ADVERTISEMENT
どなたでもご覧になれます
TOKYOタクシー (2025)

2025年11月21日公開 103分

倍賞千恵子&木村拓哉『TOKYOタクシー』評価は?

編集者レビュー

TOKYOタクシー
(C) 2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

TOKYOタクシー』2025年11月21日公開

クリスチャン・カリオン監督作『パリタクシー』を原作にしたドラマ。東京の柴又から神奈川の葉山へ向かう85歳の女性と、彼女を乗せたタクシー運転手が心を通わせていく。監督を務めるのは『男はつらいよ』シリーズなどの山田洋次。山田監督作『小さいおうち』などの倍賞千恵子、山田監督作『武士の一分(いちぶん)』などの木村拓哉らが出演する。

ADVERTISEMENT

編集部・入倉功一 評価:★★★★

 木村拓哉が庶民的なタクシー運転手役で“受け”の芝居に徹し、『男はつらいよ』で兄を見守る妹を演じてきた倍賞千恵子が彼を振り回す85歳のマダムを演じるという構造がすでに贅沢な一本。柔らかく寄り添い合うような二人の芝居が、心地良い映画の空気を形作っていく。

 マダムが語る、暗く重い過去と東京の戦後史が巧みに融合し、原点となった『パリタクシー』の展開をしっかりと引き継ぎながらも、東京の過去と現在をめぐる“山田洋次監督作”となっている点も素晴らしい。バーチャルプロダクションで撮影されたタクシー車内の仕上がりは実に自然で、最新技術をも巧みに使いこなす巨匠の手腕も見事だ。

 倍賞が演じる高野すみれは、過酷な時代を生き抜いた厳しさのなかに無邪気さと可憐さが覗き、どこか憎めない魅力が光る。一方、大スターである木村にもしっかりと庶民の匂いを漂わせるのもさすが山田監督。主演作やYouTubeを見る度、“やっぱりかっこいい”と思わせる木村が、娘の学費に悩む父親を自然に演じる姿に、ごく普通の人間らしさが漂いうれしい。

 予定調和ともいえるクライマックスに賛否はあるかもしれないが、そこにたどりつく着地の心地よさによって、むしろ鑑賞後にはさわやかな余韻が残る。鬱屈した気持ちになることも多い世の中だが、心の在りようとほんの少しの触れ合いで、ちょっとだけ楽になるかもしれない。そう思わせる一作だ。

ADVERTISEMENT

編集部・市川遥 評価:★★★★

 ファンの多いフランス映画『パリタクシー』の舞台をパリから東京に置き換えて、山田洋次監督が映画化した本作。原作に驚くほど忠実でありながら、戦争の歴史も含めてまったく違和感なく日本の物語に落とし込まれている。

 爪の先までおしゃれな85歳のマダム・高野すみれ役の倍賞千恵子は、壮絶な過去を背負いながらもチャーミングな女性を軽やかに体現。発する一言一言が情景豊かに観客に届き、不意に見せる脆さが胸を締め付ける名演だ。

 彼女を東京・柴又から神奈川県葉山にある高齢者施設まで送ることになったタクシー運転手の宇佐美浩二。この役で“受けの演技”に徹した木村拓哉の佇まいも素晴らしい。その大きな瞳に驚きをにじませながらも優しくすみれを受け止め、最も観客の立ち位置に近い人物としての役割を完遂した。ほぼ全編がタクシーの車内での二人芝居となるだけに、倍賞と木村の特別なケミストリーが本作にどこかロマンチックな空気を加えており、それが『TOKYOタクシー』ならではの味となった。

『TOKYOタクシー』あらすじ

タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を乗せて、東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになる。高野からいくつか寄ってほしい場所があると言われた宇佐美は、寄り道をするうちに彼女と心を通わせるようになる。やがて、彼女が自らの壮絶な過去を語り始めたことをきっかけに、それぞれの人生が大きく動き出す。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT