんから『なんでそんなに泣いているの?』と心配されたほどでした。ゴジラが背負う悲劇的な誕生の宿命やテーマにここまで真っ向から踏み込んだ作品は過去にありません。批判を受ける矢面に立つことを恐れず、絵空事ではない映像として世に放った山崎監督の度量の大きさには、頭が下がるどころか、一生ついていきたいと猛烈に思わされました」
50回劇場に通い詰めた思い
この“マイナスシリーズ”に対する田中の愛情は並大抵のものではなく、前作『ゴジラ-1.0』が封切られた際、映画館へと足を運んだ回数は、実に50回ほどに達したという。その行動の裏には、少年時代に抱いた映画への純粋な憧れがあった。
「お小遣いを握りしめて映画館に通っていた頃、(当時の劇場チケット代の)1,000円分を骨の髄まで味わい尽くそうと、最後の最後まで目を凝らして黒い背景を眺めていたんです。大人になった今、あの場所に自分の名が堂々と流れてくる。それも愛してやまない『ゴジラ』映画。幻覚ではないと証明したくて、50回も劇場の暗闇へ通い詰めました。それくらい、エンドロールに自分が名を連ねている事実は、僕にとって奇跡そのものなんです」
公園で怪獣や仮面ライダーになりきり駆け回っていたというかつての少年は、いつしか表現の道へと進み、やがて迷いの中に沈んでいった。40代を迎え、表現者としてのアイデンティティを見失いかけていた田中を救い出したのは、幼き日の情熱そのものだった。
「年齢を重ねるにつれて、気取って高尚な芸術作品を観たり、自分は何のために役者をやっているのかと苦悩したりして、大切な原点を忘れかけていました。50歳を手前にしてこの『ゴジラ』に出会い、怪獣が好きで走り回っていたあの“無敵の感覚”を思い出させてもらった。この現場こそが、僕の表現者人生を再起動させてくれたゼロポイントなんです。大げさではなく、僕の俳優人生を変えてくれた作品でした」
応援上映にも引っ張りだこ!熱望する「第3弾」
堀田艦長という愛すべきキャラクターは、いまやファンにとって欠かせない。『ゴジラ-1.0』の応援上映では、堀田艦長が力強く発する「海神(わだつみ)作戦を開始する!」「衝撃に備えよ!」の号令で館内は大いに盛り上がる。ついには出演していない作品の応援上映にまでゲストとして招かれるという事態まで巻き起こした。自らの歩みを振り返りながら、田中はシリーズの未来へ熱い視線を投げかける。
「僕のWikipediaには『応援上映』(※実際には舞台挨拶)という項目が勝手に作られていて、もはや一つの芸としてどんな映画館へも駆けつける覚悟ができています。でも、一番叫びたいのはやっぱり『ゴジラ』の世界です。試写の直後、山崎監督が『厳しい声が出たら、次にもっと凄いものを作ればいい』と言ったのを聞いて、この人の底知れなさに震えました。だからこそ、第3弾もやってほしいんです」
もし新たな物語がつむがれるなら、次こそはオープニングの数分で海の藻屑と消える役回りでも本望だと笑い飛ばす田中。しかしその眼差しは、再び巨大な脅威が現れる瞬間を、誰よりも熱く待ち望んでいるようだ。
「次こそ冒頭で船ごと沈められて遺影になるかもしれませんが、それでも構いません。ファンの皆さんが愛し続けてくれる限り、この航海はどこまでも続いていくはずです。客席から、そしてスクリーンの甲板から、僕はこれからも全身全霊で怪獣たちを愛し、叫び続けます」
『ゴジラ-0.0』も50回以上鑑賞するのかと問うと、「もちろんそのつもりです」と語った田中。いまや人気俳優として「そこまで鑑賞する時間がないのでは?」とも思われるが、大好きな『ゴジラ』作品に、自身の名前が刻まれている奇跡に「何度観ても慣れることはありません」としみじみ。今作の公開中には、前人未到の「劇場100回鑑賞」も現実味を帯びてきた。「その時はイベントでも」と振ると田中は「いいですね。お願いします」と満面の笑顔で語っていた。(取材・文:磯部正和)



