どれだけ大切なものを失っても前を向いて生きていくしかない

軍艦島が見える長崎県の田舎町を舞台に、最愛の母親が亡くなったことで壊れかけた父子の絆の再生を描く。主人公・海星の両親が軍艦島の出身という設定から、「故郷」と「家族」という二重の喪失感を物語の背景にしつつ、どれだけ大切なものを失ったとしても人は前を向いて生きていくしかないという普遍的なテーマが描かれる。と同時に、男気の塊みたいな父親と息子のどん底からの再生ドラマを通じて、「男らしさ」とは何なのかという問いも投げかけられているように感じる。分かりづらい時代設定など詰めの甘さも否めないが、奇をてらわないストレートな語り口は好感が持てる。