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新鋭クリエイターたちの虎の穴!?エル・フェスティバル:アニメーション・ビデオゲーム・コミック(メキシコ)【第44回】

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野外上映
アステカの征服者エルナン・コルテスが建てたコルテス宮殿をバックに行われる野外上映。コミックス・ウェーブ・フィルムの角南一城氏は、『言の葉の庭』がココで上映された写真を見て、雰囲気の良さに興味を持ち今回の参加を決めたという。

 アニメ『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』(2015)の舞台のモデルとなったメキシコ・クエルナバカ。ここでは2012年から「エル・フェスティバル:アニメーション・ビデオゲーム・コミック」が開催されている。2015年で3回目ながら、早くも同国の若きクリエイターたちのプラットホームとなっているようだ。その第3回(2015年9月9日~13日)を一般社団法人日本映画製作者連盟・国際担当の菅原明美さんがリポートします。(取材・文:中山治美 写真:菅原明美、 エル・フェスティバル:アニメーション・ビデオゲーム・コミック)

エル・フェスティバル:アニメーション・ビデオゲーム・コミック公式HP

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クリエイター集団が主催

お絵かき
会場内に設置された落書きコーナー。クリエイターの集まりだけあって、うまい!

 主催は、メキシコのアニメやデザイナーなど各スペシャリストが集まり、マルチメディア制作やコンテンツ開発などを行うプロジェクト「Pixelatl」。メキシコのクリエイターと世界レベルで活躍する企業やアーティストたちの交流&人材育成の場となることを目指して、2012年に創設。第2回は2014年、第3回は2015年に開催され、地元モレロス州の文化局の協力はもちろん、日本の文化庁メディア芸術祭と提携して受賞作品を上映したり、国際交流基金の協賛を得るなど体制は盤石のようだ。

パーティー
会期中はカクテルパーティーなども盛んに行われる。

 フェスティバルの柱は、スクリーンズ(長短アニメーション)、フォーラム(マスタークラスやワークショップなど)、タイズ(各種パーティーなど)、IDEATOONサミット(企画プレゼンテーション)の4つ。第3回のスクリーンズ部門では、『映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』(2015)、『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』(2015)と並んで、新海誠監督『星を追う子ども』(2011)が上映。ほか、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭に選出された話題作の特集上映もあった。

 菅原さんはメキシコ滞在経験があり、その人脈と語学力を生かしたスペイン語圏の映画関係者との交流も深い。その中で本映画祭のディレクター、ホセ・イニェスタと出会い、宮崎駿監督に続く次世代のアニメーション作家として、第2回に新海誠監督『言の葉の庭』(2013)を紹介したことがきっかけでフェスティバルをサポートすることになった。第3回も『星を追う子ども』出品の橋渡しを担った。

ホテル
企画マーケットで賑わうメインホテル「ラスマニャータス」の中庭。熱気が伝わってくるようだ。

 「メイン会場は五つ星ホテルのラスマニャータス。テラス付きの部屋に滞在し、そこに世界のトップクリエイターたちが集まってくるわけです。そのゆったりとした時間の中で、上映のみならずネットワーク作りに重点を置いたフェスティバルは、そうないと思います。フェスティバルがこれだけ用意をしてくれるのですから、それを生かすも殺すも参加者本人次第だと思います」(菅原さん)。

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ファン垂涎ものの豪華ゲスト

角南さん
セミナー後、出席者に囲まれてサイン攻めに遭ったコミックス・ウェーブ・フィルムの角南一城氏。

 フェスティバルの目玉は、“スピーカーズ”と称されるフォーラムなどの招待ゲストたち。第3回は『カンフー・パンダ』(2008)のマーク・オズボーン監督や、米国のストップモーション・アニメーターで、映画『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』(1983)では米アカデミー賞特別業績賞(視覚効果)を受賞したフィル・ティペット。日本からもゲーム「悪魔城ドラキュラ」と「幻想水滸伝」シリーズの音楽で知られるゲーム音楽作曲家・山根ミチルさんと、『星を追う子ども』の製作会社コミックス・ウェーブ・フィルムの取締役・プロデューサーの角南一城氏が現地入りした。

星
「スクリーンズ」部門で上映された新海誠監督『星を追う子ども』。今回、新海監督は新作『君の名は。』(8月公開)の製作中だった為、現地入り出来ず。(c)Makoto Shinkai/CMMMY

 「渡航前は日本のアニメファンが多いのかな? と想像していたのですが、いざ会場へ入ると、アニメーションやゲーム制作に携わる若いクリエイターや美術学校の生徒たちが。登壇したセミナーでは急遽、話す内容を変えて、コミックス・ウェーブ・フィルムのスタジオと、作品制作の流れを、『星を追う子ども』の素材やメイキングを提示しながら紹介しました。またYouTubeチャンネル Anime Bancho を運営しているので、“YouTubeに最適なアニメーションの作り方”についても話をさせて頂きました。皆さん、非常に熱心に聞いて下さり、質疑応答も多かったですね。中には『面白いストーリーの書き方の秘訣があったら教えて下さい』というものも。『そんな秘訣があるなら、私が知りたいです』と答えましたが(笑)」(角南氏)。

企画ピッチ
アニメのイメージコンテを見せながら角南さんにアドバイスをもらっているメキシコのクリエイター。皆、真剣だ。

 また角南氏は、アニメーションの企画ピッチコンテスト「IDEATOON」の審査員も務めたという。「皆さん、オリジナル企画を面白おかしくプレゼンテーションしてくれて、逆にこちらの方が刺激を受けました。その企画の多くで、メキシコ伝説の幼獣チュパカブラ(家畜を襲うという吸血未確認生物)がキャラクターに選ばれていたのも印象的でした。メキシコのアニメーション制作スタジオは作り手も20歳代の方が多く、オリジナル作品が出てくるのはまだ先だと思いますが、非常に熱意に溢れていました」(角南氏)。

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リゾート&世界遺産も!

モレロス
上映会場の一つシネ・モレロスは16世紀に建築された趣ある建物。元知事の邸宅だったらしい。

 モレロス州の州都クエルナバカは、メキシコシティから車で約40分の距離にあり、年間を通して気候も温暖な避暑地。“常春の町”というニックネームを持つほどだ。また世界遺産に登録されている「ポポカテペトル山腹の16世紀初頭の修道院群」の一つである「クエルナバカのフランシス会修道院と大聖堂」などの歴史的建造物も多く、観光客の人気も高い。菅原さんは今回、アメリカン航空を利用して成田空港から米国・ダラスを経由してメキシコシティへ。航空運賃は自費だが、現地ホテルは映画祭側の招待だ。「映画祭終了翌日は、映画祭スタッフに近場の村まで連れて行ってもらい、美味しいメキシコ料理も堪能しました。ただしクエルナバカの治安は非常に良いのですが、経由地のメキシコシティは大都市ですのでそれなりに用心して下さい」(菅原さん)。

ジャパン・カルチャー浸透中

ワークショップ
コミックのワークショップ・ブース。お馴染みのキャラクターたちが!

 米国映画協会(MPAA)が発表した2014年国・地域別映画興行収入ランキング(北米を除く)によると、メキシコは世界10位(日本は中国に次いで2位)。他国同様、ハリウッド映画が席巻している。

コミック
フェスティバルに参加したメキシコのコミックたち。日本で紹介される日は来るか!?

 「メキシコにはCineteca Nacional MEXICOという国立フィルムセンターがあり、是枝裕和監督や園子温監督らの日本映画が上映されることはありますが、シネコンでの日本映画の興行となると、イベント上映のみというのが現状です。一方、日本のアニメ・コミック・ゲームの浸透度はメキシコでも非常に高いです」(菅原さん)。

グッズ
星座のイラストが描かれたカタログに、スポンサー企業から地元の蒸留酒「メスカル・コチュ」のフェスティバル・オリジナルラベルと、メキシコブランド「PANAM(パナム)」のスニーカーも! 菅原さんはスニーカーのサイズが合わず、残念ながら他の人にあげてしまったという。

 コミックス・ウェーブ・フィルムの角南氏によると、『星を追う子ども』はフランスの配給会社経由で中南米でも配給され、同じく新海監督の『秒速5センチメートル』(2007)は、2015年1月にメキシコの劇場50館で限定公開されたという。「中南米からの問い合わせは増えていますが、中でもメキシコはここ1、2年、急増しています。今後セールスが増え、私たちの作品を見て頂ける地域だと思っています」(角南氏)。

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