『ゴジラ-0.0』音チームが掲げた「憂いを断つ」の真意とは 音響・井上奈津子氏が語る怪獣映画の醍醐味

音響にも注目『ゴジラ-0.0』
音響にも注目『ゴジラ-0.0』 - (C) 2026 TOHO

 映画『ゴジラ-0.0』(全国公開中)で観客を衝撃に包み込む音響を手掛けた井上奈津子氏が、世界的成功を収めた前作『ゴジラ-1.0』を受けて挑んだ続編のプレッシャーと音響チームがぶち当たった壁を振り返った。

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 日本だけでなくアメリカでもヒットし、アジア初のアカデミー賞視覚効果賞を受賞するなど大成功に終わった『ゴジラ-1.0』。世界的な高評価を得ただけに、チームにすさまじいプレッシャーがかかっていたことは想像に難くない。井上氏も「音響だけでなく、どの部署にもプレッシャーがあったと思います。意識しないようにしても、前作よりいいものにしようという思いはどうしても生まれてくると思います」と振り返る。

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ダビングルームに貼られていた「憂いを断つ」

 そんなチームの心情を反映するかのように、音を仕上げるダビングルームに貼られていた標語が「憂いを断つ」という言葉。これは山崎貴監督ではなく、音響チームが自主的に貼ったものだ。一見、過去に後悔が残っているかのようにも受け取れる言葉だが、その真意は、気負いを捨てて目の前の作品に全力を注ぐという決意表明だった。実は、音を作る初期段階で、チームは大きな壁にぶつかっていたという。

 「音のチームだけで作業していた途中段階で、一度今まで作業した部分をみんなで確認してみようとなりました。その音を聞いた時にその場の全員が作品の方向性が定まっていないと感じることがあったんです。そこで最初からミックスを全部やり直そうということになって」

 積み上げた作業を全て捨ててやり直す、気の遠くなる作業。幸いにも音響調整の期間が十分に確保されていたため、チームは一度立ち止まり、作品と一から向き直す決断を下した。そのおかげで、確かな目標が見えたという。「“前作よりいいものにしてやる”みたいな気持ちが先立って、作品の本質を見失っていたんですね。全員ものすごく肩に力が入っていた」

井上奈津子氏

 「『前作を超える』という私たちの思いを背負わせるのではなくて、新しく『ゴジラ-0.0』という作品に向き合おうと。だから『憂いを断つ』なんです。決して、前作でやり残したことがあるとかそういう意味ではないです(笑)。結果としてものすごく良いミックスになったので、私たちの中ですごくすごく大事な瞬間でした」

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 なお、山崎監督自身はこの言葉について「僕は全く憂いはなかった」と明かしており「『1を超えなきゃ』みたいなことが目標になってしまうと良くない。それよりも、『また面白い映画を作る』ということだけを見ていこうと思っていました」と語っている。奇しくも、一度立ち止まったことで、音響チームも山崎監督と同じ思いを共有することになったようだ。

 数々の葛藤や大胆な試行錯誤を経て、本作を完成に導いた井上氏。本作は『ゴジラ-1.0』に続いて、自身にとって2本目のゴジラ映画となった。そのうえで、怪獣映画には「映画の魅力が全て詰まっている」と語る。

 「怪獣が出てきて、しっかりとした人間ドラマもある。映画の美味しいところが全部詰まった娯楽が怪獣映画だと思います。そのなかでも『ゴジラ』の音をつけられるなんて、最高に幸せだなって思うので、一連の作業が終わってしまうと寂しいです。観客の皆さんには、ぜひ今回のチームが作った“音の渦”に巻き込まれて、とにかく楽しんで観ていただきたいです」(編集部・入倉功一)

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