映画を通して社会問題について考えるの巻

まほの別府ブルーバード劇場日記

 一人旅がきっかけで出会った別府ブルーバード劇場のお手伝いをしている森田真帆です! わたしがこの劇場をお手伝いするようになってから、ずっと続けていることがあります。それは、映画を通して社会を考えるということ。映画はときに、疲れた心を癒やすビタミンにもなり、そしてわたしたちに多くのことを考えるチャンスも与えてくれます。今回は、映画『子どもたちをよろしく』の上映イベントについてお話しします。(文・森田真帆)

日本の子どもたちが直面している問題を可視化した作品

子どもたちをよろしく
川瀬陽太さんの熱演に心打たれました。『子どもたちをよろしく』場面写真より。(C) 子どもたちをよろしく製作運動体

 映画『子どもたちをよろしく』は、元文部科学省の寺脇研さんと前川喜平さんが企画を務め、映画『ワルボロ』の隅田靖監督がメガホンを取った作品です。北関東の郊外にある町で、貧困やいじめなど、様々な問題を抱えた子どもたちの姿をリアルに描いています。この映画を上映したいと強く思ったきっかけは、本作で川瀬陽太さんが演じているシングルファーザーが、妻の代わりに必死に働いて、息子を養おうと頑張る姿に共感したからでした。

 仕事はデリバリーヘルスという風俗サービスの運転手。もらったお給料を全部パチンコで使ってしまうなど、決していい父親とは言えませんが、彼なりに一生懸命父親としての役目を果たそうとする思いは切実に伝わってきます。毎日年下の若い女性たちに怒鳴られながら仕事をして、疲れ切った体でインスタントラーメンを作り、息子と一緒に食べる。学校でいじめられている息子のことに気付く余裕すらありません。わたしは、この父親の姿にとても胸を打たれ、この映画をブルーバード劇場で上映したいと思いました。

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貧困に苦しんだシングルマザーの友だちと現実

子どもたちをよろしく
貧困の連鎖に愕然とする。『子どもたちをよろしく』場面写真より。(C) 子どもたちをよろしく製作運動体

 実は、わたしにも似たような境遇のシングルマザーの仲間がいました。一人娘を育てながら、毎晩キャバクラで働いて肝臓を壊し、風俗嬢として頑張っていた彼女。映画の中の父親と同じように、パチンコでお金をすってしまうこともしばしば。事情を聞くと、いつももっとお金を増やしたかったと泣きそうな顔で答えていました。子どものことは大好きで、一緒にいたいけれど日々の過酷な労働で身も心も疲れ果てて、家では死んだように眠り続ける。この貧困と現実から抜け出したくて、パチンコ屋に足が自然と向かってしまう。映画の中の父親と彼女の姿は痛々しく重なって見えました

 はたから見たら何をやっているんだ、と思われるかもしれませんが、抜け出したくても抜け出せない貧困の底なし沼に埋もれてしまった人たちがどれほど多いことか。パチンコへの依存もこれはギャンブル中毒という病気であり、根底には子どもにもっと贅沢をさせたいという親心もある。以前、『隣る人』という映画のトークショーで、児童養護施設の施設長さんがいらしたとき、「虐待の報道があると、マスコミはその親が抱える根本的な問題をみようとしません。そういう人たちを表面だけで判断して、根本の問題を一つもみていない」と話されていたのを思い出します。どんなに頑張っていても、最低な親と言われ続け、自分自身に絶望し、ついには爆発してしまう。表面だけではなく、彼の姿を観たお客さんは、何を感じ、何を思うんだろう。そう思ってこの映画の上映を決めました。

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コロナの影響で苦しむ子どもたちはもっと増えていく

別府ブルーバード劇場
寺脇研さんと、コロナ後の子どもたちについて語りました。

  今、新型コロナウィルスの影響で夜の仕事に携わる人たちは、大変な状況に陥っています。人との接触を避けられない風俗業界では客足も遠のき、キャバクラなどのナイトワークも経営状況が悪くなる。当然、そこで働くしか選択肢がないシングルマザーたちの生活はどんどん困窮しているのが現状です。映画の中では、ガスも電気も止められ、お湯を沸かすこともできず、子どもが暗闇の中でカップラーメンの麺をかじって食べるシーンが出てきました。観る人によっては、「こんなことあるわけがない」という意見もありますが、あるソーシャルワーカーさんに言わせると、これが現実そのもの。そして現実はもっとひどいということです。現在の社会状況の中、このような目にあっている子どもたちは一体どれだけいるのでしょうか? そして映画の中の子どもたちのように、SOSを出せない子たちがどれほどいるのでしょう? 

 映画の企画をされた、元文科省の寺脇研さんは、別府ブルーバード劇場に直接足を運んでくださり、そんな子どもたちの窮状を伝えてくれました。「SOSを出せない子どもたちはとても多いと思います。こうした子どもたちを救う最初の一歩は、みなさんの行動です。だからこそこのタイトルをつけました」と子どもたちをよろしくというタイトルへの思いを明かしてくれました。寺脇さんは、声かけの一つだけでも社会は変わっていくと話してくれました。道ですれ違う近所の子どもにおはよう、こんにちはと声をかける。とても簡単な行動だけで、子どもたちは救われるかもしれない。下を向いていた子どもが、助けてのサインを出せるかもしれない。

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諦めないで続けていく子どもたちへの取り組み

別府ブルーバード劇場
ゲストを囲んだ懇親会も別府ブルーバード劇場ならでは!

  別府ブルーバード劇場では、映画を通して社会問題を考えていく取り組みを今後も続けていこうと思っています。実際に韓国で起きた小さい子どもの虐待事件を映画化した、『幼い依頼人』は容赦のない虐待シーンも出てきます。でも私たちは、そこから目をそらしてはいけない。『許された子どもたち』では、いじめの加害者側の子どもたちが描かれる。どうして? なぜそんなことをしてしまうのか? 社会はこの問題に対してどう向き合うべきなのか。受刑者たちが、自分たちの罪と向き合うカウンセリングシステムの様子を追ったドキュメンタリー『プリズン・サークル』では、虐待がどれだけ大きな影響を子どもたちに与え、その心の傷をどれだけ取り除いてあげられるかが、彼らの将来にどれほど重要なのかを考えさせられます

 わたしたちは、映画から学ぶこと、そして考えさせられることがたくさんあります。子どもたちの問題だけではありません。高齢化社会、LGBT、そして海外で大きな問題になっている人種差別の問題など、映画を通して学べることは本当にたくさんあります。別府ブルーバード劇場では、これからも多くの映画を通して観客の皆さんと一緒に悩み、どんなことができるかを考えていきたいと思っています

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