河瀬直美監督最新作『たしかにあった幻』メインキャスト発表 尾野真千子、永瀬正敏、北村一輝ほか

中川龍太郎監督の『恒星の向こう側』で、親子を演じた福地桃子とともに第38回東京国際映画祭最優秀女優賞に輝いた河瀬直美監督。監督作として6年ぶりの劇映画であり、オリジナル脚本では8年ぶりの最新作『たしかにあった幻』(2026年2月6日からテアトル新宿ほかで公開)より、河瀬監督作品の常連である尾野真千子、永瀬正敏をはじめ、北村一輝、小島聖、岡本玲、松尾翠、早織、平原テツ、利重剛、中嶋朋子らの出演が発表された。
【画像】映画『たしかにあった幻』キャスト・メインビジュアル写真
フランス・ベルギー・ルクセンブルク・日本の合作である本作のテーマは、日本の臓器移植医療と行方不明者問題。「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋いでゆき、「生」の意味を問いかける本作は、第78回ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア上映で、河瀬監督のマスターピース(傑作)と評された。
フランスから来日したコリーは、神戸の臓器移植医療センターで働きながら、小児移植医療の促進に取り組んでいたが、西欧とは異なる日本の死生観や倫理観の壁は思った以上に厚く、医療現場の体制の改善や意識改革は困難でもどかしい思いを抱えていた。そんなコリーの心の支えは、屋久島で運命的に出会った恋人の迅だったが、彼の誕生日でもある7月7 日の七夕に突然、姿を消してしまう。一年後、迅が失踪するはるか前に彼の家族からも捜索願が出されていたことを知ったコリーは、迅の実家である岐阜へと向かう。そこで明かされた事実によってコリーと迅の出逢いが宿命的だったことがわかり愕然とするコリー。一方、心臓疾患を抱えながら入院していた少女・瞳の病状が急変するが……。
「愛のかたち」と「命のつながり」をモチーフにして、日本の失踪者と心臓移植の現実を重ねて描く、時を超えて運命が交差する人間ドラマで主人公コリーを演じたのは、『ファントム・スレッド』(2017)などで知られるルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープス。コリーが屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅には『爆弾』『そこにきみはいて』(2025)など公開作が相次ぎ、連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK)にも出演していた寛一郎。『恒星の向こう側』では役者としての河瀬直美と共演している。また、『萌の朱雀』(1997)で河瀬監督に見出された尾野真千子が最愛の息子を失い、一周忌を迎えた今も罪悪感に苛まれるめぐみを、河瀬監督の短編『狛-Koma』(2009)などに出演してきた北村一輝が元捜査一課の刑事であり、とある事件をきっかけに現在は弁当屋として過ごす亮二を演じる。ドナーとなる少年の父親には近年の河瀬作品に欠かせない永瀬正敏、また母親に早織、心臓病を患う少年、久志の母親・由美に岡本玲、同じく小児病棟に入院中の少女、瞳の母親・裕子に松尾翠、人手不足が深刻な移植コーディネーターの浜野に小島聖、臓器移植医療を担当する小児科医・平坂に平原テツ、迅の父親・英三に利重剛、母親・幸江には中嶋朋子と、そうそうたる俳優たちが顔を揃えた。そして、河瀬監督がオーディションで見出した子役二人、久志役の中村旺士郎、瞳役の中野翠咲のリアリティある演技にも注目だ。(北山郁)


