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小泉なつみ×きくちあつこ「ファッションと映画 ‐映画はオシャレが9割!‐」#6

 オシャレな映画しか、観たくない! かわいくなくちゃ、ヒロインじゃない! ファッションを愛してやまないあなたのために、キュートでスタイリッシュな映画だけをセレクトします。小泉なつみさんのエッセイ&きくちあつこさんのイラストで、オシャレ映画のエッセンスを盗んでしまいましょ!(presented by U-NEXT×シネマトゥデイ/文:小泉なつみ/イラスト:きくちあつこ)

【Theme #6:“己(おのれ)”があるスタイル】

“己(おのれ)”があるスタイル
illustration by:きくちあつこ / oookickooo

“己(おのれ)”があるスタイル

 小さい頃、両親が宅配ピザをとってくれることがありました。その時、決まって子どもたちのピザとして分け与えられたのは「ハワイアンデライト」。これはハムとパイナップルのピザでして、正直、その甘じょっぱい味わいがずっと理解できずにいました。

 しかし今では酢豚のパイナップルも、冷麺に浮かぶりんごも、生ハム×メロンも大好物。さらに最近“組み合わせ”という点で驚愕したのが、ちまたで話題の「桃モッツァレラ」です。切った桃と適当にちぎったモッツァレラの上に、塩とこしょうをぱらり。さらに白ワインビネガーとオリーブオイルをたらりと落とし、レモンの皮をジャジャっと削ったら完成というシンプルな一品。

 どの材料も知らないわけじゃないけれど、レモンは唐揚げに使用するものであり、桃はデザートであり、モッツァレラはトマトと食べるものだった。そんな風に知らず知らずのうちに食材の用途を限定し、想像力を放棄していた自分に、「桃モッツァレラ」が平手打ちをかましてくれたのであります。どんな味かはぜひ試していただきたいですが、ジューシーな桃の甘みとモッツァレラのミルク感、ビターなレモンピールなど、すべての食材の持ち味が生かされつつ、見事に調和した奇跡的な一品であります。

 この話はお洋服にも通じるところがありまして。想像力の欠如や己のスタイルに迷いが生じた時、はたまた二日酔いの日などは、ボーダーにジーパンというアンパイ・コーディネートで押し通しがち。そんな時こそ、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のマーゴや『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のイヴから刺激を得たいものです。

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年製作)

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『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
(C) Touchstone Pictures

監督:ウェス・アンダーソン
出演:ジーン・ハックマンアンジェリカ・ヒューストンベン・スティラーほか

 マーゴは常にラコステのボーダーワンピ×毛皮コートですが、ラグジュアリーな毛皮にカジュアルなラコステを持ってくるのが憎い。マーゴの兄も背広にFILAのジャージをインしていて、思わずメモ。テネンバウム兄妹は、スポーツMIX上手であります。

 そして『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のイヴも、外しの達人。

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』(2014年製作)

監督:スチュアート・マードック
出演:エミリー・ブラウニングオリー・アレクサンデルハンナ・マリーほか

 特に心惹かれたのは、ヒョウ柄のワンピースにオッサンがスーツに合わせて履くような革靴をコーディネートしたスタイル。さらにここへ山高帽をONしているのですが、決してトゥーマッチではなく、“己流のオシャレ”になっているんであります。

 そして『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』も、“己”という個性が持つ美しさを教えてくれる1本。

ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』(2011年製作)

監督:リサ・インモルディーノ・ヴリーランド
出演:ダイアナ・ヴリーランドほか

 稀代の天才編集者、ダイアナ・ヴリーランドにかかれば、バーブラ・ストライサンドのデカ鼻も、アンジェリカ・ヒューストンのド迫力ボディ&フェイスも、欠点ではなく個性。ファッションや人物のみならず、動物や自然など、ありとあらゆる対象物からインスパイアを得ようとする柔軟で開かれた感性が、ダイアナの“己流”を形作っているのかもしれません。

 日本では劇場未公開の『ドリスの恋愛妄想適齢期』も、激しくオススメの1作。

『ドリスの恋愛妄想適齢期』(2015年製作)
監督:マイケル・ショウォルター
出演:サリー・フィールドマックス・グリーンフィールドベス・ベアーズほか

サリー・フィールド
ドリスを演じたサリー・フィールド (C)Kevin Winter / Getty Images

 ヒロインのドリスは60オーバーながら、ボタンを繋げたネックレスや蛍光色のジャンプスーツを着こなし、「君はオリジナルだ」と若者たちから称賛を浴びていました。そんなドリスは普段から「モッタイナイ」のワンガリ・マータイさん風にターバンを巻き、柄×柄のコーデを貫いていて、彼女にしかできないオシャレがしっかりと息づいているのであります。

 「桃モッツァレラ」しかり、ドリスのコーディネートしかり、人の心をハッとさせるものには、想像を超えるオリジナリティーがあります。周囲から浮かないことにおいてボーダーは安心ですが、そこに“己”を感じさせる何かがあれば、もっとお洋服は楽しい。

 オシャレの秋ですし、お互い、ちょっぴり冒険してみませんか。私もこの原稿が書き終わったら、ダルダルのユニクロTシャツを脱いで出かけたいと思います。

Inspired by:Fasion Movie #6『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』
illustration by:きくちあつこ / oookickooo
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プロフィール

小泉なつみ Natsumi Koizumi
http://natsumikoizumi.com/
ライター/編集者。「日経ウーマンオンライン」などで執筆。恋愛、結婚、セックス、ファッション……etc、切実でいてすぐ忘れるような女子ネタ全般が好き。

きくちあつこ Atsuko Kikuchi
https://www.instagram.com/oookickooo/
京都在住illustrator。 著書「FASHION SKETCH BOOK」「TODAY'S DIARY BOOK」が宝島社より発売中。Instagram&Twitterともにアカウントはoookickoooです。

≫「ファッションと映画 ‐映画はオシャレが9割!」#1‐#4はこちらから

≫「ファッションと映画 ‐映画はオシャレが9割!」#5はこちらから

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