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忖度なし!オリンピック公式映画の衝撃

2020
脳科学者・茂木健一郎がオリンピック公式映画の魅力を語る

 「東京2020オリンピック」に携わった大会関係者たちの衝撃の舞台裏を、河瀬直美監督が記録した公式映画東京2020オリンピック SIDE:B。アスリートに焦点を当てた『東京2020オリンピック SIDE:A』に深く感動した脳科学者の茂木健一郎は、『SIDE:B』でもさらなる感銘を受けたといい、今こそ本作を劇場で観るべきだと語る。その真意とは?(取材・文:斉藤博昭、撮影:中村嘉昭)

構成に衝撃!あの夏の体験が、“夢”のようによみがえる

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開会式で見事なパフォーマンスを披露した森山未來

 2021年夏に開催された東京オリンピックは、多くの人がそれぞれのかたちで記憶に留めていることだろう。茂木健一郎にとっても、あの夏は特別な時間だったそうだが、今回の公式映画、特に『SIDE:B』を観て、脳科学者として思い当たることがあったという。

 「脳科学の用語で言うと記憶の再編成・再解釈が行われた作品でした。みなさんと同じように、僕もオリンピックの一連の出来事を時系列で記憶しているつもりですが、そこで起きたことの意味まではわかりませんでした。しかし、このドキュメンタリーでその意味を再構成して見せてもらった感覚です。人間の夢というのは、記憶の再構成で作られるのですが、まさに夢を見ているようでした」

 オリンピックに関する取材も経験し、人並み以上に現場の実態を知っていた茂木にとっても、『SIDE:B』は新鮮な映画体験になったという。

 「東大寺のお水取りのような映像が出てきて、どうしてこの映像が? と思っていると、国立競技場で行われた開会式での、森山未來さんのダンスに繋がっていく。時系列ではなく、映画がひとつの詩のように迫ってくる。普通の記録映画やドキュメンタリー映画とは違って、芸術性が非常に高い作品でしたね」

忖度なしで切り込む、驚きの舞台裏

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その時、何が…大会組織委員会会長を辞任した森喜朗

 東京オリンピックは開催に至るまでにさまざまな問題が起こり、大きな波紋を広げた。『SIDE:B』では、ニュースなどで見ることができなかった舞台裏にも、忖度なしで容赦なく迫っていく。知られざる事実に衝撃を受ける人もいるはずだが、茂木にとっては、どんな驚きの瞬間があったのだろう。

 「天皇陛下は、あのように会場にお越しになるのか。女子マラソンのスタートの1時間繰り上げには、あんな舞台裏があったのか。また(女性蔑視発言で大会組織委員会会長を辞任した)森喜朗さんと、彼を囲む陣営の表情なども知られざる事実として受け止めました。ただ、それらを好奇心で見せるというより、感じさせる映画だったと思います。それ以上に、マラソンが行われている横で、緑の草が生い茂る道を走っていく子供たちなど、美しいシーンにハッとさせられたのも事実です」

『スター・ウォーズ』のように何度も観たくなる

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河瀬監督が求めた世界水準のドキュメンタリー

 感覚的に五感にアピールする点は、カンヌ国際映画祭などで高く評価される河瀬監督らしいと茂木は強調する。そして公式映画=ドキュメンタリーとして、現在の世界が求めている作品スタイルであることにも感動したと話す。

 「日本のドキュメンタリーはナレーションが多用されますが、現在、世界のドキュメンタリーは使用しないのが主流です。作る側の解釈や意見をできる限り押し付けない。当事者の言葉で伝えるというアプローチを河瀬監督は徹底しており、そこに忖度なしの姿勢が感じられました」

 さらに河瀬監督作品の特徴は、日本が世界に誇る人気作家や、映画の歴史を変えた超大作にも通じると茂木は解説する。

 「われわれ人間は、ストリーム・オブ・コンシャスネス(意識の流れ)にのっとって、すべてを経験しています。河瀬監督は、その流れで東京オリンピックを描いている。無意識の深い井戸に降りていき、まったく違う世界に連れて行くという意味で、村上春樹の小説に近い部分があるのではないでしょうか。だから何度も観たくなる。大げさにいえば、あの『スター・ウォーズ』の1作目が公開され、なぜだかわからないけど、もう一度観たいという衝撃にも似ています」

五輪映画に癒し効果、サウナ用語に例えれば“ととのう”

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あの夏のモヤモヤを払拭する効果あり!?

 一方で、1年前の東京オリンピックを、改めて公式映画として観ることにどんな意味があるのかと、劇場へ行くことを迷っている人も多い。その点にも、茂木はひとつの答を導き出した。

 「2021年の夏、僕らが経験したことの意味は何だったのか? そこには幸せや感動があったかもしれないが、1964年の東京大会と違って、多くの人にとっては、今大会がどこかややこしい記憶になりました。開催反対運動、無観客のスタジアム、(『SIDE:B』にも出てくる)男子400mリレーでのバトン受け渡しミスなど、モヤモヤしたものが残った人もいるでしょう。でも同時に、あの夏はかけがえのない時間だった。その意味を教えてもらうという意味で、僕はこの映画に癒されたのです」

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ホワイトボードを使いながら熱心に語る茂木健一郎

 本作に「癒し」効果があるというのは意外なようだが、脳科学者である茂木の言葉を聞けば、納得ができる。

 「“癒される”というのは脳科学的に解釈すれば、脳内の整理ができて腑に落ちる、スッキリするという感覚です。サウナ用語に例えれば“ととのう”ですね。少なくとも、僕はこのオリンピック映画でととのいました。ですから騙されたと思って観てほしいと感じます。『SIDE:A』でも思っていた映画とまったく違っていたという感想をよく聞きますし、『SIDE:B』では、さらに深いところへ連れて行かれます。そしてオリンピックの舞台裏で淡々と仕事をした人たちの姿に、日本人も捨てたもんじゃない。もう一度何かを信じたくなると感動できる。こうした人々への癒しを芸術作品として作ったことに僕は感謝したいと思います」。あの夏の記憶に癒され、“ととのう”という予想外の体験が『東京2020オリンピック SIDE:B』では待っているのかもしれない。

『東京2020オリンピック SIDE:B』は全国公開中

公式サイトはコチラ>>

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