スティーヴン・キング映画が続々!

今週のクローズアップ

ドクター・スリープ
『ドクター・スリープ』ほかキング映画が続々! - (C) 2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

 現在大ヒット中の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』に続き、11月29日に『ドクター・スリープ』、来年1月17日に『ペット・セメタリー』とスティーヴン・キング作品を原作とする話題作が公開されます。先ごろ邦訳が刊行された「スティーヴン・キング 映画&テレビ コンプリートガイド」(竹書房)によれば、現在までに映画は65作、ドラマは30作が世に送り出されているという、驚異の数字……! そんなキング映画について、新作を中心に(ごくごく一部ではありますが)紹介していきたいと思います。(編集部・大内啓輔)

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大人になったルーザーズ・クラブの活躍に胸が躍る!

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
ルーザーズ・クラブが再集結! - (C) 2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 ホラー映画でありながら子どもたちの活躍を描いたジュブナイルものとしての魅力も持つ、2017年の大ヒット映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』。その続編である『IT/イット THE END』では、「“それ”が再び現れたときには必ず再会しよう」と約束した子どもたち7人=ルーザーズ・クラブの27年後が描かれていくことに。倒したはずのペニーワイズが再び現れたことを察知したマイクは、ほかのメンバーを召集して思いを一つにしようと奮闘します。

 大人になった彼らの戦いを描きつつ、物語のなかでは子どもの頃の忘れてしまっていた記憶が多く登場します。彼らが心を一つにするとき、この物語が過去のトラウマをいかに乗り越えるかをテーマにしたものであることに気がつきます。たとえば、前作で弟ジョージーの死を経験したビルは大人になった今でも責任を感じており、ベバリーも父からの虐待を乗り越えられてはいません。彼らはそのトラウマを克服しなくてはならないのです。

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
ペニーワイズ、怖いよ - (C) 2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 本作では、ペニーワイズの恐ろしさはもちろん、前作で描かれた80年代の思い出も数多く描かれ、子どもの頃の忘れていた記憶がよみがえっていく喜びも存分に味わうことができるのです。ほかにも小説家になったビルが原作者のキング自身を思わせたり、ビルがかつて愛用していた自転車を買い戻すシーンにはキングがカメオ出演していたりと、作家本人にまつわる細部の小ネタも用意されています。

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過去のトラウマをいかに乗り越えるか?

 『ドクター・スリープ』も同様に、過去のトラウマティックな記憶といかに対峙すべきかを描いた作品であるといえます。スタンリー・キューブリック監督による『シャイニング』の続編となる本作は、オーバールック・ホテルでの恐怖から40年後、ダニーに訪れる未曾有の出来事が展開していきます。ユアン・マクレガー演じるダニーは、かつての体験を忘れようと静かに暮らしていましたが、父と同じくアルコール依存症に苦しんでいました。

ドクター・スリープ
キコキコキコ…… - (C) 2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

 郊外に引っ越し、断酒の集いに参加するなど新たな生活を送っていたダニー。あるとき、同じく異能力シャイニングを持つ一人の少女と出会ったことで、あのホテルに戻ることを余儀なくされてしまいます。キューブリックの注釈入り設計図をもとに再現したホテルのクオリティーをはじめ、劇中でもトラウマとして引用される『シャイニング』の有名な場面が文字どおりイメージとして押し寄せるさまは圧巻。観客もダニーと同じ恐怖を味わうことになります。

ドクター・スリープ
あのホテルへ再び…… - (C) 2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

 過去のトラウマティックな経験をいかに受け入れるべきか? というテーマは待機作の『ペット・セメタリー』でも共有されています。キング自身が脚本を担当した1989年の同名映画のリメイクである本作では、森にあるペットの墓(ペット・セメタリー)がそばにある新居に引っ越してきた家族の物語が描かれます。妻子との時間を増やすために田舎で新しい仕事に就いたルイスは、妻と2人の子ども、そして1匹の猫と新生活をスタート。家は高速で走るトラックが行き交う道路に面しており、早くも不穏な空気を漂わせます。

ペット・セメタリー
娘の死の悲しみから…… - (C) 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 あるとき彼の飼い猫がトラックの犠牲となり、近所に住む老人に案内された、先住民が隠してきた秘密の場所に死骸を埋めると、あくる日、見た目は同じだが、何かが違う凶暴化した猫が姿を現します。そして、ルイスは猫に続いて娘をも事故で失い、一線を越えてしまいます。

ペット・セメタリー
この猫、なんかやばい - (C) 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 愛する人の死を受け入れられないルイスが引き起こす恐怖だけでなく、妻のレイチェルも自責の念に囚われているという設定など、本作でも人間の心に生じた恐怖や弱さが鍵となっています。超現実的なものが迫り来る恐怖を支えるのは、リアルな感情に根ざした人間の悲しい性。ホラーとして輝きを放ち続けるゆえんでしょう。また、キングもカメオ出演している1989年版とは、設定やラストで異同があるので見比べてみるのも一興です。

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ホラーだけじゃない!

 人知の及ばない特別な力、というモチーフをホラーからファンタジーに転じて感動的に描き出したのが、キングが1996年に発表したベストセラー小説をもとにした『グリーンマイル』です。ここではトム・ハンクス演じる看守主任ポールが刑務所で経験した、不思議な力を持つ死刑囚の黒人が引き起こす奇跡が語られていくことになります。

 物語の舞台は、まだ死刑が電気椅子によって実行されていた1935年、かなり大柄なジョン・コーフィという男が刑務所に送り込まれます。最初は看守たちも強姦殺人を罪状に持つ彼の屈強な体躯に警戒しますが、繊細で心優しい彼と心が通じていきます。ポールが悩んでいた尿路感染症を治したり、ある囚人の飼っていたネズミを生き返らせたりと、特別な力があることが明らかになってきます。そしてポールは、この力を使って所長の妻の病気を治すことができないかと考えるようになります。

グリーンマイル
刑務所で起こる奇跡 - Archive Photos / Getty Images

 幻想的な映像も相まって、そのストレートなストーリーには思わず胸を打たれるはず。物語は108歳になったポールが友人に昔話をするというストーリー構成なので、彼の身に起こった奇跡が果たしてどこまで真実なのか、つかみどころがないところも本作のファンタジックな魅力を高めているといえるでしょう。同じく回想形式で語られる『スタンド・バイ・ミー』などを含め、ホラーだけではない人間ドラマとしての魅力を感じることができます。

 『グリーンマイル』と同じくフランク・ダラボン監督が映画化した、刑務所を舞台とする感動作『ショーシャンクの空に』。物語の舞台を限定した空間に設定し、濃密な人間模様が展開していきます。ティム・ロビンス演じる元銀行副頭取のアンディは、妻とその愛人を殺害した容疑で刑務所に送られてしまいます。しかし、彼は銀行家としての才を発揮して所長たちの税務処理や資産運用を担うようになり、受刑者たちの信頼も勝ち取っていきます。

ショーシャンクの空に
彼らの間に芽生えたものは? - Photo by Castle Rock Entertainment/Getty Images

 20年の獄中生活を経て、誰にも気づかれずに脱獄を試みるアンディを待ち受けるラストシーンは感動的です。そして、モーガン・フリーマンとの共演で演出される男同士の友情も見どころとなっています。こちらの原作は、ロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』と同じ、四季をモチーフにした中編集に収められており、そのなかにはブライアン・シンガーが監督を務めた『ゴールデンボーイ』の原作も収録されています。

 その『ゴールデンボーイ』では、成績優秀で野球部のピッチャーも務める青年トッドと、元ナチス戦犯の老人との不穏な交流が描かれます。彼を執拗に追いかけ、その残虐な行為について話すことを強要したり、制服を着せて行進するように命令したりと、悪の領域へと足を踏み入れていく様子が語られていきます。本作もホラーとは異なりながらも、その一線を越えていく感覚がや、日常がふとしたことで変容してしまう恐ろしさが克明に描かれています。

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キング・ワールドを一気に駆け抜けたい!

 ほかにも、ダラボン監督による霧に包まれた街を舞台にした『ミスト』や、キング原作の皮切りとなった『キャリー』、アンソニー・ホプキンス主演の『アトランティスのこころ』、ライナー監督の『ミザリー』など作風は多様で、語り尽くすことはできません。「アンダー・ザ・ドーム」「キャッスルロック」など人気ドラマも好調で、新しいファンを獲得しています。

キャリー
皮切りとなった『キャリー』 - Silver Screen Collection / Getty Images

 2012年にはキング作品や『13日の金曜日』などの古典的ホラーを寄せ集めてパロディー化した『スティーヴン・キングは殺せない!?』という映画が作られているように、まさに「キング映画」というジャンルは世代を超えて確立されており、その世界観は共有されているのです。

 そんななか今回公開を迎えた3作品は、単なる過去のリメイクや人気作の続編ではなく、それぞれに新たな魅力を加えたものとなっています。そして、原作ではなくとも、ドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のように、キングの影響を強く受けた作品が登場するなど、その影響力ははかりしれません。このキング映画ラッシュを機に、キング作品の映画を見返しつつ、その映像世界を一気に駆け抜けるのもいいかもしれません。

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