間違いなしの神配信映画『アンカット・ダイヤモンド』Netflix

神配信映画

押さえておきたい監督編 連載第1回(全7回)

 ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回は個性やメッセージ性の強い監督の作風に注目。毎日1作品のレビューをお送りする。

アダム・サンドラーが一攫千金を追う怪しい男に~金に翻弄される人間の滑稽さと哀しみを描く

アンカット・ダイヤモンド
Netflix映画『アンカット・ダイヤモンド』独占配信中

『アンカット・ダイヤモンド』Netflix

上映時間:135分

監督:ジョシュ・サフディベニー・サフディ

出演:アダム・サンドラー、ラキース・スタンフィールドジュリア・フォックス

 方々走り回って金の工面をする金策映画には面白いものが多い。それは、多くの映画が重要な要素として設定している、愛情や友情などのような数値化することができない要素に対し、金銭や商品は市場の判断によって客観的価値が与えられているからだ。

 価値観が多様化している世の中、多くの人々が日々苦労して得ている金銭を扱うことで、登場人物の状態が共通認識として正確に観客に伝わってくる。だからこそ、そこで戦略性やサスペンス、悲喜劇などが、リアリティーを持って描けるのだ。そんな金策映画の一つの究極型といっていいかもしれない映画が、本作『アンカット・ダイヤモンド』だ。

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アンカット・ダイヤモンド
Netflix映画『アンカット・ダイヤモンド』独占配信中

 ライトなコメディー映画の主演スターとしてのイメージが強いアダム・サンドラー。本作では金に汚いニューヨークの宝石商ハワードを、金縁メガネとひげ面、革ジャンに金のアクセサリーや派手な時計を身に付けるという強面の風貌で、一攫千金の夢を追う男を演じている。

 本作の監督は、ジョシュ&ベニー・サフディ兄弟。世界的な評価を得た前作『グッド・タイム』(2017)でも、イギリスの美男子俳優ロバート・パティンソンにケチな犯罪者を演じさせイメージを一新させている。そこで描かれたニューヨークのストリートでの犯罪や、観光などでは見られない生活者からのリアルな風景は、本作にも共通している。なかでも俗っぽい宝石店の実在感が素晴らしい。

アンカット・ダイヤモンド
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 借金まみれのビジネス、若い愛人と密会するためのマンション住まい、険悪な夫婦関係……。大金を稼ぎたいと願いながらも望みとは裏腹に、ハワードの乱れた生活はあらゆる面で破綻寸前。得意の口先でしのいできたものの、宝飾の業界で力を失いつつあるいま、これまでのツケがハワードを一気に襲う。

 そんなハワードの唯一の希望が、エチオピアの鉱山で働く少数民族を買収して手に入れた、複数のオパールが埋め込まれた高価な原石だ。この宝石を客に貸し付け、カタに受け取った指輪を、こっそりと質屋に入れて金を工面したり、オークションで不正に値をつり上げたり、バスケットボール賭博に手を出したりなど、あらゆるきわどい行為で当面の危機を切り抜けようとするハワード。

アンカット・ダイヤモンド
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 すごいのは、これらの複雑な行動を、複数の借金取りに追われながら、さらに崩壊寸前の家族へのサービスまでこなしながら同時進行で行っていくところだ。そのマルチタスクぶりは、誰にも頼れない個人事業主の苦労を凝縮したイメージにも見え、同情心が沸いてくる部分さえある

 ここまですさまじく、そして涙ぐましい金策の綱渡りを映し出し、それによって金に翻弄される人間の滑稽さと哀しみを描いているからこそ、本作はある意味で究極的なものとなっているのである。そしてこの悲喜劇が、ただの他人ごとだと切り捨てられないだろうと思えるのは、誰の心の中にも多かれ少なかれハワードのような強欲な部分があるはずだからである。

 このように、主人公に全面的には共感することが難しい作品は、娯楽映画においては嫌われる部分がある。そんな企画の実を結ばせたのが、『ムーンライト』(2016)、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(2017)、『ミッドサマー』(2019)など、個性的な監督による個性的な映画に出資し、それらが世界的な支持を受けている「A24」であることも、注目するポイントだろう。そのおかげで、本作は圧倒的な独創性を獲得しているのだ。

アンカット・ダイヤモンド
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 さらに、実在の元NBA選手K.G(ケビン・ガーネット)が本人役として出演していて見事に演技をこなしているのも見どころだ。彼が劇中で目を奪われ魅了されてしまうのが、オパールの輝きである。中でもブラックオパールは、一つの宝石の中にさまざまな色合いが見られる場合があり、見る者を小宇宙のような内部へと引き込んでゆく。

 本作の冒頭、宝石にカメラがクローズアップし、視点が内部へと侵入していくシーンが印象的だ。それはいつしかハワードの腸内の様子へと切り替わっていく。中年男の内視鏡検査の映像を見ることなど、ほとんどの観客は望まないだろうが、このシーンは現地の低賃金で働く労働者たちの汗の結晶が、アメリカの強欲な宝石商の飯のタネになっていることを示す皮肉的な場面として機能している。

 また同時に、さまざまな困難に遭う現代人と、強欲の行き着く運命が、このブラックオパールの小宇宙の複雑な構造とつながりを見せているようにも感じられる。その意味で本作は、一見して俗の極みのような雰囲気を持ちながら、オパールの内に潜む深淵のように、奥が深い映画だといえるのだ。(小野寺系)

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