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少年以外全部CG!『ジャングル・ブック』映像で振り返る驚異の裏側!(4/4)

■技術的な最難関はモーグリとクマの水上シーン!

 そんな彼らが、技術的に最も苦労したと口をそろえるのは、スピーディーなアクションシーンではなく、お腹にモーグリを乗せたバルーが川を流れていく「レイジー・リバー」(ゆったりと流れる川)と呼ばれるシーンだった。

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これが問題のシーン。一見のどかなだけだが……。(C) 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

「バルーというアニメ化されたキャラクターがいて、流れる水のシミュレーションもあり、水につかったバルーの毛も影響するし、実写のモーグリがバルーの上に座っていてその周囲の環境はもちろんCG。後からはめ込んでいくものがあまりにも多かったのでとても難しかった。リサーチもかなりしました。例えばシロクマが泳いでいる映像を参考にしたり。彼らはよくあのシーンのバルーのように背泳ぎをするんです」(ベン)

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 問題のカットは予告編にも登場する一見のどかなシーンだが、現実に存在しないバルーが浮かぶ水面の描写だけでも複雑なシミュレーションが必要。バルーの毛は水に浸かった部分と浸かっていない部分で動きが異なり、おなかには実写のモーグリが乗っている。モーグリの足は水に浸かっているため、違和感をなくすためには、彼の足だけをCGで描かなくてはならなかった。

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現場の様子はこんなにも殺風景! MPCの技術力に舌を巻く。(C) 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

「自分がかかわったシーンなので少しひいき目に見ている部分はあるかもしれません。しかし、それでもこのシーンは大きなチャレンジだったと言えます。水というのはどんな状況であれ、CGで描くのは難しいものです。バルーとモーグリ、彼の毛、水を組み合わせるには複雑なシミュレーションが必要だった。簡単なことではなかったので、あのシーンの出来映えに達成感を感じていますね。僕にとって、最も満足感を味わえたショットです」(エリオット)

■セットで撮る映画製作に革命を起こす『ジャングル・ブック』

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映画の歴史は変わるのか? (C) 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 本格的なセットで映画を作る時代の終わりを告げるような『ジャングル・ブック』だが、アナログ技術との併用は絶対に欠かせないものだった。例えばモーグリが背丈以上の草むらをかき分けて走るカットでは、モーグリが触れる草をCGで表現するのは難しく、セットには本物の草が用意された。

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(C) 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 エリオットは「『ジャングル・ブック』では、CGの正しい使い方を見せることができたと思います。実際の動物に言葉を話してもらうことはできないし、ジャングルに生えている木だって実際の環境よりも巨大なんです。そんなロケ地を探すのも、こんな環境をセットで作れるサウンドステージを探すのも容易ではないですからね」と語る一方で、「草に体が触れた場合、モーグリの顔に影ができますが、それを完全にCGで表現することはできないんです。ほかにも、モーグリがココナツのようなカップを水場に投げ、ひもでたぐり寄せて飲むというカットがあるのですが、これもフルCGではできません。そのようにどうしても必要な場面では、アナログの要素が必要でした」と認める。

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オシャレなMPCのカフェスペース。何人ものアーティストが談笑を交わす。

「僕は、素晴らしいセットがまずあって、そこに素晴らしいビジュアルエフェクトが加わることが一番だと感じるんです。そのどちらか1つを完全に失ってしまうというのは良くないことですね。2つの良い所取りをするのが最も賢い選択でしょう」(ベン)

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(C) 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 特筆すべきは、延べ800人ものアーティストが本作に携わったという事実だろう。加えてアニメーション部門では105人のアニメーターがプロダクションに関与。何よりもアナログといえる、人の手がなくては驚異の映像は完成し得なかった。

「もちろんアーティストとしてこれが最終点とは思っていません。作品に深く携わるうちに、もっと改善できるのではないかという感覚が生まれますからね。一つの製作会社として、映画を製作する度に何か新しいことを学び、次の映画に役立てていくわけです。似たような作品を任されたら、今回やった以上に素晴らしいものになると思いたいですよね」(エリオット)

 CGをふんだんに使用した映画はドラマがおろそかだというイメージが先行する中、『ジャングル・ブック』は一人の少年の成長を追った物語に観客が没入するための手助けをしてくれる一本であり、映画におけるCGのイメージを180度変える歴史的な一本になるはずだ。

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