第18回:『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ハウ・トゥー・トレイン・ユア・ドラゴン2(原題) / How to Train Your Dragon 2』『ザ・フォールト・イン・アワー・スターズ(原題) / The Fault in our Stars』
最新!全米HOTムービー
世界の映画産業の中心、アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新!全米HOTムービー」。今回は、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』 『ハウ・トゥー・トレイン・ユア・ドラゴン2(原題) / How to Train Your Dragon 2』 『ザ・フォールト・イン・アワー・スターズ(原題) / The Fault in our Stars』を紹介します!(取材・文:明美・トスト / Akemi Tosto)
■『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
この映画の原作が日本のライトノベルであるという事実は、アメリカではそれほど大々的に報じられておらず、「どうやら、映画『恋はデジャ・ブ』のSF版みたいな作品」などといううわさがささやかれていたのだが、実際に映画を見始めてみると、そんなチャチな予想は大きく覆される。
タイムループにはまってしまったことから、心ならずも人類を救う使命を担うことになる主人公2人は、アクション映画にありがちな薄っぺらいキャラではなく、感情移入が容易にできるヒーローたちだ。エリートだが実戦経験ゼロのケイジ少佐を演じるトム・クルーズは、突如前線に放り込まれてダメ兵士ぶりを披露するが、やがて無数の死を経て果敢なヒーローへと変わっていく主人公を魅力的に演じている。そして男も顔負けの特殊部隊兵リタを演じるエミリー・ブラントのカッコよさ! だが、そのクールな中にも女性らしさを感じさせるところが、エミリーの魅力である。
また、秀作アクション映画には不可欠なのが悪者たち。人間たちを容赦なくいたぶり続け人類抹殺をたくらむエイリアンたちの様相は、まさに悪の権化。その醜悪さと極悪非道ぶりには思わず拍手を送りたくなるほどだ。ビジュアルのおいしさと、ウイットに富んだ脚本がそろっている本作は、さまざまな全米映画批評サイトで高得点を得ており、この夏一番のおすすめ作品といっても過言ではない。
■『ハウ・トゥー・トレイン・ユア・ドラゴン2(原題) / How to Train Your Dragon 2』
『ハウ・トゥー・トレイン・ユア・ドラゴン2(原題) / How to Train Your Dragon 2』作品情報
2010年に大ヒットを記録した『ヒックとドラゴン』の続編で、前作に続き『リロ&スティッチ』でセレブ監督となったディーン・デュボアがメガホンを取っている。ドラゴンたちと村の間に平和が訪れ5年が経過しても、自由奔放なヒックの性格は相変わらず。冒険先の謎の島で、悪者ドラゴがドラゴンたちによる軍を作ろうとしていることを知ったヒックは、父親に警告。そして、なんとかドラゴの良心に訴えようと、ヒックは勝手にドラゴンのトゥースと飛び立つが、途中でドラゴンを自由自在に操る謎の人物に捕らえられてしまう。やがてその人物が死んだはずの母親だとわかったとき、ヒックの世界が大きく変わり始める。
この続編では、前作にも増してカラフルでユーモラスなドラゴンたちの活躍と、今回もハートにグッとくるストーリー展開が見もの。なかなか大人になりきれず、自分は父親の跡を継ぐ器ではないと決め付ける主人公ヒックが、物語の中でどう変化していくかに焦点を絞っており、子供はもちろん大人も十二分に楽しめる作品となっている。
■『ザ・フォールト・イン・アワー・スターズ(原題) / The Fault in our Stars』
『ザ・フォールト・イン・アワー・スターズ(原題) / The Fault in our Stars』作品情報
本作は、全米ベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」が原作。悲恋映画といえば、だいたい成り行きが想像できてしまって多少冷めた気分で見始めるのだが、不治の病を抱えた若いカップルの物語であるため、本作が中盤に差し掛かる頃には大いに涙し、最後には腫れた目で映画館から出てくるという羽目に陥ってしまうからコワい(笑)。その大きな理由の一つは、本作でヒロインのヘイゼルを演じているシェイリーン・ウッドリー。映画『ファミリー・ツリー』で、ジョージ・クルーニーの長女を演じたときもそうだったが、彼女が演じる悲しみや憤りは、スクリーンという垣根を飛び越えて観ている者の心をつかみ、胸を締め付けてくる。
そんなシェイリーンの演技を支える新星アンセル・エルゴートも要チェック。本作で逆境にめげずヘイゼルを果敢に愛し続けるガスを演じるアンセルは、映画『ダイバージェント』でもシェイリーンと共演しており、彼女とのケミストリーは最高。穏やかハンサム系の顔立ちも日本の女性ファンにウケそうだ。ひと昔前、同じく不治の病物で『ある愛の詩』(1970)という映画があったが、非常に単純な悲恋物だったにもかかわらず世界中で大ヒットを記録し、今日まで語り草となっている。本作も新世代の『ある愛の詩』になるやもしれぬ勢いで、現在アメリカのボックスオフィスを席巻しており、日本でも大ヒットになる可能性大である。
【今月のHOTライター】
■明美・トスト / Akemi Tosto
高校よりロサンゼルス在住、CMや映画の製作助手を経て現在に至る。全米映画協会(MPAA)公認ライターとしてだけでなく、監督としても活躍中。短編作品『ボクが人間だったとき/When I Was a Human』がアカデミー賞公認配給会社ショーツ・インターナショナルより配給され、iTunesとAmazonで日本版発売中。ツイッターもよろしく!→@akemi_k_tosto