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『マトリックス』ココがすごかった!:物語編

Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 12月17日公開が間近に迫る映画マトリックス レザレクションズ。過去の『マトリックス』3部作で観客を興奮させたシリーズの魅力は、どんな進化を見せるのか。3部作の「物語」の魅力を振り返り、新章の襲来に備えよう。(文・平沢薫)

相反するものを融合させた物語

 『マトリックス』のストーリーは、斬新な映像と同じく、基本的にはウォシャウスキー姉妹の好きなものを全部盛りにして構成されている。ウィリアム・ギブスンに代表されるサイバーパンクSFや「不思議の国のアリス」などの文学作品に現代思想、コンピュータ用語、ギリシャ神話、旧約聖書など、多種多様な要素が詰め込まれ、観客のイメージを刺激する。本作のベースとなる「現実だと思っていた世界が虚構だった」という設定は、フィリップ・K・ディックなど、数多のSF作品でテーマにされてきたが、それを斬新な映像と引用の数々で構築した点も『マトリックス』の魅力だ。

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人間と機械の戦いを描く『マトリックス』。数々の引用が物語を重厚なものにする。Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 また、引用の数々が相反する性質を持っているところもポイント。現代のサイバーパンクSFやコンピュータ用語と、その対極にある神話や伝説を組み合わせる。学術的な現代思想を娯楽的なアニメやコミックと融合させる。異質な要素同士を急接近させ、ユニークな世界を創り出したのだ。

旧約聖書から現代思想、コンピュータ用語まで

 3部作の物語に盛り込まれた要素を、具体的に見てみよう。まず、新旧の要素でいえば、「古いもの」を代表する神話、伝説、旧約聖書などの引用は、主に登場人物名やアイテムとして登場する。

【ネタバレあり】『マトリックス』押さえておきたいキーワードを総復習!」>>

 一方の「新しいもの」を代表するのが、ウィリアム・ギブスン著「ニューロマンサー」(1984)などのサイバーパンクSF小説だ。ウォシャウスキー監督は2人ともこのジャンルの大ファンを公言しており、情報により構築された世界をヴァーチャル空間として描写する、これらの作品の要素も『マトリックス』と共通している。

 また、ウォシャウスキーは現代思想も意識した。1作目の製作当時、2人が主演のキアヌ・リーヴスにすすめた本が、画面にもチラリと登場するフランスの哲学者ジャン・ボードリヤールの著作「シミュラークルとシミュレーション」と、Wired誌の編集者ケヴィン・ケリーの著作「『複雑系』を超えてーシステムを永久進化させる9つの法則」。『マトリックス』3部作は、これらに影響を受けた思想の面でも刺激を与えてくれた。

迫力のネオとエージェント・スミスのバトルもプログラム上の戦い Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 さらに大きな意味を持つのがコンピュータ用語やIT用語。人工知能が構築した仮想世界=マトリックスでは、プログラムが人間の姿で登場する。エージェント・スミスの「エージェント」という言葉も、IT用語では、システムの代理や仲介役として機能するソフトウェアやシステムを意味する。こうした引用を満載したストーリーは、マトリックスの世界はどんな構造をしているのか、ネオたちの行動にはどんな意味があるのか、彼らの行動はどこまでがマシン側の計画なのかなど、さまざまな謎を観客の脳内に生み出し、想像力を刺激し続ける。 

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『レザレクションズ』の脚本家に注目!

 3部作の脚本は、メガホンを取ったラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹が2人で手掛けたものだった。ラナが一人で監督と脚本を担当した『マトリックス レザレクションズ』には、ウォシャウスキー姉妹が手掛けたドラマシリーズ「センス8」の脚本家だった、デヴィッド・ミッチェルアレクサンダル・ヘモンが参加している。特にミッチェルは、ウォシャウスキー姉妹が2012年に発表したクラウド アトラスの原作者でもある。

 3部作のメインクリエイターだったラナが、近年タッグを組んだ、気心の知れた2人との共同作業で仕上げた『レザレクションズ』の脚本は、3部作の物語の魅力をどのように継承し、進化させているのだろうか。公開が待たれる。

映画『マトリックス レザレクションズ』は12月17日より全国公開

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