少年以外全部CG！『ジャングル・ブック』映像で振り返る驚異の裏側！（3/4）
■CGの動物たちに命を吹き込む！
『ジャングル・ブック』に登場するCGとは思えない動物たちは、種類だけで54。実際に動く動物はその数倍にもなる。これらのキャラクターの見た目や動き、骨格や筋肉のシミュレーション、皮膚や毛の動きの構築を統括したのが、キャラクター・スーパーバイザーのベン・ジョーンズだ。彼はCGで描かれたライオンの描写が称賛された『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』に携わった人物でもある。
「『ジャングル・ブック』でやったことのほとんどは、『ナルニア』のころはできなかったでしょう。動物にしたって、それぞれのキャラクターに約1,000万本の毛を生やしている。数年前には、2つのキャラクターを同じショットに入れることさえできなかったんですから」と語るベン。中でも実写同然でありながら豊かな動物たちの表情には苦労したという。
「例えばオオカミのラクシャは、犬科の動物がそうであるように、微細な表情でしか感情を表現しません。少ない表情の変化の中から、正しいと思える表情を見つけ出さなければいけなかったんです」（ベン）
用意された表情のパターンは動物1体につき80～100通り。それは、複雑な工程を経た後にアニメーターたちが最終的な動きをつけていく。CGを扱う技術的な知識だけでなく、芸術的なアプローチも要求される高度な作業となる。「僕はこの業界に入りたいという人に、いつも『数学とアート、両方をやれ』と言うんです。テクノロジーを使ってアートを作っていくわけだから、どちらも理解しなければならない。それこそ、僕がこの仕事で一番気に入っている部分なんですよ」（ベン）
■世話の焼ける動物って誰のこと？
実際に動物を動かすアニメーション・スーパーバイザーを務めたペタ・ベイリーは、マーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のしゃべるアライグマ、ロケット・ラクーンを手掛けたこともある人物だ。
「ロケットはファンタジー世界の住人なので、自由に動かすことができました。より人間的で、実際にはできないようなアクションも可能です。しかし『ジャングル・ブック』では、人間の言葉を話すという部分以外、本物の動物が可能なアクション以外はさせないようにしました。監督は、本物の子供が彼らと同じ世界にいると観客に信じてもらいたかったのです」（ペタ）
本物の動物を生み出すため制作チームは、ドキュメンタリー映画、テレビ、YouTubeなどあらゆるメディアで動物のアクションをリサーチ。専門家にもアドバイスを求めた。「専門家の方々には、特にオオカミやトラの感情を理解する手助けをしてもらいました。動物園などで実際の生き物を見たメンバーもいましたね。徹底したリサーチなしにこの手の作品を手掛けることはできません」（ペタ）
そんな彼女が最も気に入っている動物はクマのバルー。「彼は動物たちの中でも一番表情が豊かで、少しだけ人間らしくしました。（声を担当した）ビル・マーレイの演技や声を参考にしています。動かすうえで、一番自由を与えられたキャラクターだったんです」（ペタ）
またベン・ジョーンズも「アクションと違って、キャラクターの性格は実際の動物とは違います。それでもトラのシア・カーンのような攻撃的なキャラであれば、実際の動物の動きと性格をうまく組み合わせることができますよね。でもバルーはとても難しかった。いつもハッピーなクマなんて現実にはいませんからね」と証言する。「でも僕のお気に入りはバギーラなんです。実は本作で僕たちが最初に作ったキャラクターは彼でした。この映画はまさに彼から始まったので、一番好きなんです」（ベン）
