ADVERTISEMENT

映画ONE PIECE、キャラクターの魅力~ルフィの変化編

ワンピース
最新作『劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』』より - (C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 原作の連載が始まって22年、テレビアニメが始まってちょうど20年。まさに国民的コンテンツとなった「ONE PIECE」の魅力はさまざまあるが、主人公のモンキー・D・ルフィをはじめとする「麦わらの一味」のキャラクターを真っ先に挙げる人も少なくないだろう。今回は2000年から始まった劇場版『ONE PIECE』において、キャラたちの性格や戦闘スタイルがどのような変化をたどっていったかを振り返ってみたい。(大山くまお)

すさまじいエネルギーを生み出すルフィの「怒り」

ワンピース
楽しそうなルフィ- (C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 まずはご存知、海賊「麦わらの一味」の船長、モンキー・D・ルフィ(田中真弓)。夢は「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を見つけて海賊王になること。「ゴムゴムの実」の能力者である。

 劇場版第1作『ONE PIECE ワンピース』(2000)ではまだ少年らしさが目立つが、仲間を大切にする気持ちや自分が信じたことを貫き通すキャラクターはすでに出来上がっていた。エルドラゴ(内海賢二)が地面に落として土足で踏みにじった、黄金の大海賊ウーナン(野沢那智)のために岩蔵(青野武)が精魂込めて作ったおでんを手でさらって食べる場面は、誰かが大切にしているものを誰も無下にすることはできない、というルフィの考え方を表している。

 ルフィの戦いにおいて重要なのは「怒り」の要素だ。『ONE PIECE ねじまき島の冒険』(2001)では、トランプ海賊団のベアキング(玄田哲章)に苦戦するも、泥棒の少年アキース(矢島晶子)のことを「バカで哀れなガキ」と嘲弄(ちょうろう)したことに激昂。『ONE PIECE 珍獣島のチョッパー王国』(2002)では、王冠島の少年モバンビー(折笠愛)を助けに来た珍獣たちを侮辱したバトラー伯爵(江原正士)に激怒している。『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』(2003)では、海賊を嫌っているのに海賊を名乗るガスパーデ(石田太郎)を最初から「クズ」と侮蔑しており、戦いの際も「仲間」という概念そのものを否定する敵に怒りをたぎらせていた。

ADVERTISEMENT
ワンピース
(C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 苦戦していても、こうした「怒り」がトリガーになって敵を倒してきた。ルフィの「怒り」はすさまじいエネルギーを生み出すのだ。なお、ここまでの戦いはほとんどが通常技の「ゴムゴムのバズーカ」で勝利している(ベアキングは「ゴムゴムのスクリュー」で殺戮兵器「キング砲」ごと爆殺した)。

 また、ここまでの作品には必ずといっていいほど無力な少年(少女)が登場しているが、ルフィは彼らに「守られる存在」ではなく「当事者」であることを求めている。アキースやモバンビーなど自分には力がないと思い込んでいる少年たちには「お前だって強くなれる」と声をかけて鼓舞していた。『デッドエンドの冒険』に登場する少年アナグマ(酒井美紀)には「やりもしねぇのに、口だけで命賭けるとか言うな」と突き放しつつ、彼が一緒に戦うことを涙ながらに誓うと満面の笑みを見せていた。今は無敵のルフィだって、かつては無力な少年だったときがある。それを理屈っぽく語るのではなく、短い言葉で端的に伝え、あとは行動で見せるのがルフィのやり方だ。

オマツリ伯爵が与えた強烈な試練

ワンピース
(C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 少年らしかったルフィが強烈な試練を受けて大きく成長を遂げたように見えるのが、『ONE PIECE ワンピース オマツリ男爵と秘密の島』(2005)である。海賊が仲間割れをする姿を見るのが何よりも楽しみなオマツリ男爵(大塚明夫)によって、バラバラにされてしまう「麦わらの一味」。これまでいつも天衣無縫だったルフィだが、初めてサンジ(平田広明)に責任を問い詰められることになる。

 さらにオマツリ男爵に技をすべて封じられ、目の前で仲間を一人ずつ失うという責め苦を味わい、ついに一人きりになってしまうルフィ。見た目も振る舞いも最初は子どものようだったのに、物語が進むにつれてどんどん容貌が大人っぽくなっていくのが印象的だ。一度は瀕死となるが、ブリーフ(安原義人)とお茶の間パパ(国本武春)の助けを受けて最後は逆転。技の名前を言わないまま、渾身のストレートが炸裂して勝利し、仲間たちも取り戻した。

 とはいえ、次作『ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵』(2006)では、また無邪気なルフィに戻っており、ドクター・ラチェット(稲垣吾郎)のロボットを偶発的に発動した「ギア2」の「ゴムゴムのJETバズーカ」で難なく撃破。最後は新技「ゴムゴムの回転斧」でカラクリ城ごと真っ二つにしてみせた。

ワンピース
クロコダイルは新作にも登場! - (C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 『ONE PIECE ワンピース エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊たち』(2007)は原作のエピソードを映画化した作品であり、他作品より過去に遡ることになる。国の誰も死なせたくないと考えるネフェルタリ・ビビ(渡辺美佐)の甘さを指摘して殴り合いになったりするなど(ルフィが殴ったのは一発だけ)、シリアスさが押し出されていた。 クロコダイル(大友龍三郎)との決戦は、「ゴムゴムの暴風雨(ストーム)」で決着。

ワンピース
『劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』』でのチョッパー - (C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 同じく原作のエピソードを映画化した『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜』(2008)では、トニートニー・チョッパー(大谷育江)をいち早く仲間として迎え入れる一方、高熱のナミ(岡村明美)のために躊躇なく土下座をするなど仲間思いのところも存分に発揮する。敵のムッシュール(みのもんた)を劇場版では初披露となる「ギア2」の「ゴムゴムのJETバズーカ」で撃退。さらにDr.ヒルルク(牛山茂)が立てたドクロの旗を引き裂いたワポル(島田敏)に対して激怒し、「ギア3」の「ゴムゴムの巨人の銃(ギガントピストル)」で吹き飛ばす。戦闘能力を失っていた相手に対して明らかなオーバーキルだったが、それだけルフィの怒りが大きかったのだろう。なお、「ギア2」と「ギア3」は原作の本エピソードには登場しない。

ADVERTISEMENT

ド派手になったルフィの戦闘スタイル

ワンピース
『ワンピースフィルム ストロングワールド』 発売元・販売元:ポニーキャニオン 価格:DVD¥3,800(本体)+税、Blu-ray¥4,800(本体)+税 (c)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション (c)「2009 ワンピース」製作委員会

 ストーリーも演出もド派手になった「FILM」シリーズの第1弾『ONE PIECE FILM ワンピースフィルム STRONG WORLD』(2009)では、アヴァンタイトルからいきなり「ゴムゴムの巨人の銃(ギガントピストル)」を放つなど、ルフィの戦いぶりもド派手に。強敵・シキ(竹中直人)に敗れ、ナミをさらわれてからはシリアスさが増し、シキの居城に乗り込んだときは船長らしくルフィがウソップ(山口勝平)とチョッパーにナミを探すよう明確に指示を出していた。劇場版でルフィが仲間に指示するのはこれが初めて。戦いは「ゴムゴムの巨人の雷斧(ギガントトールアックス)」で決着した。

ワンピース
『ONE PIECE FILM Z』 発売元・販売元:ポニーキャニオン 価格:DVD¥3,800(本体)+税、Blu-ray¥4,800(本体)+税 (c) 尾田栄一郎/2012「ワンピース」製作委員会

 新世界編に突入した後のエピソードとなる『ONE PIECE FILM Z ワンピース フィルム ゼット』(2012)では、「覇王色の覇気」を繰り出せるようになっていたルフィ。海賊抹殺をたくらむゼット(大塚芳忠)が放った海楼石の弾丸によって敗北するなど苦戦するが、意地を通すような激しい殴り合いでゼットを倒し、「気が済んだ」と笑顔で許す。ゼットとルフィは戦いながら「やりたいようにやる」というスピリットで通じ合っていたのだ。

ワンピース
『ONE PIECE FILM GOLD』 発売元・販売元:ポニーキャニオン 価格:DVD¥3,800(本体)+税、Blu-ray¥4,700(本体)+税 他 (c) 尾田栄一郎/2016 「ワンピース」製作委員会

 『ONE PIECE FILM GOLD』(2016)はルフィの諦めない心、不屈の闘志がもっとも強調された作品だった。黄金を操る敵ギルド・テゾーロ(山路和弘)によって両腕を金で固められてしまったルフィだが、囚われたロロノア・ゾロ(中井和哉)救出のため、決して諦めずにテゾーロが何重にも仕掛けた罠に正面から挑み続ける。最後はテゾーロの切り札、巨大なゴールデンテゾーロと正面から激突。「ギア4」の「ゴムゴムの猿王銃(コングガン)」でゴールデンテゾーロを倒し、最後は「ゴムゴムの獅子王バズーカ(レオ・レックスバズーカ)」でテゾーロを粉砕した。

ワンピース
(C) 尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

 「麦わらの一味」の仲間たちや航海の途中で出会った人々に危害を加えたり、侮蔑、嘲笑したりする敵に出くわすと、ルフィの「怒り」の導火線に火がつく。仲間が増え、敵が複雑化し、使える技も大掛かりになっていったルフィだが、この展開は初期の頃から近作までほとんど変わっていない。これがルフィというキャラクターの魅力の源泉であり、『ONE PIECE』という作品の大切な中心軸なのだろう。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT

おすすめ映画

ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT