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仮面ライダー&スーパー戦隊、歴史を受け継ぐ意義 『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』白倉伸一郎インタビュー

『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』

2021年は「仮面ライダー」50周年、および「スーパー戦隊」シリーズ45作目を迎えるダブルアニバーサリーイヤー。この記念すべき年に公開となる映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は、現在放送中の「仮面ライダーセイバー」と「機界戦隊ゼンカイジャー」、そして歴代のヒーローたちの根幹に関わる“ヒーロー誕生の秘密”に迫る物語だ。そこで、本作のプロデュースを務めた白倉伸一郎に、両シリーズが積み重ねてきた歴史をいかにして未来につなげるのか、その思いと覚悟を聞いた。(取材・文:壬生智裕)

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■仮面ライダー、スーパー戦隊として外せないこと

Q:「機界戦隊ゼンカイジャー」は「スーパー戦隊」ではありながらも、ひとりの人間とロボットたちのチームということで、どこか「仮面ライダー」っぽさも感じます。そうした点で、「仮面ライダーセイバー」との融合のしやすさなどはあったのでしょうか?

そうですね。「スーパー戦隊」シリーズというのはあくまでチームヒーローであって、建前としては5人は横並びです。6人目、7人目が出てきてもみんな平等です。でも現実としてはレッドが注目されがち。「機界戦隊ゼンカイジャー」はその建前に異を唱えたというわけではありませんが、“主役とその仲間たち”という構図を前面に立てたところはあります。そもそもゼンカイザー(五色田介人)はレッドですらありませんが(笑)。一方、「仮面ライダー」は1号、2号の御世から“個が主役”と言いながらも、「仮面ライダーセイバー」の主人公である神山飛羽真と一緒に、ソードオブロゴスという組織の一員としての仮面ライダーたちも描いているので。「仮面ライダーセイバー」も「機界戦隊ゼンカイジャー」も期せずして、構造が似ているところがあります。

だから今回、飛羽真が「機界戦隊ゼンカイジャー」の世界に、介人が「仮面ライダーセイバー」の世界に行くというように、世界が入れ替わることを物語の発端に据えていますが、他の年よりはるかにやりやすい。クロスオーバーの糸口がつかみやすいというのはあったと思います。

Q:白倉さんにとって、「仮面ライダー」「スーパー戦隊」それぞれ、ここだけは絶対に外せないという定義はあるのでしょうか?

明確にあるのですが、それを自分が口にしていいのかはわからないんです。そもそも「仮面ライダー」も「スーパー戦隊」も、自分の作ったものじゃないわけですから。あくまでも先達が作りたまいしものであり、われわれはそのバトンを受け継いで走っているにすぎないので。ただ、あえて言葉にするならば、「仮面ライダー」は個を描くものであり、「スーパー戦隊」はチームを描くものだと思っています。「仮面ライダーセイバー」には仮面ライダーが10人以上出てきますし、「機界戦隊ゼンカイジャー」も人間と機械という描き方はしていますが、あくまで根っこのテーマはそういうことだと思っています。これは個人的な解釈ですが。

Q:そうした歴史の継承も重要になってくると思います。

受け継いだバトンをどういう形で次の世代に渡していくのかは、間をつなぐわれわれの世代の使命です。誰に対してその責任を負うのかといえば、やはり50年前に子供であった自分たちに向けて、真剣に素晴らしい番組を作ってくれた当時の大人たちに対して、ですよね。だからどんな遺産を残せるか、というのは普段から考えていることです。それが「仮面ライダーセイバー」と「機界戦隊ゼンカイジャー」相互乗り入れも含めた、今回の映画のテーマの一つにもなっています。

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■これからは“三枚舌”を使う

『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』

Q:今の時代は昔と違い、SNSでファンの意見がどんどん入ってきます。そうした声をふまえつつ、現状ではファンとの関わりをどのようなスタンスで行おうという考えなのでしょうか?

二枚舌を使うということですよね。SNSを中心とした声には、ポジティブであれ、ネガティブであれ、どういう風に反応していただくか。いわゆるサプライズというものもスタート地点では大事にしています。それはファーストインプレッションがどれだけインパクトがあるか、ということ。そういうのを大事にする一方で、一番大事なのは“子供”です。彼らに対して一体何を供給できるのか。何を観ていただけるのかの方が大事。その両方を同時に満たすというのが今、「仮面ライダー」シリーズがとろうとしているスタンスです。

Q:メインターゲットは子供たちだとは思いますが、一方で大人のファンも卒業させることなく、しっかりと取り込んでいる印象があります。それは最初から狙っていたのか、それとも偶然そうなったのでしょうか?

たぶん如実なのは平成ライダーの「仮面ライダークウガ」「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー龍騎」あたりだと思いますが、その頃に二枚舌を使い始めるんです。平成ライダーとして復活したのは、いわゆる昭和ライダーを見ていた子供たちがパパになるタイミングでした。パパと子供の両方が楽しめる二世代のキャラクターとして、もう1回「仮面ライダー」が日の目を見るのではないかという狙いがあったんです。その時に「仮面ライダー」に初めて触れる子供と、かつて昭和ライダーを受容していた親の世代と、両方同時にメッセージを送る。

もちろんパパもママもお子さんも、それぞれの楽しみ方がある。ドラマとして、アクションとして、完全に一致する部分もあれば、若干のズレはあるかもしれないけれど、時として二律背反するような二世代をターゲットとするという役割のようなものが、「仮面ライダークウガ」から始まる平成ライダーの初期に仕組まれているんです。そこからさらに20年近く経ち、「仮面ライダークウガ」や「仮面ライダーアギト」を観ていた人たちが、だんだんと親の世代になってくる。もしかしたらあと5年くらいかかるかもしれませんが、そうすると「仮面ライダー」というのが、昭和世代、平成世代、令和世代という三世代キャラクターになってくるんです。そのときには“三枚舌”を使い始めることになると思います。

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■今の時代にヒーローを描く覚悟

『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』

Q:これだけの長い歴史がある分だけ、ファンの思い入れも強くなると思います。そうした中で白倉プロデューサーの覚悟やプレッシャーは大変なものがあるのではないでしょうか。

やはり昔の制作者たちの覚悟は違うなと思うんです。だからこそ、縮小再生産をするわけにはいかない。特にわれわれの世代はそう思っているんですよね。例えば「仮面ライダー」に限って言うと、バイクに乗らなくてはいけない、昆虫でなければいけない、赤いマフラーをしてなくてはいけない、赤い複眼がなければならない……という風に、上っ面を拾うことはいくらでもできますが、ではなぜバイクに乗せようと思ったのか、なぜバッタなのかというもののひとつひとつに意味があるわけで。そのいきさつや意味、狙いや思いを度外視して、結果として生まれてきた上っ面だけをかすめ取って、それを焼き直して「新しい仮面ライダーでござい」というのは失礼なことだと思うんです。

「仮面ライダー」を自分たちが作ったわけではないと言いながらも、少なくとも当時の制作者たちに恥ずかしくない仕事をするためには、毎回「これが一作目なんだ」というぐらいの覚悟がないと駄目だと思うんです。それでも受け継いできたものはあり、じゃあ一体何を受け継ぐのかということを個人の中で明確にしなきゃいけない。ただ何も考えずに、現象だけ踏襲していった方が楽だし、お客さんも納得がいきやすいと思います。でも本当はそれはやっちゃいけないことですから。

よくも悪くも、平成以降の仮面ライダーは毎年のシリーズの中で「前作と同じことはやらない」ことを掲げてきました。前作とは違う、世間を驚かせるようなデザインや設定でなくてはいけないという風習のようなものが備わっている。いろんなチャレンジができるというありがたい土台があると思います。だけど、「仮面ライダー」として変わっていること自体は価値ではない。テレビ番組にせよ、映画にせよ、あくまでも今の日本に新しい番組、作品として存在する意義というものの方が大事。「仮面ライダー」に新しい変わった1ページを加えることだけを追求しても意味がないと思います。

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【取材後記】

長きにわたって愛されてきた東映ヒーローたち。これだけの長い歴史があるからこそ、ファンの心の中にはそれぞれが考える“ヒーローの定義”がある。その熱い思いをしっかりと受け止めながら、われわれをアッと驚かせるような仕掛けを繰り出してきたのが白倉プロデューサーだ。最新作『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は昭和、平成、令和のヒーローたちを集合させるという、ある意味東映らしい“お祭り感”に満ちあふれているが、その上で原作者・石ノ森章太郎が生み出したヒーロー像を改めて見つめ直す作品になったという。このインタビューは、「仮面ライダーを作り続けること」の意義を改めて問う、非常に興味深い時間となった。

映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は7月22日より全国公開

「スーパーヒーロー戦記」製作委員会 (C) 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 (C) 2021 テレビ朝日・東映 AG・東映

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