この惑星では虚栄もまた愛おしい

話題のアーティストにしてパフォーマー、アマリア・ウルマン(89年生)が監督他を務めた傑作。実の母親アレ・ウルマンとのW主演で、地元スペインの田舎町ヒホンを舞台にした虚実撹乱の術。モノクロームの映像も含めグレタ・ガーウィグ脚本・主演『フランシス・ハ』と比較しやすいが、「崖っぷち」の位相が全く異なる。本作の母娘が置かれるのは、高度消費の靄に隠れたヒリヒリした貧困である。
家賃を滞納しながら、ゴージャスな服装で街を歩く。セレブや王室が大好きな母の「凡庸さ」を批評的に見据えるが、目線はシニカルではない。現代社会の澱みや矛盾を引き受けながら、これほど「生きている」ことへの全的な肯定性を伝える映画は稀!