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横浜流星『線は、僕を描く』など10月公開映画の評価は?

今月の5つ星

線は、僕を描く
(C) 砥上裕將/講談社 (C) 2022映画「線は、僕を描く」製作委員会

 ニコラス・ケイジのブタ奪還映画から、クリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃にふんした話題作、横浜流星主演による人気小説の映画化、特濃インド映画、そしてA24の新作まで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが10月の5つ星映画だ!

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ニコラス・ケイジの存在感と演技力が映画の肝

PIG/ピッグ』10月7日公開

 トリュフハンターとして一人、米オレゴン州の森の奥深くで暮らす寡黙な男が、愛するトリュフブタを誘拐されたことからブタ奪還の旅に出る……という映画のテーマとしてありえない設定を成立させているのは、ただそこに存在するだけで画面が締まる、主演ニコラス・ケイジの圧倒的な演技力だ。

 主人公は多くを語らないものの、悲しみに満ちていながら時に慈愛が浮かぶ瞳と鬼気迫る存在感で、彼がただ者ではないことをひしひしと伝える。そんな男が、ブタ奪還の旅を通じて出会う“自分を偽って生きる人々”に静かに、少なからぬ影響を与えていく姿には不思議な説得力がある。『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』や『ヘレディタリー/継承』と比べるとすっかり大人っぽくなったアレックス・ウルフも、ニコラスのバディ役としていい味を出している。どこか珍妙なのにどこまでも深い、ニコラス・ケイジの偉大さをあらためて感じさせる人間ドラマとなっている。(編集部・市川遥)

王室よりもステキなもの

スペンサー ダイアナの決意』10月14日公開

 多くの人々を魅了する英国王室。その長い歴史の中でも、史上最も愛されたプリンセスとたたえられるダイアナ元皇太子妃。本作では、彼女が1991年にクリスマス休暇を過ごすなかで、王室を去ることを決断する3日間の物語が展開する。スキャンダラスな展開を予想させつつも、どんなに過激なパパラッチも知りえない彼女の心象風景ともいうべき世界が描かれていく。

 アン・ブーリンとの時空を超えた邂逅といった幻想的な一場面も交えながら、カメラはダイアナ妃の苦悩や不安に満ちた内面に入り込む。圧倒的な緊張感に満ちた映像は、彼女の揺れる心の内を観客に想像させる。たった3日間という時間に、彼女が王室で過ごした激動の人生が照射され、イギリス王室そのものにも新たな視点が与えられる。主演のクリステン・スチュワートは衣装やヘアメイクといった外見はもちろん、子供といる時間以外は張り詰めたような面持ちが消えないダイアナ妃の心の揺れも体現してみせた。(編集部・大内啓輔)

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己を見つめ直すことの大切さを再確認

線は、僕を描く』10月21日公開

 砥上裕將の同名小説を基に、喪失感を抱えた青年が、水墨画との出会いを通して、生きる力を取り戻していく姿を描く。『ちはやふる』シリーズで競技かるたの魅力を世に知らしめた小泉徳宏監督が、新たに題材として選んだ水墨画の世界。水墨画というと、高尚で敷居が高い印象を持つ人もいるかもしれないが、小泉監督による人間描写と音楽センスにより、高揚感を覚えるほどのエンターテインメントとして昇華されている。

 線に描かれるのは自分自身であるという芸術の在り方は、静かに己と向き合うことや、今の時代にこそ必要なシンプルな思考の大切さを実感させる。そして、ストイックで洗練された美の世界観が、主人公を演じた横浜流星という役者の佇まいと共鳴し合い、自然と白と黒の世界に引き込まれていく。何より、横浜のひたむきな眼差しは、青春を捧げることの尊さや、人生を変えるような出会いへの憧れの気持を喚起する。(編集部・香取亜希)

マーベル超え!?『バーフバリ』監督の特濃インド英雄譚

RRR』10月21日公開

 日本でも大ブームを巻き起こした映画『バーフバリ』のS・S・ラージャマウリ監督最新作。1920年、イギリス植民地時代のインドを舞台に、それぞれに使命を背負った二人の男の戦いと友情を描く。

 主人公のビームとラーマは、筋肉も濃さもバーフバリ並の存在感。二人共に実在したインド独立運動の英雄がモデルになっているというが、ラージャマウリ監督は、史実に神話をブレンドして、超人的パワーを誇る二大ヒーローの歴史スペクタクルを生み出した。冒頭から連続する美しく過剰なアクションシーンは濃すぎる二人の友情に感涙必至。3時間があっという間に過ぎていくことだろう。この特濃演出を体験した直後は、マーベル映画のバトルさえ控えめに思えてしまうはず。ジェームズ・ガンルッソ兄弟など、マーベル監督がこぞって絶賛したのも納得だ。今年ナンバーワンと言っても過言ではない、超パワフルなダンスシーンも必見。(編集部・入倉功一)

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小津安二郎イズムあふれる、心地よいSF映画

アフター・ヤン』10月21日公開

 『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』などを世に送り出した気鋭スタジオ・A24の新作は、AIロボットが一般家庭に普及した近未来が舞台のSF映画。故障したロボット・ヤンの記憶を通して、人間の命や家族の在り方を問いかける。

 特筆すべきは、日本の巨匠・小津安二郎を敬愛するコゴナダ監督が演出する、オリエンタルな世界観と計算され尽くしたカメラワーク。日本のわび・さびを感じる装飾、自然光を巧みに利用した美しいカットの数々はユニークで心地よく、長編デビュー作『コロンバス』と同じく“小津イズム”を感じさせる。ロボットが残した断片的な記憶を辿りながら、謎を解き明かしていく展開はSFらしく、『トータル・リコール』などSF映画とも縁があるコリン・ファレルの、素朴で温かい演技は作品のクオリティーを押し上げているといっていい。坂本龍一によるテーマ曲と優しさで満ちた世界観が相まって、鑑賞後は心地よい余韻に浸れるはずだ。(編集部・倉本拓弥)

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