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岸辺露伴は動かない 懺悔室 (2025)

2025年5月23日公開 110分

映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の評価は?

編集者レビュー

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』2025年5月23日公開

 荒木飛呂彦の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズから生まれた「岸辺露伴は動かない」シリーズの実写映画化第2弾。原作のエピソード「懺悔室」をベースに、特殊能力を持つ漫画家・岸辺露伴がイタリア・ベネチアで遭遇する奇妙な呪いを描く。前作に続き監督を渡辺一貴、脚本を小林靖子が担当。露伴役の高橋一生、担当編集・泉京香役の飯豊まりえをはじめ、井浦新玉城ティナ戸次重幸大東駿介らが共演する。

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編集部・入倉功一 評価:★★★★★

 高橋一生が、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」屈指の人気キャラクターを、一世一代の当たり役として体現した、スピンオフ漫画の実写映画化第2弾。人を本にして心や記憶を読み取り、命令を書き込むこともできる特殊能力を持つ漫画家・岸辺露伴が、ヴェネツィアの地で「幸せの絶頂の時に絶望を味わう」という、奇妙な呪いに挑む。

 前作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(2023)では、露伴の過去が明かされたが、本作では原作の最初のエピソードを実写化。“原点回帰”とも言える物語が展開する。漫画では傍観者としての立場が強かった露伴を、原作の空白を埋める物語の中心に据え、幸福の中でも不安を感じずにはいられない人間の性(さが)と、それを乗り越えようとする意志の強さを描き出す。原作の精神に深く寄り添った、リスペクトあふれる仕上がりだ。

 今回も、露伴と異国のロケーションとの相性は抜群。露伴を演じる高橋の佇まいとベネチアの妖しくも美しい風景が見事に調和しており、それだけでもスクリーンで観る価値がある。ともすれば陰鬱さが漂いがちな物語の中で、泉京香の明るい魅力が絶妙なユーモアとして作用し、物語に程よい軽やかさを与えているのも印象的だ。共演者のなかでも、大東俊介と井浦新の“ジョジョ”らしいセリフ回しを含めた演技は必見。原作ファンであれば思わずニヤリとさせられる要素もたっぷりだ。

編集部・石井百合子 評価:★★★★★

  『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』から約2年ぶりの映画版となる本作。原作エピソード「懺悔室」では主人公・岸辺露伴が狂言回しに徹し、特殊能力“ヘブンズ・ドアー”が登場しないどころか、まったく“動かない”のが特徴。映画版では露伴がベネチアに落ちている“死の影”に吸い寄せられるかのように、ある男の告白を聞いたばかりに自らにも恐ろしい災いが降りかかることとなる。笑っているようにも怒っているようにも見える仮面、ヴェルディの名作オペラ「リゴレット」など、ベネチアならではのネタやトリックをちりばめつつ、「幸せの絶頂の時に絶望を味わう呪い」に取り憑かれた人々の滑稽で哀しい人間模様を紡ぎあげた小林靖子の脚本は、相変わらずの手腕。

 露伴が生命力たくましい担当編集・泉京香(飯豊まりえ)から思いがけないヒントを得るお約束も健在で、自らの宿命にもがき続けた人々の顛末には多幸感すら漂う不思議な味わいが残る。中世の修道士をモチーフにした露伴のコートなど、人物デザイン監修・柘植伊佐夫の大胆でいて世界観にマッチした衣装にも、隅々まで目を凝らしたくなる創意工夫があふれている。

(C) 2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

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