ADVERTISEMENT
どなたでもご覧になれます
秒速5センチメートル (2025)

2025年10月10日公開 122分

松村北斗主演、実写『秒速5センチメートル』評価は?

編集者レビュー

秒速5センチメートル
(C) 2025「秒速 5 センチメートル」製作委員会

秒速5センチメートル』2025年10月10日公開

 『君の名は。』などの新海誠監督のアニメを、アイドルグループ「SixTONES」のメンバーで『夜明けのすべて』などに出演する松村北斗主演で実写化したヒューマンドラマ。小学校を卒業後に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里が中学1年の冬に再会し、ある約束を交わす。ヒロイン・明里の社会人時代を高畑充希、高校時代の貴樹に思いを寄せる女性を森七菜、貴樹の高校時代を青木柚が演じ、木竜麻生宮崎あおい吉岡秀隆らが出演。監督を『アット・ザ・ベンチ』などの奥山由之が務める。

ADVERTISEMENT

編集部・石井百合子 ★★★★★

 原作のアニメ映画は、主人公・遠野貴樹の小中学生時代(桜花抄)、高校時代(コスモナウト)、社会人時代(秒速5センチメートル)の3章から成るのに対して、実写映画では第3章の「秒速5センチメートル」を膨らませているのが主な違い。「時間」と「距離」を巡る物語であることは踏襲しながら、原作にはないキャラクターを登場させたことで貴樹と運命の相手・明里のつながりが思わぬ形で展開され、世界観に広がりが出ているのも特徴だ。

 新海誠作品特有の目もくらむような「光」、地平から空へとダイナミックに上下するカメラワークなど、映像面における驚くほどのシンクロ率は写真家である奥山由之監督だからこそ成せる技だ。大ヒット中の映画『8番出口』などを手掛けた今村圭佑と組んだ撮影もさることながら、何よりも目を引くのは奥山監督が緻密な演出で引き出したキャストの演技。おおむね原作に忠実な「コスモナウト」のパートでは、遠く離れた明里を想う貴樹(青木柚)、そんな彼にどうしようもなく想いを募らせる花苗(森七菜)のやりとりが切なく胸に迫る。一方、オリジナルとして追加された貴樹の社会人時代のとあるシーンでは、松村北斗が劇的な内面の変化を軽やかに演じ、その場の音や匂いまでもが伝わってくるような名シーンが「実写にする意味」を感じさせる。

編集部・倉本拓弥 ★★★★★

 色彩の豊かさと繊細な感情描写で支持されている“新海誠ワールド”を、いかに実写で再現するのか。そんな期待と不安を抱かせる挑戦に原作ファンの奥山由之監督が見事に“最適解”を提示した。

 約60分の原作を、各章の余韻を損なうことなく2時間の実写映画として再構築。映画オリジナルの登場人物も自然に世界観へと溶け込み、原作ファンにも新たな発見をもたらす。写真家としても定評がある奥山監督は、種子島の空に打ち上げられるロケットをはじめとする名シーンの数々を、構図や色彩の細部に至るまで緻密に再現し、実写版ならではの映像美に昇華させた。

 松村北斗、青木柚、上田悠斗がそれぞれの世代で演じる主人公・遠野貴樹は、まるで一人の人物が時間を超えて存在しているかのようにシンクロし、貴樹の人物像に一貫性と深みをもたらした。特に原作第2話「コスモナウト」を担う青木と、同パートのヒロイン・森七菜の憑依ぶりには目を見張る。同作を象徴する山崎まさよしの名曲が流れる瞬間も絶妙で、その余韻は新海ワールドの魅力そのもの。他の新海作品と同じく、何度も劇場に通いその余韻を味わいたくなる。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT